風のささやき

その人の血に

空に消えていった 祈りの言葉
風に奪われた 大地の暑さ
地中海に差し込む 太陽の眩さ
市場に積まれた 野菜や肉の匂い
人々の生活の 楽しみや悩みも

たくさんのものが その人の血に
流れ込んでいった
少女の夢よりも 夢見て
そのときを誰よりも じっと待って
やがてその人の血に 熟成して花開くようにと

大きく花開く その華やかな匂いには
たくさんの植物や
生き物が誘われ 集まった
その花の中に 一緒に夢見ることを願って

とうもろこし とかげ 椰子の木々
麦の穂 地中海の貝殻 
森のきのこ カタツムリも

花そのものの その人の
金色の心臓に 甘く波打ち
何もない空間に たくさんの形象の夢を見た

その手の技 知性の煌きに
形を与えられた 建築の上には
その目に触れた 生き物が遊び
形を失い 割れてしまった皿さえも
魂を呼び起こされた その上の色彩

すべては その言葉に
従順に 従ったまま
やがては 天への祈りに向けられた

地中海に 雲間から
静かに降りる 光のカテドラルよりも
人々の心を 強く空へ向けるものとして
大地の血筋から 芽吹いたものの力に