夏の群れ
空には入道雲が浮かんでいる できそこないの不格好な綿菓子 浜辺では今朝とれた魚が焼かれ 焦げた白身の上には 古いオリーブ油が光っている 沖合いには鯨が ゆっくりと潮を吹き その近くをヨットは ぐるりぐるりとめぐる 双眼鏡をのぞき込む 人々の顔はどこかとぼけて 浜辺を歩く僕の口に 吹いてくる潮風が新鮮でない 不快になる口に海の水をつけると 日に焼けた背中とおなじぐらい のどがひりひりとした 僕は突き出た岬の形状を 奇妙なものと眺め 僕の足下には小さな蟹が 波にさらわれ転がって いかの腐ったような匂いが鼻をつく 海の上には鈍い光りの あちらにもこちらにも やる気のない夏の群が続いている