風のささやき

膝掛け

今年もはや冬の足音がドアの近くに
確かに寒くなって来た朝夕に
子供たちも重ね着をする

何度目かの季節の繰り返し
押入れの中に仕舞い込んでいた
祖母が編んでくれた膝掛けを出す

僕や妹のために編んでくれた膝掛け
米寿を過ぎた後に編んでくれた
今でもしっかりと解れることもない

一編み毎に注がれた
祖母の生きられた時間
その確かな縫い目
きっと寒い日の冬の僕らの
顔を思い浮かべていた

祖母の顔も知らずに
その膝掛けを使っている
僕の三人の子供たちは
テレビのアニメに
口を開けたまま熱中している

君たちが会ったことも無い
僕の母のその母の微笑
優しい眼差しはきっとどこからか
君たちの上にも
注がれていることを感じる

君たちはきっと護られている
そうでなければこんなにも
君たちがすくすくと大きくなって
楽しそうに笑っていることは奇跡

自分のいなくなる先にまで
確かな温もりを残してくれる人
僕は子供を抱き寄せて
一緒に膝掛けに包まってみる

目を瞑れば今でも
浮かんでくる祖母の顔
時々夢の中で僕に
会いに来てくれるから

僕も君たちと同じだ
祖母にしっかりと
護られている