風のささやき

飛行機の中で

君の横顔を分断するように
窓の外には水平線が横たわっている
その色合いは落ちていく太陽に赤く

突然に翼を傾けて
天空に斜めに沈む飛行機
それに合せて太陽も
滑り落ちる速度を速めた

時間を飛び越えようとする試みが
何故か悲しく思えていた

 ○
   
クリスマスのもみの飾りの上で
天使たちがファンファーレを吹き鳴らす

そんな祝福された世界に
暮らしているとは
到底思えなくって

 ○

暗い画面を覗き込む
あなたの横顔が病的に青白い
輝いた眼球は爛熟した卵白のようだ

どんな痛んだ映像の
あなたは受信機になっている

 ○
   
いつの間にか朝焼けが
僕の瞳に沁みてくる
また逃れられない一日の始まりだ
休み足りない僕をまた
慌しい思いへと召喚する


 ○

光の天使が広い羽根を広げたような
滑走路に迎えられた
降りていく行く機首を暖かく包んでくれるようで

けれど近づくにつれてそれは
ありきたりの滑走路

飛行機は怒ったように
二、三回
地上を蹴りつけて
それから悲鳴を上げながら
地上に落ち着いた