風のささやき

田園散歩

丸い丘には
トウモロコシの細いとげ
ひまわり畑の黄色は幾万も
初夏の風に重い頭を揺らし
その上には手の届きそうな
油彩の銀の繭の雲

遠くには教会の鐘が響く
煉瓦色の街並みが浮かび
鐘の音を耳に祈り続ける
石像の顔は天へと唇を結ぶ

その視線の続く空の下
広がる田園の真っ直ぐな道を
風に手を引かれて歩く
僕の目にあふれる
洪水のような光りは
麦畑をなだらかな緑にと刈り込み

僕の瞳に映る
風景と印象とは
心に投げ込まれる夏の収穫
陽射しの強さは
干し草の匂いを運び
足下に咲く野の花は
心の中に紫のバッジ
風にそよぐ木立の葉は
光と影とに遊び

一息ごとに僕の心象は
新しい色に深まって行く
時折はその早さに
忍び込むものの姿は見えず
けれど確かに明るみ
生まれ変わりながら
軽やかになる心象の楽しさに
田園の風景を
いつまでも高らかに歩いて行く