風のささやき

白い窓枠に レースを飾った
海は夢見たままの 穏やかな絵画
一息ごとに 色合いを変える
幸福な絵筆の 踊りやまない

真珠色の さざなみに触ってきた
オリーブ色の風が 部屋に遊びに来て
僕を子供のように幸せにする
肌に触れるものの すべてが楽しい
その感触のつながる先へ

白い貝殻のらせんを 一歩ずつ
さかのぼるよう そっと頭を傾けて 
ゆっくりと記憶を探っている
水色の部屋

やがて 僕の顔に
懐かしく暖かいものが押し寄せる
それは 遠い海の向こうからの便り
青空と夏の雲とを
ぎっしりと したためた

透き通った 言葉の伝える消息に
愛しさで一杯になる 切なさの涙も
窓の外 打ち寄せる
波の泡へと消えていくものとして

海にとっては きっと食べあきた
毎日の ありふれた出来事
僕だけの胸には 大切な
誰にも知られない 秘め事