風のささやき

酸っぱい涙

また野焼きのような不吉な炎が
チラチラと赤い舌を出している
平穏な日々の思いを
かき消そうとして黒い煙が立ち登る

あそこに焼かれているのは
僕の体から剥がれ落ちていった
僕の願いと祈りと

あまりにも幼いものと
いつしか嘲笑されて
そう思っていた

一思いに焼かれてしまえと
爪を立てて体からそぎ落とした

喉の奥から自分の声とは思えない
どす黒い声で命じた
すぐに焼かれて灰になってしまえと

僕の体液と涙とに濡れたまま
それはいつまでも生焼けのままで

さりとて炭化して黒光りを放ち
もう一つの黒い塊にしか見えなくて
いつまでも細い煙を立てている

僕は取りこぼしてはいけないものを
取りこぼしてしまったのか
赤い炎は意地悪く舌なめずりをしたまま

もうはぎ落とす願いも祈りも
僕はなくしているのに

その上平穏さえも失いかけて
煙に目を刺されたまま
逃げ出す場所も無くして
僕は目の奥から
酸っぱい涙で一杯になっている