詩編:放浪の夏
放浪の夏
秋の日に
色づきゆくものは秋の日に
百合の花弁をなめた石畳の港に
腹に穴を開けた九月の海
人影もない海岸線はなだらかに続く港町の日曜日
魚くさい日差しに夏の群れ
空には入道雲が浮かんでいる朝の聖者
金に光る横顔の聖者が霧が流れて
山肌を霧が流れていく野を走る狂気
狂気の叫びが野を走る夏の野に
誰かが頭の中で向日葵畑に
強すぎる太陽が日曜の村へ
小さな風の戯れに夕映えに
麦畑に寄せる 夕日のさざ波が泣き出しそうな雲
迷子の子供のように湖
静かな陽ざし注ぐ村の風
なだらかな緑の牧草地田園散歩
丸い丘にはひまわり畑に
大輪のひまわりが咲きならぶ旅先で
一人 立ち尽くすには夏の駅で
赤い電車が汗をかきながら天窓
大聖堂のような古城にて
雲の遥か上がまぶしい橋の上
写しとったそばから薔薇園の印象
重ねる花びらの奥に大聖堂の広場に
広場を占拠していた鳩が夜に眠り西日の広場に
悪夢と現実とが大理石の広場に
鳩と人とが交錯する 喧噪の広場に一人石畳の広場に
照りつける夏の日差しを白い広場に
人と鳩とに焼き尽くされる 真夏の広場で放浪の夏
放浪の果てに訪れる夏の遺跡
夏の遺跡には