風のささやき

飛行機に座って

西日が差しこむ
飛行機の小さな窓
褐色の肌は柔らかく燃え
金色の産毛は
すすきの揺れる野のようで

どれぐらいの旅立ちが
今日のこの場所にあったのだろう
異国の人 同胞
言葉と目線は入り乱れ
青い目も 黒い髪も 透けるような肌も
定刻になれば それぞれの土地へ
遠い距離を運ばれてゆく

交わることのない 他人の運命には
それぞれが 無関心なまま
シートベルトを締めたかどうか
もう一度 確認をしたり

そうして僕も 初めての地に運ばれてゆこう
別れが定めの 人の寂しさが
胸の半分を 満たしてしまったけれど
半分はまだ 見ず知らずの土地の
新しい風景へと 心躍らせて

天空の頂に 突き落とすように
飛行機のエンジンが 咆哮をあげる
本当は寂しい 空威張りをした 
遠吠えのようにも 聞こえた

きっと飛行機の
丸い鼻先も泣いている
赤く 濡れているに違いない