風のささやき

比国の風景に

大きく幹をはった木が
強い陽射しから
守るように涼しい影を落とす
地面の下
静かに眠る魂を
サラサラと木の葉を揺らし
いたわるように
風が通り過ぎて行く
小高い丘の上の木立と
明る色の草花に
飾られた墓地は
ひっそりと
僕を迎え入れて
南国の空の青さの下
息をひそめるかのように。

山間からは街を
見渡すことのできる
こんな景色を目の前にして
昔
その傷跡をいくつかの
ここには墓石の名前に残す
戦争があったのだと
多くの人々がこの土地に
血を流しながら死んだのだと
一体誰に
信じさせることができるのだろう
今はその口を閉ざされてしまった
人々の誰一人をも
喜ばせはしなかったはずの
争いは
争いと悲しみを
生み出すばかりだ
愛する祖国を守るためにと
手にした銃は
相手の命を瞬時に奪い去って。

あなたがたが何故
犠牲にならなければ
ならなかったのか
空を高く飛ぶ鳥は
答えてくれはしない・・・・・。

山間の街の小さな教会からは
正午を告げる鐘の音が
かすかに風に渡ってくる・・・・・。

こんな穏やかな風景に
そんな音に響かれながら
あなたがたが安らかに
眠れるように
もう二度と悲しい営みが
繰り返されることのないように
手を合わせる僕は
深く心に傷をつけることをする
あなたがたの誰をも
この痛みで忘れない
世界がいつまでも
平和な朝を迎えられるように
祈りたまえ。