風のささやき

大木の歌

幸せな 雨に打たれる
乾いた 喉が潤う
傘をさして 人は避ける
雨の その奥にある慈しみを
いつでも 感じていたい

勢いよく ひろがる若葉
夜の暗さに 怖がっていたのに
もう 語りかける 必要もない
何も 怖がらなくていいと
暗い夜に守られて
お前たちは成長をする

今では それぞれの葉が
それぞれの緑で
光と風とを つかもうと動く
その勢いに 枝先は
少しこそばゆいほどだ

空に昇る 春の月の
朧な明るさも とても好きだけれど
優しく幹を 濡らす雨に
今 ひとときは 打たれていたい

透明な 樹液となり
枝の先に 一葉 一葉に
言葉を届ける 雨は伝える
真っ直ぐに空へ 伸びてゆくのだと
命の ほとばしるままに

この不思議な恵みを
誰が降らせるのか 僕は知らない
ただこの場所で
大地にしっかりと 根をおろし
空の高みを 目指すだけ
雨がこうして 僕を濡らし
励ましてくれる 限りは