風のささやき

ビーチコーミング

浜辺で宝探しをしている子供
前かがみに時折は砂の方に手を伸ばして

その足には波が触れようとして
何度も手を伸ばしては戻る
時々はそれを許す子供は
あまりにも熱中しているから
それに気が付くことは無く

送り出すのは青い水平線
風は潮風
陽ざしは午後遅い
落ち着いた春の色合いをして

少しずつ子供の手には増えて行く宝物
白い貝殻や波に洗われて
その色をまとったガラス片
漂流物の茶色の木片
何かの種や打ち上げらえた海藻
すべてが遠い日の形見のように
だから優しくかどが取れた穏やかな姿で
その声を子供は素直に聞き分けて
砂から拾い上げる砂を払う
救われているのは拾われた形見たち

ビーチコーミング“beachcombing”
英語ではそう言うのだとか
砂浜に櫛をかけるように
優しく子供たちの手が動く
砂浜もそれを気持ちく良く感じているのだろうに従順だ

それなのに
「もう帰ろうよ」と
何度も大人は声をかける
砂浜に大したものが
埋まっているとはもう思えないから
子供の無邪気な遊びの意味がもう分からずに

大人の方が時として
甲斐ない遊びをしているのに
だだっ広い生の中に
目印も無く宝物を探す徒労と血眼
何が宝物なのかもやがて分からなくなって
宝物探しに疲れてやがて願いを失い

子供の手に選ばれて収まった宝物は
今日は子供の枕元に眠る
どんな健やかな夢に子供は微笑むのだろう
それが宝物だと優しく子供の髪を撫で上げて