彫刻の街で
冷たい大理石のベンチに座る レオナルド・ダ・ヴィンチの横顔を見上げながら 白い息を吐くこともなく 背筋を立てた人は どんな思いに沈んだまま身を硬くしたのか 急ぎ足で過ぎる人々は 生の温かさに白い息を吐きながら 目先のことにだけ忙しく思いを巡らす ○ 冬の暗闇が肌を襲う頃 ランベルディの塔には灯りが点り さらわれそうな心を勇気付けてくれる 月影に青白い顔で 考え込んでいるダンテ その頭に宿るイメージと あふれんばかりの言葉の破片は どこからの贈り物だろうか ○ 小刻みに震える悲しみで 縁取られたピエタ像 まるでたくさんの涙から 彫り上げられたような ○ どれだけたくさんの眼差しと言葉とが あなたに注がれ続けたのだろう そのすべてを受け止めて 十字架の上にあり続ける人よ ○ 冷たい冬の雨に 泣き濡れて一人立つ銅像 おまえも誰にも分かってもらえず 一人ぼっちなんだ