風のささやき

西日の広場に

悪夢と現実とが
混ざり合ったように
頭の芯に埋め込まれた鉛の重さ

脈打つこめかみ
苦しい心象
抑えきれない程に膨らんで
脈打てなくなるまで縮み

青ざめる脳裏
貧血の耳鳴り
地平が揺らめいて
不確かにゆがむ

苦しくて目線あげれば
西日の広場に
肩から血を浴びた銅像
黒い獣が噛みつくように
闇に体が飲み込まれてゆく

空には鳥が重たい体で
力いっぱい羽ばたき帰る

吹き上がる噴水は
力無い循環
天まで届かず
砕けた夕日の破片が
水面をたたく

遠くでは星が
かすかな夜風に瞬いて

それほどにも今は遠い
あなたの面影は
けれど夕日よりも大きく
背中によりそって
そっと心に炎を点す

しのび寄る闇から
僕を守ろうとしていた