風のささやき

ロンダにて

羽一杯に 風はらませた燕が
空高いところから 滑り落ちてくる
山の上に孤立した 要塞の町

下からは 息を切らし
青く涼しい 朝の風が
さらなる空の高み 目指そうと
僕の髪 頼みもしないのにかき上げる

平衡感覚 狂わせる坂道の多さ
息を苦しくさせる 細い道は
迷ってしまいそうな 袋小路
けれど諍いの 荒々しい声は聞こえずに

敵を追い払う 役目から解放されて
緊張感なくした
柔らかな 陽射し受ける城壁
黄色い壁の教会 白い壁の家々

町外れ 市内への門が迎える者は
凱旋の 傷ついた戦士ではない
優しい笑顔の 人の群れ
それに寄り添う 穏やかな気持ち

どこもかしこも 優しくなってしまった町に
刻まれた 痛い記憶も
癒され 風の中の化石に
なってしまったに 違いない