風のささやき

村の風

なだらかな緑の牧草地
足を折り寝そべる牛が身にまとう
ゆったりとまどろむような時間

その瞳が映しだすのは
青い空と黄色い花の穏やかさ
飽きることない美味しい反芻を
急かすものは何もないお昼

入道雲がゆったりと
頭をもたげる空の下には
たゆまぬ祈りの宿る
古びた教会の十字架が
夏の光の金色を返す

銀の鱗のような陽射しを
静かに波立たせる湖
緑の葉をきらめかせる
森は風の通り道
小鳥たちはその風路に羽を洗い
透き通る鳴き声を澄ませる

半時ごとに
時刻を知らせる鐘の音は
肌に柔らかく震える

その甘めく響きを
あまねく届け続ける
この小さな村の
僕は風になりたい

花の香りをいくつも束ねて
人の頬を心地よく撫でる
牛乳のような新鮮な滋味で
心をまろやかに包む
光りに潤んだ風となって
穏やかな真昼の安息を届けていたい