風のささやき

熱病

寒々しい静かな夜だ
死にかけた虫のように
心が激しく痙攣をはじめる
慢性的な病気のように
またやってくる予告もなく

頭が朦朧とする
裸電球が目に点滅する
しどろもどろの制御できない恨み言が
口からこぼれる
ただでさえあやふやな
自分の境界が
先端から焦げ始めてきな臭い

どうしようもなく
苦い草の汁のような不安が
心に沁み込んでくる
せめて鼓動だけは守る
不規則な音の上に手を重ね
海老のような体で布団に潜り込む
誰にも見られてはいけない

聞こえる救急車のサイレンは
卒倒する僕を連れて行こうと
家のまわりをぐるぐると
走っているのに違いない

茹でたての卵のように
熱を帯びた頭だ
生きていることの熱病
赤く焼けた十字の塊が胸に熱を放ち続ける
息苦しい呼吸を止めてしまうまで
僕はうなされ続ける