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高速鉄道線のトンネルの断面積の違い

車両の気密性が高いとトンネルは小さくできる?

欧州の車両限界の現状

欧州における軌間(線路幅)、軌道と軌道の間隔、建築限界については統一されていません。

しかし、約20種類に集約化されてEN 15273-3(軌間及び建築限界)に「〇〇ゲージ」というように、名前をつけて規定しています。これをインフラTSI(TSI INF)の4.2.3から引用することで、建築限界、車両限界を定められています。
  EN 15273では「International ゲージ」と呼ばれる国際的な限界を4種類定め、TSIから引用しています。

車両限界については、車両TSI(LOCPAS TSI)の4.2.1.1及び付録Jから、EN15273-2を引用する形で数値を規定しています(表1参照)

日本の車両限界

日本では建築限界や車両限界は、現在は性能規定化していますので数字の規定はありませんが、かつては運輸省令(新幹線鉄道構造規則(1964年運輸省令第70号)及び普通鉄道構造規則(1987年運輸省令第14号))で数値で定めていました

JRさんの駅はこれらの規則よりも古い駅が多いので、「建造物基本構造基準規程」(1965年建施達第4号)、「車両構造基準規程」(1966年工達第12号)で整備されていることが多いと思います。これらの規程以前に建設された駅であっても、これらの国鉄の規程は、駅の実態に合わせて後付で制定されたものですので、国鉄系の駅の場合、狭軌車両の車両幅は3,000mmで、ホーム高さは92cmを標準(あくまで目安値)となっていた(※現在は電車化に伴い嵩上げされている)ことが多いです。

一方民鉄さんの場合は、普通鉄道構造規則(1987年)以前の「地方鉄道建設規程」(1918年閣令第11号)に基づいて建設された駅がまだ残っていることもあると思いますが、こちらは特にホーム高さの規定はありません。保存されている駅で測ってみるとレール面から70cm〜90cmくらいだったようです。車体も小さかったです。

そのため、日本狭軌の鉄道駅については代表して、普通鉄道構造規則の寸法を使わせていただきます。


日欧の比較

表1は車両限界のうち車両上部構造部分を除いた車両限界の幅と高さを示したものです。

EN15273-2では、走行による振れを考慮したキネマティック限界(動的限界)とスタティック限界(静的限界)を制定していますが、日本では静的限界のみです。下表は静止状態に対する限界のみを示しています。

【表1】車両限界(欧州TSI+日本の新幹線)
 
  静止状態 用途
種類 横幅[mm] 高さ[mm]
G1 3,150 4,280 (1914年Berne gauge)
GA 4,320  
GB フランス
GC 4,650 ドイツ
日本 3,600 4,500 新幹線
日本(狭軌) 3,000 4,100 在来線

表1のとおり、欧州のG1、GA、GB、GCゲージは横幅は同じです。

G1、GB、GCゲージと、日本で性能規定化する前の旧省令に基づく限界(現技術基準省令第64条の解説の第4図)を作画した概要図を図1に示します。

【図1】新幹線(黒)、G1 Gauge(赤)の車両限界

欧州の4ゲージが横幅は同じで高さだけが違うのは、最初に決めたG1 Gaugeが、1910年代の最も低い基準の国に合わせたものだったのが、徐々に貨物(海上コンテナ)に合わせてだんだんと上方向に大きくなったためです。

現在は、GBの改良版(UIC code 506では、GB2, GB3 という名称でした)及びGCが一般的に使われています。
 高速鉄道であっても在来線(※GA Gaugeが残っている)を通ることが多い欧州の鉄道ではありますが、フランスでLGV、ドイツでNBSと呼ばれる高速新線を完全に新規で建設する場合にはGC Gaugeが採用されています。

インフラTSIのガイドライン(4.2.1関係)の抜粋を図2に示します。

「P1」は、ゲージが[GC]で、「250km/h〜350km/h」となっていますが、これがヨーロッパの交通網の結合の強化のために整備が進められている高速鉄道新線のゲージになっています。一方、「P2」は高速化改良される路線(に適用されています。


車両限界(横幅)は100年前から同じ

最初のTSIができたのは1996年ですが、そのはるか以前から欧州では、国際列車や国際貨物列車を運行するため、車両やトンネルの大きさを標準化しようとしてきました。

車両については1922年の国際鉄道輸送の協定規則「RIC」このページにて紹介しています)で、軌道についても標準としてPPI(Gabarit passe-partout international)又はベルヌ(ベルン)ゲージと呼ばれる1914年に発効した協定規則(のちUICリーフレット (UIC code506)。7種類のゲージのうち、GA Gaugeです)がありますが、現在はTSIにおいて表1、図1のG1 Gaugeに引き継がれています。

なお、鉄道先進国で島国であるがゆえに特殊な軌道を採用していた英国はPPIに参加していません。横幅・高さは、さらに狭い2,820mm(幅)×3,587mm(高さ)が英国の幹線系鉄道の標準で、今に至っています。

イギリスも、イギリス以外の国も、100年前の当時の小ぶりの車両を前提に一たび整備してしまったインフラは、そう簡単には修正できません。そして現在でも車両幅は比較的小さいままで高速鉄道にまで受け継がれています(欧州では、部分的に在来線線路も走行します)。

高速鉄道線のトンネルの断面積の違いの理由

ここまで述べてきたように車両限界は欧州のほうが日本の新幹線よりも幅も狭いにもかかわらず、トンネルについては欧州のトンネルのほうが幅が広くなっています。

これを「日本の高速鉄道の利点」だと考える方もいるようで、以下の図3ような資料が作られています。車両は小さいのになぜトンネルの横幅が広くなるか、比較してみたいと思います。

 

【図3】新幹線の優位性に関する資料

出典:経済産業省「海外展開戦略(鉄道)」(p8)より抜粋。なお、p13右側(ボストン地下鉄)は、私が入札結果の情報公開資料を調べて作った割と力作の資料なのに「国交省作成」のクレジットが抜けているじゃないですか。・・まあ、いいんですけどね。

鉄道トンネルの大きさの現状

まず、実際のトンネルの大きさを比べてみます(表2,表3)。

表中の「外幅」欄は、施工後のトンネル内径の最大幅部分を表し、その半分を「半径相当」としています。真円形ではない工法や、応力負担をしない壁については若干不正確になってしまいますが、目安として示している次第です。

なお、ここでは上部構造については触れていませんが、後述するように横幅の影響が大きいことと、トンネルの大きさはこの影響ではないため省略している次第です。

【表2】トンネルの「半径」(欧州高速鉄道
路線 トンネル 所在 軌道数 外幅
[m]
半径相当
[m]
長さ[m] 営業速度
[km/h]
営業
LGV 大西洋線(南西支線) Vouvray 複線 11.0
(71u)
5.5 1,496 270 1990年
LGV 大西洋線 Villejust 単線 46
(46u)
4.1 4,800 270(現状300) 1990年
LGV地中海線 Tartaiguille 複線 15.1
(100u)
7.5 2,438 300 2001年
ABSハム−ヴァールブルク線 Egge 複線 12.2 6.1 2,880 150 2003年
NBSニュルンベルク−インゴルシュタット
−ミュンヘン線 (写真参照)
Euerwang 複線 12.6 6.3 7,700 300 2006年
LGVラインローヌ線 Chavanne 複線 12.2
(91u)
6.1 1,970 300 2011年
LGVペルピニャン−フィゲラス線  Perthus 仏−西 単線 10.0 5.0 8,300 300 2013年
ABSベルリンーエアフルト−
ライプツィヒ/ハレ線
Bleßberg 複線 12.6 6.3 8,326 300 2014年
LGV東ヨーロッパ線 Saverne 単線 8.9 4.5 4,019 320 2016年

※表中の「LGV」「NBS」は新建設線を意味し、「ABS」は既設線の改修を意味しております。

※※Sceauxトンネルは駅に近いため地下鉄の技術で開削されており、外径に比べ断面積が小さい形状。参考文献「The French Train à Grande Vitesse: Focusing on the TGV-Atlantique」pp13-19より。標準断面も掲載されています。

上表のトンネルの位置は下図のとおりです。

【図3】トンネルの位置
【表3】トンネルの「半径」(日本)
路線 トンネル 所在 軌道数 外幅
[m]
半径相当
[m]
長さ[m] 営業速度
[km/h]
営業
東海道新幹線 新丹那 静岡 複線 9.6 4.8 7,959 285 1964年
東北新幹線 八甲田 青森 複線 10.4
(64u)
5.2 26,445 260 2010年
北陸新幹線 飯山 長野−新潟 複線 10.4
(64u)
5.2 22,251 260 2015年
中央新幹線
(超電導磁気浮上式)
(標準断面)   複線 13.8 6.9 500 2027年
予定

  

車両の気密性の影響の顕在化

前掲の表2の最初の行のVouvray(ヴヴレイ)トンネルは、フランス・TGVの大西洋線にある、都市郊外(ブドウ畑保全のため)の地下トンネルです。

同線ではトンネルの半径に相当する長さは5.5mと、比較的小さなトンネルでトンネル内空隙の面積(内積)は71m^2です。

このトンネルは列車がトンネルに入出する時の気圧変化によっていわゆる「耳ツン」が発生し、対策を取るまでの間は210km/hに減速走行することとなりました
 しかし、その後の建設された地中海線では、列車速度とトンネル断面積(特に車両のまわりの余白)における必要空気量が研究された結果、トンネルの横幅と車両幅の隙間が空力的な「ピストン現象」を防ぐために必要、とされて、その後のTGV新線(LGV)ではトンネル断面は広くとられるように改正されました。

日本では60年代に分かっていた耳ツンが、フランスで問題になったのは90年代なのですね(1981年に開業した最初の路線(南東線)は山岳トンネルが無く、都市部のVillecresnesトンネル(2890m)みたいなものばかりです)。つまり、大西洋線のトンネルは失敗だったわけです。

ただ、気密性を重視していないことから、日本の新幹線と比べると旅客用のドア幅は広めで、乗り降りはしやすいです。

トンネル微気圧波の発生

一方ドイツでは、2006年に開業したドイツ南部のニュルンベルク−インゴルシュタット−ミュンヘン線の長大山岳トンネル(Euerwang(オイヤーヴァング)トンネル、下のほうの写真参照)でTunnelknall(騒音耳ツンではありません)が発生しているとのことですが、こちらは幸い、問題になったわけではありませんが、軌道敷に騒音軽減対策をしたようです。

オイヤーヴァングトンネルもPortalhaubenと呼んでいるトンネル出入り口にひさしもつけることで防音対策が行われており、断面積も現在の標準よりも大きな91m^2でした。

ドイツではその後建設するトンネルでもひさしや、トンネル出入り口付近の断面積をトランペットのように徐々に大きくする対策も行うようになっています。

【図5a】日本の新幹線のトンネル標準断面

Source:JRTT九州新幹線建設局さん配布資料

【図5b】日本の新幹線のトンネル標準断面

Source:独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構(JRTT)より


トンネル内の避難通路

欧州の鉄道技術基準(TSI)では、トンネルの両側に避難通路の設置を定めています。この影響について延べたいと思います。

日本では、原則的にトンネル内に列車を停車させないことと、乗務員が速やかに避難誘導すること、材料を燃焼しにくくする対策、避難訓練、トンネル内の風向き制御によって、避難専用の通路(※)はなくとも安全となるように対策しています。

※1kmを超える長大なトンネルの場合、技術基準第29条(とその解釈基準4(6)8)において、旅客避難ができる通路を義務付けていますが一般的にはトンネル付近の列車を止めたうえで、線路の上を避難することを前提としています。
 

他方欧州のトンネル安全TSI(SRT TSI)は、トンネルにおける安全対策を規定している技術基準ですが、その4.2.1.6において、0.5km以上の長さのトンネル内には、レール高さ以上の高さの面に(→そのため、隣接した軌道上は避難通路とはならない)、0.8m幅以上の避難通路を設けることが義務づけられています。

先述のドイツのオイヤーヴァングトンネル(2006年5月開業、下の写真)ではトンネルの左右に、歩道のように一段高くなっている通路がみられます。

【写真】ドイツ Euerwang トンネル(2006年9月撮影)
        
【図】フランス Villejustトンネル(単線)

万一の際にはこのような通路を通って、500mおきに設けられた非常出口(※道路や鉄道トンネルは、上下線を別のトンネルにすることを法定する国はアジア・欧州にあり、その上下線を連絡する通路が多い)か、又は1kmおきにある安全地帯に所定時間内に逃げられるようになっているかどうかをリスク分析し、避難計画を作成することも求めています。

日本では上述のように超長大トンネルでもない限り避難専用の通路はわざわざ設置しませんが、もし欧州のTSIの基準を満たすように、トンネルの両側に障害物が無い避難通路を設けるならば日本のトンネルでは(図2のR=4.75に1mが加わりますので)直径換算では、11mほどになると思われます。

建設中の中央新幹線(超電導磁気浮上式鉄道)では車体幅は小ぶりな3m弱ですが、軌道の両側と中央部に通路を作りますし(※避難通路としては中央部の通路を予定しています)、新幹線には無い電磁石が入ったガイドウェイもありますから、トンネルの横幅(直径で、外側)は13.8mになっておりドイツ・ICE並みの大型トンネルになります

【図5】リニア中央新幹線トンネル断面図

出典:国土交通省資料

※リニモ、福岡市交通局七隈線などの自動運転を想定していた路線では、ヨーロッパと同じように避難通路が確保されています。

ところで先ほどの図3では、車両の気密性が高いことがトンネル断面積が小さくて済む理由だと書かれています。確かに、フランスの大西洋線はその実例です。でも、避難通路を設置していないことも大きな理由なのではないでしょうか。

ここで図3を再度よく見ると、下の図6の赤枠のように、この避難通路(Escape Walkway)が書かれているではないですか。また「気密性が高いなど」と、ちゃんと書かれていました。これは気づかないほうが悪いのか(?)。

車両の大きさも不自然な気が・・・?。

【図6】図3の拡大図(赤囲み部分は避難通路)

 

「なぜ日本の〇〇は安全なのか」問題

図3によって、トップセールスは問題なく進んだとします。

・・ですが、その後の技術の現場では以下の課題ができてしまうのです。
 耳ツン対策の面では日本の気密性の高い車体ではトンネル断面積は小さくてもいいのですが、トンネル内に避難通路が必要かどうかは、安全に関する別問題だからです。

このような安全に関することを外国で納得して頂くためには、なぜ、他のシステムと違って日本の新幹線が50年間安全なのか、という理由を紐解き、合理的に解説することが必要になるため、とても大変です。

この、「なぜ日本の〇〇は安全なのか問題」は、向き合った方ではないと分かってもらえない話だと思いますので、避難通路を例としてちょっと紹介させて下さい。※他にも車体強度について別途ご紹介しております。

車両からの火災発生リスクの対策の問題

日本の新幹線には長年の安全な走行実績がありますので、「日本と同じ仕様にしておけば安全上の問題はない」と言いたくなりますが、「トンネル内で列車が発火源となる事故リスクはゼロではないだろう?」 と問われます。

新幹線でも、熱検知センサーにより停車させたため事なきを得たケース(台車亀裂、ブレーキ構造、車軸周りの強度に起因する)もありますし、車内に放火されたこともあります。

海外案件はRAMSに基づいて設計しますので、このようなリスクをあれこれと挙げた上で、日本では避難通路が不要と考えている根拠を立証していくことになるのですが、もし過去にこんな検討をしたことがあったとしても50年以上前ですから、これは大変です。かといって、「鉄道事業者さんが優秀だから」、というのはシステム/製品としての安全性の説明ではありませんので、なかなか理解は得られないです。

※そもそも日本のシステムの床下機器について火源となりえるリスクの算出や、火災発生シナリオは、誰かが代表して一から資料準備したほうが早いのではないかと思います。

車軸温度検知の要否の問題

車上で火源となりえるものの中には、車軸(※50円玉のような形をした左右の車輪をつないでいる軸)があります。走行中の摩擦熱や、ジュール熱があるためです。

日本の場合、線路近くに設置したセンサーで車軸の温度検知を行い異常がある列車を検出する仕組みが、自動運転を行う列車や、新幹線の長大なトンネル付近、長大橋梁付近に設置されています。また、高速鉄道車両では車軸の温度検知も可能です。
 一方欧州では、車両TSI(TSI LOC)4.2.3.3.2及び欧州規格EN 15437-2において、高速鉄道車両以外でも、幹線系の鉄道では、車上のセンサーで、車軸を受けているベアリングの温度検知を義務付けております。日本と違って、火災事故が発生しているために義務付けた安全規制が欧州レベルに引き継がれているものと思います。
 さはさりながら、欧州でこのような車上センサーを高速鉄道以外にも義務付けている中で、「日本のシステムでは必要ありません」、という説明をして、その理由を納得してもらわなければなりません。


複線トンネルの避難路

また、避難の容易さから道路トンネルは上下線別のトンネルにするように(※複線にしない)法定している国もあります(シンガポール等)。

一方、日本では道路も鉄道も複線トンネルが基本ですから、この点も現地法制度との相違点となる要素を含んでいます。

環境アセスメントの厳しさの問題

前掲の表1のようにドイツのトンネルにおいてその断面積が大きいのは、トンネル衝撃波を72dB以下に抑えて環境影響評価(環境アセスメント)をクリアする必要性の側面が大きいと思います。イタリアもトンネルの直径は14mを超えていますが、公共事業を進めるのに苦労している両国ですから、環境アセスメント対策がトンネルが大きくなる理由ではないかと(断言はできませんが)、想像しています。
 環境アセスメントの影響力の違いは、鉄道技術の問題ではなく「社会科」の問題ではありますが、国によっては事業の円滑執行上のリスクとなりえる問題のようです。


以上です。繰り返しますが、安全に関することは大きなリスク要因であり、万一発煙事故でも起ころうものなら責任追及されかねず、日本側も、相手国側も妥協が難しいという背景を分かって下さい。

こんな話を飛ばさずに読んでいただいた方は鉄道関係の方だと思います。今後も目先の課題だけ見ずに、なるべく広い視点に立ったご対応をお願いいたします。

日欧の違い まとめ

欧州では、国際列車や国際貨物列車を運行するため、車両については1922年の国際鉄道輸送の協定規則「RIC」、軌道については1914年の協定規則「PPI」に基づきインフラが整備されてきました。PPIはイギリスを除いて当時最も小さな車両を使っていたフランスに合わせたため、車両幅は3150mmと小さいまま、現在のTSIにおけるGA Gauge(車両限界の一つ)に引き継がれています。

 

最近はコンテナ貨物輸送のため少しずつ大きな車両限界が適用されていますが(GB、GC+Gaugeなど)、在来線を走行することもあるためヨーロッパの高速列車の車両幅は100年前と変わりません。一方、日本の標準軌の路線では、幅広な3000mm〜3600mmとなっています。

一方欧州の車両幅は小さめなのですが、トンネルについては断面積が大きくなっています。

これは欧州の場合、気密性の低い車両対応のため乗客の乗り心地(耳ツン)のためにはトンネル断面積は大きく取る必要がありましたけれど、現在、TSIによって長大トンネルには避難通路(0.8m幅×2)がトンネル両側に設置されるように義務付けられていることが影響しています。

一方、日本では避難専用の通路設置は法的には必要ではありません(事故発生シナリオの違いです)が、車両の気密性を確保するために、新幹線のドア幅が狭くなっている面があります。

さらには、(日本でも解決に至っておりませんが)微気圧波による衝撃音(トンネルドン)に伴う騒音問題は、公共事業に対する目線を厳しくしています。騒音緩和のためにトンネルの前後に覆工を数十メートル設置する等、日本と同じ対応をしています。

主に以上の点から、欧州での鉄道トンネルの大きさ(断面積)は大きくなっています。

日本の高速鉄道はトンネル断面積が小さいのですが、技術的に優れているかどうかは想定する事故発生シナリオや、価値観によります。日本で建設中の中央新幹線(営業運転速度500km/h)では、欧州と同じようにトンネル断面積は広くとっていますが、技術的に劣ってはいませんよね。