風のささやき

天窓

大聖堂のような
大きな建造物の中に
僕は眺めている
そのドームの頂点に
取り付けられてある
透明なガラス板の窓

その外には青空が
手を差し伸ばせば
雲がつかめるほど垂れ下がり
太陽の陽射しは
乱反射を繰り返す
砂金のように風を流れる

長い歳月を経て
築き上げられた
その建造物の中で僕は
壁が光りを遮る
青白い影に包まれている

僕の回りでは子供達が
小さな虫けらを
殺す遊びにふけったりしている

壁に掛かった幾つもの肖像画は
うつむくような視線を
こちらの方へと落としている

その空間の深みの底から
僕が眺めている高い天窓
そこに切り取られて
張り付いている空の青さ

僕の魂がやるせない憧れをもって
引き上げようとするあの高殿に
たどりつくため
折れ曲がり続く階段を長く
僕は登って行かなければならない

おぼつかない足どりで
時折は憂鬱な心を
額に掲げながら
あの正しくある空の下へと

薄れかける空気の中
(大気圏を越えて
 宇宙の星くずを眺めながらも)
一人
いつはてるかもわからぬ階段を
一段一段高く
登ってゆかなければならない