風のささやき

大きな一つの目

いつでも僕を
静かに見つめている大きな一つの目
長い睫を行儀良くピンとたてて
瞬きもせずに見つめている大きな一つの目

気がつけばそこにあって見つめ続ける
物言わぬ一つの大きな目は
優しい涙にしっとりと濡れて
空の青さを浮かべる水槽のようだ

笑っていても悲しんでいても
静かに心を見つめ続ける目
いつでもそばにいて何も言わずに
道化師の化粧の裏に隠れた心を見つめる目

寂しい心映えには夕日の色を写して
落雷は怒りの後悔
やるせない気持ちを羊雲に受け止める

ときおりはその視線の息苦しさに背を向ける
貧相でちっぽけな自分だから
何もかも取るに足りなく感じられて
見るものもない自分を見られる恥ずかしさに

それは誰の大きな目なのだろうか
祖父の力強い目にも似ている
笑った祖母の愛情の色もしている
無辺の星空の深みもたたえ
赤子の無邪気な眼差しをしている

心は自分をも騙す
矢継ぎ早の自らの言葉に傷ついて
穴だらけになって
それすらも静かに見つめる濁りなき大きな目

目覚めれば今日も見つめる大きな一つの目
迷いながらも抗いながらも
全てを見つめ続ける
その目に恥じることなき自分でありたい