風のささやき

夏の駅で

誰もいない無人駅のホームで
あなたが尋ねる
「旅をするのならば何処かいい?」

僕は少し口ごもり
踏切の鳴る音に合わせ呟く
「あなたと一緒の
 旅であればどこでも」と

そうして電車が軋み
滑り込む音に合わせ
「あなたと一緒にいられるのならば
 どこまでも」と
口ごもってみる

「聞こえないじゃないの」
とあなたは

聞こえないように呟いたんだ

空には何も聞かなかったよと
白い雲が目配せをした