生きるごとに言葉は体の中に入り込んで来る
生の屋台骨となる言葉
それによって生かされる言葉
それによって苦しめられる言葉
そこに辿り着けない言葉が
胸の中にひりついている
人と言い争うのも言葉
譲れなくなくなって仲たがいをして
言葉を重ねる毎に違うと思って
気持ちが高ぶって大好きな人とも離れ
言葉の含む陰影が違うだけなのに
人は生の時間に言葉を注ぎこむ
言葉に生を代弁させようとして
時にはそれに囚われ
その言葉故に譲れなくなって
人と争うごとに磨く言葉は武器で
その言葉で人と争うことにして
その言葉で切り裂いた言葉を積み上げて喜びして
先生から語られた言葉
母親の読み聞かせの言葉
本を開き自分で読んだ言葉
心のひだに響いた言葉を選び取り
その言葉に継いで自分の言葉を語るようになり
生の道しるべにして歩むようになり
耳を貸さない頑なな言葉
慰めてくれる一人のときの言葉
人と打ち解けあえる言葉があって
人を怯えさせる激しい言葉もあって
溶け合う言葉は人と人とを寄り添わせる
話せば話すほどに胸に飛び込んでくる
あなたの言葉は錨
胸に深く沈んでこのまま傍に
僕からは離れないでいて欲しい
言葉は人の背中を力強く押してくれる
今でも背中には沢山の人の
暖かな手を確かに感じている僕は
それ無にはきっと生きてはこられなくて
生み出す言葉は恐ろしい
それに囚われることもあるから
その冷たさに心の底から凍える時もあるから
けれど言葉と言葉で人と人とは重なり合って
大切な物を交換して
語り合う楽しさ話弾む喜び
言い切れぬこと語り継ぐのは祈り
語り部は誰のために言葉を語り継いだ
まだ見ぬ未来の人のために
僕も言葉を紡ぐことをしたいと思って
怖がらないで自分の言葉を産み出せるように
そのために繰り返す沢山の人との会話
本を読み心濡らしてその人は
時を超えて僕の心に語りかけにやってきてくれた
言葉に言えぬ生の瞬間黙って過ごしていた時間も
やがては一つの言葉に蘇ってくるから
僕の言葉は柔軟に
いつでも人の言葉と重なり合えますように
それでますます豊かさをまし言葉を継ぎ足し
心は沢山の感謝に震え美しい言葉で彩られますように