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連結装置

Scharfenberg coupler

連結装置は、係員が手作業で連結を行う必要がある「ねじ式連結器」から、自動的に連結が完了する自動連結器への移行が行われてきました。欧州よりも日本のほうが決断が早かったため、早期に自動化されています。

自動化以前には年間160件も事故が生じるなど大変危険な作業だったそうです。機関車の間に職員が入って作業するため、逃げ場がなかったようです。

欧州の連結器を参考に開発した「自動連結器」への一斉交換が行われたのは1925年。一方、欧州では、線路がつながった各国で新たな連結器に切り替える調整が難しかったこともあり、UICの施策でねじ式連結器を標準としたことから自動化は遅れ、2002年に、TSIから引用されるEN 16019:2014によって、シャルフェンベルク連結器のタイプ10に関する最低限のインターフェースが規定され、これが標準の地位を確立してはいます。しかし今なお手作業での連結が必要なねじ式連結器も残っています。

TSIで標準となっているシャルフェンベルク連結器は、100年以上前からある完全自動タイプですが、徐々に改良が加えられ同じシャルフェンベルク式であってもTSIに取り入れられているものは「タイプ10」と呼ばれています。下の写真のように、円錐系の突起と、それに対応する受け口で構成された独特の形状のものとなっています。

【図1】シャルフェンベルク連結器 (左)形状 (右)連結時の形状

この連結器は耐衝撃性に弱いことから、重量の大きな貨物列車には使用されていません。近年では貨物列車においても自動連結器の開発がすすめられているようです。

例えば、このリンク先は貨物用自動連結器(DAC)の紹介記事(Gloval railway review誌)です。

【図2】現在のねじ式連結器

 

日本の連結装置

上で紹介したように、日本では自動連結器への移行が早期から進みました。連結器の種類は多数ありますが、電気連結器付き密着連結器(JR東日本E353系)、新幹線用密着連結器(200系新幹線、鉄道博物館)、自動連結器(機関車用、鉄道博物館)、密着式自動連結器(山形鉄道YR-880形(ディーゼル車))の写真を図3に載せます。
 いずれも、密着性が高まるほど乗り心地が良くなる反面、取り付け位置やロックや解錠機構に精密さが求められることになるため、ブレーキや電気配管も含めた連結を行える効率と、乗り心地を追求して日本で発達してきた歴史があります。
製品が優秀なため、日本のメーカーさん各社は、機械系部品メーカーとしてはかなり早い2004年頃からInnotrans(鉄道の展示会)に単独でブースを出すなど、海外展開に積極的に取りくんでおられます。

連結装置は、分割併合時の衝撃がかかりやすいため、荷重についても設計上の目安値があります。くわしくは36.車体の堅牢性で触れます。

【図3】日本の自動連結器

まとめ

欧州では連結器の自動化が進められているところです。日本の連結器の運用効率の良さと信頼性は素晴らしいのですが、鉄道の運用効率を考えると、連結器の種類がバラバラの列車が走っていると事故時の運用に制約となるため、 連結器の種類は極力揃っていることが望ましいところです。
 欧州の現状ではシャルフェンベルグ連結器(タイプ10)が標準になっていますので、よほどの技術革新でも無い限りは互換性が無いものには変わらないだろうと思いますので、今後も幹線系の路線ではこの系統のタイプが使われていくものと考えられます。

一方、他の路線とは独立した路線や、東南アジア諸国のように地下鉄整備がこれから始まる都市では、最初に採用された方式がその後も(互換性の観点から)採用されやすいと思います。先手必勝という感じです。

既に地下鉄整備が進んでいるシンガポールやインドの諸都市の車両の連結器(coupling)はどのタイプでしょうか。・・・・欧州のシャルフェンベルグ連結器でした。川崎重工業さんの車両も(当然)このタイプです。

では、現在、初の地下鉄が建設されており、日本のSTRASYA(ストラシア)に書かれた仕様(=東京メトロ2950mm幅車両)が基本に設計されているベトナム・ホーチミン地下鉄1号線や、ジャカルタMRT南北線はどうなのでしょうか・・・、日本の地下鉄でおなじみの電気連結器付き密着連結器が採用されています。よかった。 ぜひこの路線でも実績を上げていかれて、今後も発展していくことを期待したいです。

★関連して、最近のアジアの鉄道建設プロジェクトの状況をまとめました。詳しくは日本の現状の4.です。


今でも古い連結装置は使われています(スイス)