言葉の棘
もう何年も前の あの時に投げた不用意な言葉 今でも悔いている 眠れない夜に 後悔はまた疼きだす あなたの面影を 画鋲のように刺したまま 幾夜も幾夜も その言葉を取り消したかった 本当の心ではなかったのだと 言い訳をしたかった けれどもういない あなた その日と今日との間には 埋められない隔たりがある 数多のがらくたの日々が 壊れたブリキの玩具のように 散らばっている その日に届く言葉を 距離を埋める言葉を 今でも探して苦しむ 見つかることは無い パズルの失われたピース 今日も答えをくれない人の 面影に語りかける やめられない懺悔 なぜ誰にでも 言葉が与えられているのだろう みんなが無造作に取り扱う透明な凶器 鈍器にも鋭利な刃物にもなって 人を傷つけて 後悔を繰り返し その恐ろしさを初めて知ることになる