膝掛け
ドアの外には 今年も聞こえる冬の足音 確実に寒くなった朝夕に 風の子の子供も重ね着をする 何度目の冬 季節のくり返し 押入れに仕舞い込んだ毛糸の膝掛けを出す 孫の僕に編んでくれた祖母の膝掛け しっかりとして 解れることもない 米寿を過ぎて 苦労しみた手で 一編み一編みを大切に 毎日を丁寧に生きた 祖母の生きざまそのものだ 真心を一緒に編み込んで きっと冷たい冬にかじかむ 赤いほっぺの孫を思い浮かべ ほんに寒かろうに と 祖母の顔も知らずに その膝掛けを使う 三人のひ孫は テレビのアニメに 口を開けて熱中している 君たちが会うこともなかった 僕の母のその母は いつでも柔らかく微笑んでいたよ まるで円空仏のように 君たちもその眼差しに護られている そうでなければ すくすくと 君たちがこんなに大きくなって 楽しげに笑っていられることは奇跡 いなくなった未来にも 確かな温もりを残してくれた人 真心を残してくれた人 子供を抱き寄せて 一緒に膝掛けに包まると 祖母の温もりと子供の温もりとを感じた 目をつむれば 遠い故郷の空 今でも浮かぶ祖母の顔 ときどきは夢の中にも 会いに来てくれる 僕も君たちと同じだ 祖母にしっかりと 護られている
祖母の消えない温もりを胸に感じながら。Last updated 2024/11