風のささやき

乾いた大地の印象に

赤茶けた 地平線は
空の肌の下に隠された 血と肉の色
赤茶けた風が 血脈を走り
熱いたぎりを 伝えている

麦の刈り後を 焦がしていた太陽が
砂地に植えられた オリーブにまとわりついて
空に投げ返される 銀色の悲鳴に

表皮を厚くする サボテンは
悟られぬように 空の色から掠め取った
水色の果肉を 潤わせている

湿り勝ちの 僕のか細い歌声では
響くこともできない 赤い大地
野太い叫びだけが
乾いた荒野を 荒々しい獣のように走り

少しの 草地の上には 
太陽への生贄に
ゆっくりと 尻尾動かす
茶色の牛の群れ 
なんの手向けの 花束も無いその先には

レンガ作りの 黄色の家々が
煙突を 長く伸ばしている
風の声を 探るため
天空に突き刺した 鈍く光る骨
送電線の黒い電線が 震えた神経の束として

オリーブの 木の間から
白い鳩が 空に飛び立って行ったのは
大地がしたためた
つぶされた喉の メッセージ

吹かれる風に すべてが乾いた砂に
帰っていこうとする 赤い肌の上にも
言葉を発し やめようとしない 灼熱の命の