風のささやき

太陽の印象

溶け出した太陽が支配する空 
光の天幕の下の暮らしは
その支配から逃れるための術を探し

焼かれた赤い砂の灼熱は
駱駝を嘶かせる
年老いた不規則な歯並びの間から
乾いた唾液に導かれる旅路

太陽の監視から逃れるための幌の下
横たえる体の血が
沸き立って感じられる時の気だるさ
生ぬるい風が死体のように
重たく纏わりついて来る

日々に織り込まれて行く暮らしの
横糸には太陽の日差し
織り込まれたそばから
燃え上がって灰になり

語り継がれる栄光は
ナツメヤシの実の甘さ程に
口の中に繰り返され覚えられている
言葉は矢のように放たれて
鷹のように真っ直ぐに高く飛ぶ

日差しの天幕に気化して浮かばない
雲の白けさせる空

全ては砂の一粒から湧きだして
夢さえもがやがて
そこに帰ることを知っている
一時のオアシスよ
喉潤す清らかな水の滴りよ
すべては太陽に消えて行く
泡沫の恵みと