風のささやき

夏の駅で

赤い電車が汗をかきながら
丸太を運ぶ 真昼時
無人の駅舎には
夏の陽射しが触り
瞳が心地よく銀に焼かれる

錆びた線路は遠近法で
入道雲の山あいに延びる
時間を持て余すホームには
鞄から青い絵葉書をだして
あなたにそれからを
拙い一筆で伝える

まとわりつく風に
花壇の向日葵はうたたねをする
こんなに暑いのによく眠れるものだと
赤いダリアがそれを見上げる
(少しだらけた地上の太陽)

遅い昼食にパンを噛り
近寄ってくる雀たちに
おすそ分けする
のどかなひととき

この青空の下には
いくつの夏の風景が転がり
僕はどこへ運ばれるのだろう
汗ばむ緑の昼間
口笛を吹いて自分を奮い立たせて

線路が明るんでゆく
電車が間近に迫っているのだろうか