風のささやき

白い街にて

白い壁の家々の部屋 通り抜けて
天使の羽根のように 軽やかになる風は
遠くに見える 青い地中海と
僕との間を 行ったり来たりしている

僕の手には すぐに歩けてしまう
小さな街の地図と 二枚の絵葉書
たくさんの 華やかな
お土産屋を巡り 選んだ風景の
白い街の匂いを そのままに届けたくて

白い教会を 背中に
地中海の 青さも目に飛び込んでくるから
何か 気のきいた言葉も浮かぶような気がして
握り締めたペンの先から 言葉を書き出してみると
すぐに 埋め尽くされていく白い余白

その後には 切手を貼って
ポストに 投函しようと思うけど
異国に覚える遠い距離の 心細さ
思い伝えようとする たくさんの手紙の中で
僕の葉書なんか どこかに紛れてしまいそうで

今すぐに この絵葉書に羽根が生え
僕の刻んだ言葉が
そのまま 地中海を渡り
飛んでいって くれればいいのに

ブーゲンベリアの咲いた 白い通りを
僕は絵葉書を手に携えて 歩いていった
その上の文字が 僕の胸の中でどんどんと
熱くなるのを 感じながら