風のささやき

天空の人に

あなたは どれだけの民の瞳に
眺め続けられ 来たのだろう

紺青の夜と 千の目をもつ天使を従え
禍々しい顔をした 異形の者たちは
大地に 平伏させ
明るい星々を 衣服とまとい
天空の真中にあり続ける 静かな沈黙

僕らの懺悔を
肯うでもなく 断ずるでもなく
ただそのままに 見つめている人

瞬きもしない その瞳に
見つめ 続けられることは美しい
一つの 恐れでもあり
心震わす程の 喜びでもあり

悲しいため息 途切れがちの祈りの言葉は
夜を吹く 風となり
あなたのまわりに 集まってくる

その風を彼の地へと 届かせようとするかのように
天へ向けた指先を 輝やかせている人

虚空に映る 人智を越えた者の影に
夜はどれだけ 柔らかく守られたものに
姿を変えたのだろう

いつまでも 空にあって身じろぎもしないあなたに
寒気のような身震いととも
消えない信頼を 僕も思っている