こころ
さびしさ
夕暮れは寂しい時間抱擁に鼓動重ねて高鳴らしても
哀しみは涙の水底びしょ濡れる 街、人、空も すべてに Goodbye
飴玉を三つも頬張り甘い子よ 良いな この舌 苦さ残るよ
時上手く操る術士があればぜひ楽しき遅く辛きは速く
心地よく花から花へ舞う蝶よ軽やかに世はどう渡ればいい
また会えぬ日々の始まり七夕は何を心に長き耐えるか
言わないで見送る寂しさ重ねれば言ってしまった後悔選ぶ
祈っても叶う出来事少ないと祈り覚えぬ心の哀れ
胸の内草笛の音だ不安げな少年か細く咽び呼ぶよな
美しさ胸貫けば高鳴りてこの世の讃え歌に響かす
あふれ出る涙も心の糧として頑張る君はいつしか剛力
梅園は花より多い人の群れ香る寂しさそれぞれ咲かせる
また死へと傾くこと知るやるせなさ夕暮れ幕引き棒に振った日
転んだら泣いて抱かれて母の胸やがて笑った柔き泣き場所
風吹けばただうれしくて笑ってる若葉よお前の楽しさをくれ
思い出が思い出の先欲しがって悪い癖だな何度も欲しがる
病んでいる風景優しく朽ちさせる柔らかな陽射しにまどろみたくて
とまどい
いつからか別れの予感胸に持ち君と一緒にいられないと知る
身を焦がす熱の裁きにうなされるあれこれそれは正しかったか
僕ゆえに役立ったことあるのかな一つぐらいはあればと生きる
暗がりの心と面の僕だから陽射しのかけらにとまどうばかりに
チクチクと棘挿す口の苛みよ濡らして優しき朝露の言葉
生来に優しい人の羨まし道のり遥か仏の温和
冬の日を耐える言葉を探しおり探しあぐねて内を見るなり
つかめると信じた夢は蜃気楼蒼ざめ日々の幻視を悼む
泣き言と甘えばかりに身を染めて世は疎ましき修羅場かな
弱さゆえ生きていること苦しくて声鳴き悲鳴誰か聞いてよ
せせらぎや水はもつれて麗しく人はもつれて世は煩わし
坂道を落ちるボールの加速度で日々 息切れる僕を置き去る
まだ騒ぐ日焼けの跡の潮騒は忘れ得ぬ恋の胸騒ぎに似て
哀しみを知るため人は生き急ぐ影より離れぬ老いを従え
悲しみは静けさに似る澄み渡り胸に沁むのみ取り出すすべなし
薄墨の空にもたげる郷愁の淡くざわめき思いも乱れて
花たちは一心不乱に美しく散々に乱れて僕だけ悲しく
この目からかすむばかりの遠い羽根あるいは風に遊ばれているのか
秋の空自分の心に澄みきれば お前のように人からは遠くて
天上に大風地には吹きすさぶやるせなきかな人の大風
うなずけぬ暮らしにしたり顔をして日々に打ち消す胸の軋みよ
にがさ
温かき生の秘め事告げられる秘密溶け合う憂苦の濃さよ
軋み歌ドアのおんぼろ蝶番寂しさ歯噛み心おんぼろ
上手く行くはず上手く行かなくて子供心に石蹴り飛ばす
弾けるな季節外れのシャボン玉心潰れる刹那見るよう
悲しみもこの世の物と寂しくも笑う術知る年月生きる
思い出は消せず消しゴム使っても絵具重ねるそのカンバスに
一つだと思う川さえ裂かれ行く止まらぬ流れ悲鳴に聞こえて
眠れぬ夜嫌いなだけの僕といる苦しさ心強くするかな
ひとしきり眠ったところで生も夢逃れる場所なし悲しみが見る
擦り切れて心はぼろに穴も開くけれど誰をも照らす朝の陽
身を燃やし地に堕つ枯葉悔いばかり悔いの錦や人生に似る
人の顔すべて影絵となり果てて人は枯れ行く野の露となる
悲しみは万力僕を締め上げて声なき悲鳴搾り取られる
夕映えに空痣だらけ眠られぬまた苦しみの闇の入り口
根拠なき自信の人が羨まし故なき不安に責められる我
満点のプラネタリュウムの星ほどの大志失くして常闇の瞳
蜘蛛の巣に絡みとられた赤とんぼ食われるために生まれ来たのか
妄想が火輪の様に回転し焼け焦げ落ちる虫食いの心
怒りにて心の歯車回す時焼き切れ落ちん思考の先が
悔むたび噛みしめられる唇が薄くなったか鏡眺めて
髪切りて生き続けるとすこの胸や憂い失せずは白雲のごとし
春風に包まれ僕の解れ行くバラの体は持ち去ってくれ
美しき言葉の上に眠るにはあまりに苦き僕の舌
若き日の君を慕いぬ愛しさを告げぬ言の葉いくたび噛みしむ
ポケットのメモの言葉は色あせて感動失くし夕日冷たし
苦しみの寄せ止まぬ生もどかしく夢より急ぎ過ぎ去ってくれ
また明日と来ない明日に期待して生食いつぶしまた明日を夢む
誤解とも正しきこととも言えぬ事増えて行くのみ口噤むのみ
プリズムはその身に虹色 解き放つ 闇のみ吐いて歪んだ僕だ
水を飲む喉の渇きは癒せども胸の渇きは何で癒せる
色あせた栞読ませる言の葉やその後の僕は何を出来たか
窮屈な人生抜け出す風穴を探し青空今日も見上げる
思い出の写真破るはほろ苦く恋し初めのときめき苛む
借りてきて 言葉がらくた薄っぺら 心で磨き しみる言の葉
野良犬の悔しい目をしてつきまとう疼き続ける心の古傷
いく年も思い重ねた胸のうち半分さえも口に出せずに
悲しみは締まり続ける万力で絞られ続ける声なき悲鳴
届かない夢に伸ばす手へこたれて恨み辛みを覚えはじめる
やわらぎ
昨日まで頭に入らぬ文字並ぶその詩親しく語り始める
懐かしき曲詰め込んだCDは昔の思いも押し込む物と
一面の菜の花夕日汽車ポッポ柔き胸の香笑う子の夢
道具持つ手の表情に数多あり一つ一つが良きものへの祈り
300年生き抜くことは有り難く何を思うかブナの巨木よ
丸い月独り舞台の空にいる まぶた閉じれば心もまんまる
小鳥にも響く教えを説く人の絵の下に立つ祝福浴びたし
歳月に変わる人いる変わらない友と飾らぬ会話で笑う
こんなにも心のままに話しても無理なく分かる気持ちよき君
たおやかな陽射しを翅に赤とんぼ澄み切る風に鎮魂の儀
春に咲く花は野に待つ恋人か出会い祝して心浮き立つ
溜息に毒気も抜けて街灯り綺麗だ気づかぬままいて僕は
毎日の空の色合い違うこと感じて生きる我でありたい
青空が映える水田茅葺を見れば穏やかになる胸の何故
早起きや咲いたばかりの朝顔の笑顔に与る三文の徳
犬と目が合うほど電車がゆっくりと進む青田の皆こざっぱり
蜜柑成る明るき木の下手を合わせ恵み落ちるを待ちたく思いて
仏像の顔それぞれの品がありそれぞれなるから楽しくもあり
虹映える瞳明るく喜んで軽き視線は鳥と遊ぶよ
流れ星燃え尽きれども星数多空に慰め消えることなし
金柑は太陽の色残る道心温もり歩いていける
咎め無き牛の瞳に百日紅その片隅に我憩いたく
旅空にあれば心も騒ぎ出し愉快な言葉を語り出す
何もせぬ休みの夕べの穏やかさ庭にで植木と風に吹かれる
感じては素直に声にする鳥よ 爽やかな朝 そのままの歌
僕であり あり続けること痛みとし 生きる辛さを 慰める花
窓からの陽射し背中に優しくて電車でこのまま運ばれていきたい
8年も会わずにいた友 語らえば とき遡る あの日の心に
いつまでも僕を慕ってついてくる月にさよなら憚られてさ
手のひらをくぼませ朝の陽の雫 夢見る力 湧く泉なれ
唇に明るい陽射しが触れている言葉も少し軽く流れる