積み重ねられた銀色の翼
地べたから一枚一枚と
高い空まで届くようになって
羽ばたけない彫刻は
生気を取り戻したように動き出すように
片目を開いた雲の瞼
太陽の鈍い陽ざしが覗いた時に
波の色に足止めされた青い船底が
掲げる国旗は異国の
朝に軽く降った雨に濡れた青白赤
まだ消えぬ水たまりは風のモールス信号
どこか遠い国からの
あるいは過ぎ去った昔からの
何かを ― 人の声、風のそよぎ、涙、色合い、恥じらい、嬉しくて、それとも・・・
落ち着きの無いさざ波は一生懸命に震え伝える
それに合わせるように僕も
指先で宙にぎこちなくなぞっているのに
山の麓の家々は雲の切れ間の晴れた色合いを
楽しんでいるまだ散り切らない
木立の色づきに寄り添われたままの
潮の匂のしみついた暮らし
終わることなく吹く潮風が染み入ったレンガ色
一本道の白いモザイクの上を歩いて行く大きな空の下の眩暈
そこから足を踏み外しても良いのに
許さない物はいないのに
ただの地面に描いてしまった模様
色合いの一つの悲劇にしか過ぎないのに
僕の頬は緊張をして噛みしめた歯で鋭利な三角になる
そこで風が切り裂かれるように分かれる
僕は僕の中に沢山の別れを見出している
そこに夢見た者の最果ては深い光の届かない海の藻屑
カモメの羽ばたきは未だそれを弔うレクイエム
積み上げられた銀色の翼は夢の骸
重さを纏わない物が一つの塊になって重くなって
白金の高い構造物に組み上がる
飛び上がろうとした先
空の奥底ではまだ呼んでいる声もするようで
残酷にも休むことを許してはいない
いつまでも高まりを夢を見続けるのだと