風のささやき

秋の日に

色づきゆくものは
知恵に透く
秋の言葉に耳を傾け
その身を静かに深めてゆく
修道院の窓辺にたたずむ
僧侶の祈りにも似て

短い夏の思い出に
壕しゃな色彩を
燃え立たせる街路樹
街並み縁どり
冴え渡る空の青さは
幾何学的な角度で
蔦の絡まるレンガの建物
その細やかな編み目のレース
ステンドグラスもすすけた
古びた教会には
色づくパイプオルガンの音

歩き着く広い川の岸辺には
瞳 横切り滑り行くヨット
さざ波立てる
水の上の銀に
冷たい吐息は誘われる

厚手の服の襟元
忍び寄るこの秋にも
深まらない僕が
ゆっくりと座れる椅子もなく
風景から一人弾き出されて
放浪の土地に
この土地の先にあるのものへとまた
僕は歩いて行かなければならない