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速度照査パターン

 

速度照査パターンとは、車両に搭載されたコンピューターが算出した、場所・信号状況で許されている上限速度です。欧州共通信号システム

欧州(フランス)の高速鉄道用信号システム

フランスの高速鉄道用信号(TVM430)での速度制御装置の速度パターンです。下のほうに指示速度が表示されていますが、この指示速度を超えていても、赤の線の速度を超えていない場合にはブレーキがかからない仕組みになっています。赤の速度照査パターンは守らなければならない速度ですが、指示されている300km/hと比べてだいぶ上にあり、また青い計算上の線との間にも余裕が設定されております。
  300km/h運転を指示する信号は、絶対下回らなければならない速度というわけではないため、いわば「目標速度」といえます。

図1の元資料はこちら(フランス鉄道安全公共庁サイト)です。「TELECHARGER」でダウンロードできます。)

 
【図1】高速鉄道用信号信号(TVM430)におけるATC速度照査パターン

日本の高速鉄道用信号システム(DS-ATC)

路線ごとに異なるのですが、日本の場合には所定の位置において指示速度を超過していると、指示速度以下になるまで自動的にブレーキが動作し、列車が減速する仕組みになっています。
 適切な図がないため、以下のサイト下部のpdfファイルの図をご覧ください。

ATC速度照査パターン(JR東海さんニュースリリース2014年12月18日)


技術基準上は、鉄道等の技術上の基準を定める省令第54条解釈基準(1)、第101条解説1(2)に、以下のように解釈を示しておりますが、具体的な計算方法は規定されておりません。

  • 省令第54条解釈基準(1) 
  •  ※保安装置関係

    (2) 車内信号閉そく式の場合は、車内信号機の現示する信号により防護される区域に設けた列車検知装置等により車内信号機に信号を現示させるために用いる制御情報を示す区間(以下「信号表示区間」という。)の制御情報を自動的に制御するものであり、かつ、次に掲げる区間(B又はDに掲げる区間にあっては、信号表示区間を2以上の進路に共用しない場合に限る。)にある車内信号機に停止信号を現示するものであること
    @ 列車等がある閉そく区間
    以下略

  • 省令第101条の解説1(2)
  •  ※運転関係

    (中略)この装置は限定されたものではなく、いわゆるATC(自動列車運転装置(ATO)を含む。)も列車間の間隔を確保する装置として使用することができる。
     例えば、この方法による場合のATCは、必要に応じて、線路に運転速度を制御するための制御情報区間を設定することはあっても、閉そくをするための閉そく区間は設ける必要がなく、制御情報に応じて列車の運転速度を制御するものであればよい。(以下略)

海外の場合にはわざとATC速度照査パターンにあたるように運転し、自動ブレーキで止めることもあるらしいですが、日本ではATC速度照査パターンを超えてしまわないように、指示速度よりも若干低い速度で運転するように気を付けています(ATCが動作すると乗りごこちも悪くなります)。

フランスの計算上の曲線(青線)がはたしてどのように計算されているのかが不明ですが、ここを研究すると線路容量をより活用できる可能性があるのではないかと思います。

 いやいや、余裕を使ってしまうのは副作用がありそうですね。ともかく研究が必要です。

ETCSのパターン

ボンバルディアの方が作られているETCSのブレーキパターンを再現するソフトウェアがフリーソフトとして公開されています。

thomas-brunnengraeberからダウンロードできます。これについては私の研究中ですのでまとまった際に公表します。

まとめ

両者を比較する材料がないので、安全性に与える影響等も不明ですが、照査パターンの計算上の余裕の取り方に考え方の差があるようです。フランスのTVM430では計算上の速度パターンを超える領域での運転を許容しているというべきか、逆にあえて低い速度指示を出していると言えるのか不明です。

いずれにせよ、個人的にかなり興味があるため違いをご紹介しました。