風のささやき

砂漠の夢に

砂漠の砂を 粉々に噛み砕こうとする
今日も 青空の底には
黄色い太陽が 浮かんでいる

風が 砂で描く模様は
見慣れてしまった ものばかり
毎日毎日 描き続けて
さすがの 絵描きも
アイディアを 枯らしてしまった

今日も 頭の上から離れない
黄色の呪いから 免れて
ひんやりとした 暗闇の王宮に
ハッシシの紫の煙が 中空を
夢遊病者のような手つきで 漂う頃

夢は長い渡り廊下の 暗がりを抜けて
林のようにそびえる 柱の合間から
青くなった 姿でやってくる

砂漠の中で見る 乾いた昼の夢には
蝿の羽音が いつまでも響いたままでいる
それは 砂漠の蜃気楼の向こう

青い青いオアシスへの 忘れがたき思いのように
耳の中で 日長物憂く流れている
消えることなき水の音

皮膚呼吸を いがらっぽく苦しくさせる
砂埃の 物憂い記憶を 
忘れようとする 水煙草の時間も

僕の目の中に 一瞬に消えて行った幻想
すべては 黄色の砂の一粒に
影も残さず 消えていくだけの