風のささやき

朝の聖者

金に光る横顔の聖者が
遠くを見つめながら
彼の朝食の雲を食べて
果樹園に注ぐ
清らかな水を口に含む

彼の腰掛ける石の
なんと古びたことよ
彼の座る形に石はくぼみ
足には蔦がからまっている

彼はしかし
その瞳にまたあきることなく
空の青さを映し出し
呼応する心の調べに
聞き入っている

彼の頭には小鳥達が
羽根を休めて
さえずりもするのだが
彼の手はときおり
甘いパンのように柔らかく
小鳥達を満腹にする

彼のそばで草を食べる
ミルクのように
優しい形態の牛達
足を折曲げ目をつむる
おいしい反芻は終わることなく続き

彼の肩に落ちてきた木の実は
彼の体の養分に根を張り
傘のように伸びる若葉には
蝶が静かに羽根を動かしている

オレンジのように新鮮な
彼のまわりに陽は暖かく
彼の肌には光りの粒が
白い花のように咲いて香る

朝の聖者は天との対話を繰り返し
そのまわりに新しい
やわらかな朝を生みだしていく