NO.19

2006年1月13日〜1月20日まで8日間


地中海の真ん中に浮かぶ小さな島国マルタ共和国は淡路島の約半分の面積という。マルタ島、ゴゾ島、コミノ島と2つの無人島がある。人口39万人、そのうち約36万人がマルタ島に、あと3万人がゴゾ島に、コミノ島には2千人ほどが住んでいる。日本と同じ島国はイタリアやアフリカ大陸のチュニジア、リビアなどに囲まれ、ヨーロッパとアフリカをを結ぶ要衝であり、さまざまな民族が通過していく。
自然の美しい風光と、すぐれた歴史遺産の数々があるという地中海の楽園・マルタの魅力に触れる旅は楽しみだ。





マルタの魅力は聖ヨハネ騎士団の栄華の跡をたどることから始まる。
騎士団、中でも聖ヨハネ騎士団は1113年聖地エルサレムに創立された。キリスト教を尊び、キリスト教徒をイスラム教徒など異教徒から守ることを目的とし、巡礼者がエルサレムまでの長い道程を安全に旅するように活動するところから始まった。騎士団は、ヨーロッパ各地を転々とし、時代の紆余曲折を経て、1530年にマルタに聖ヨハネ騎士団の本拠地が置かれ、マルタ騎士団とも呼ばれるようになった。
1565年にはオスマントルコの大艦隊が襲来したが、「大包囲作戦」の名で知られる歴史的な戦いの末に撃退、名声は飛躍的に高まった。その後ヨーロッパ中の有力者からの寄進をもとに、当時の騎士団長ド・ラ・ヴァレッタは岬に城塞都市の礎を築いている。現在のマルタ共和国の首都ヴァレッタはその団長の名をとって名づけられたものである。町の中心部には質素な外観からは想像もつかない豪華な内装や天井画、カラフルな大理石でモザイクされた床一面の墓標など、贅の限りを尽くした聖ヨハネ大聖堂が建てられている。大聖堂美術館にあるルネッサンスの鬼才、カラバッジョの「聖ヨハネの斬首」は迫力ある絵画作品だ。そして騎士団長の宮殿には権限と財力の栄華の跡を見ることが出来る。
騎士団はフランス、イタリア、ポルトガル、イングランドなど、出身地により構成されていた。騎士団員は裕福な家庭の次男、三男などで構成され、経済的援助や領地からの収入などで繁栄していたが、栄華を誇った時代は長く続いていない。
1798年エジプト遠征途上のナポレオンが寄航した際、彼らは抵抗することなく島を明け渡してしまう。「要塞は堅固なれど、人々は弱かった」とナポレオンは語ったという。268年に及ぶヨハネ騎士団のマルタ支配はあっけなく幕切れとなった。
騎士団が小さな島国マルタにもたらした多くの富や恩恵、今なおほとんどそのままのたたずまいで遺されている堅固な要塞や砦、宮殿など聖ヨハネ騎士団の残したものをこの旅でたどってみた。


騎士団長の宮殿内部:騎士の甲冑が並ぶ兵器庫通路
(絵葉書による)

ヴァレッタから眺めた聖アンジェロ砦と
海辺に広がる城塞都市スリー・シティズ
アッパーバラッカガーデンの見晴らし台
素晴らしいパノラマが広がる大きな公園

海を見つめる監視塔
監視塔の象徴「耳」と海を睨む「目」が印象的
騎士団の宿泊所だったところ
現在は首相官邸

騎士団の紋章、8つの尖角をもった「マルタの十字架」
マルタ空港や、街中の道路でもみかけた。
マルタの十字架は銀細工のきれいなアクセサリーにもなっている。





マルタ島やゴゾ島には今から5千年〜3千数百年も以前の青銅時代に造られた巨石文化時代の神殿跡群が多くあり、古代人の暮らしを今に伝えている。巨大な岩を縦横に組み上げた様子は機具がない時代にどのようにして運び、組み立てたのか…その偉業に驚かされる。周りに牧歌的な風景が広がるゴゾ島のジュガンティーア神殿、爽快な紺碧の地中海を望むマルタ島のハガールキム神殿を見学したが、世界遺産に登録された30はあるという巨石神殿は各地に点在している。
ゴゾ島 ジュガンティーア神殿

マルタ島 ハガール・キム神殿


ヴァレッタ旧市街は1980年に世界遺産に登録されている。
聖ヨハネ騎士団長ド・ラ・ヴァレッタによって築かれた城塞都市である。まっすぐに延びた道路が続く町並み、堅牢な城塞、騎士団長の宮殿、聖ヨハネ教会など、聖ヨハネ騎士団の栄華を今なおとどめている。
スリー・シティズから見たヴァレッタの町賑やかなヴァレッタの繁華街リパブリック通り






アズレー・ウインドー
ゴゾ島にあるアズレー・ウインドーは数千年の風と波の浸食作用で作られた高さ20m、幅100m、奥行き40mの自然のアーチ。大きな岩に大きな穴がぽっかり開いている。アズレー・ウインドウの景観と、明るい太陽とアーチの間からのぞく美しい地中海の紺碧の色は素晴らしい。


ブルーグロット:青の洞窟
遊覧船乗り場と洞窟の入り口

コバルトグリーンに輝く洞窟の中
洞窟めぐりの舟に乗り、ブルー・グロット「青の洞窟」観光をする。朝一番の光が美しいということで9時半の乗船だ。10人乗りのカラフルな小船で約30分の遊覧は風もなく快晴。マルタ島の西海岸は急な斜面と断崖が続き、波間から岩についている赤い珊瑚も見られる。陸続きの高い岩礁は年月を経て風と波で浸食されている。中でも大きなアーチを描いているブルー・グロットは、光の反射が幻想的でとてもきれいなコバルトグリーンをしていた。以前見たイタリア・カプリ島の「青の洞窟」を思い出したが、マルタ島の「ブルー・グロット」の方が大変入りやすかった。






イムディーナはマルタ・ストーンのハチミツ色と狭い小路
ヴァレッタの前の首都だったイムディーナ(メディナ:旧市街)はアラビア語で「城壁の町」という。メインゲートの橋を渡り町に入ると、修道院や騎士団の夏の別荘、博物館や宮殿など大小あわせて600の建物があり現在350人が住んでいる。ほとんどマルタ・ストーンと呼ばれるハチミツ色をした建物だ。山がないので木が高価となり木造の建物は見当たらない。マルタ・ストーンの建物は外の窓は小さいが、中には窓や中庭もある。海に囲まれ海賊が横行、そのためくねくねとした狭い小路の通りになったようだ。人が少なく落ち着いた静かなたたずまいに、しばし時が止まったような錯覚を覚えるひとときだった。

カラフルなボート
マルタ島最大の漁村マルサ・シュロック。港には鮮やかな青い色を基調に黄色や、赤、グリーンなどで彩色されたカラフルな舟がいっぱい係留している。舳先に一対の目が描かれている舟が見られるが、悪天候や不漁から漁師を守る魔よけと海のお守りのようだ。美しい風景と、私の大好きな生き生きとした明るい色彩の舟が停泊している様子は、とてものどかで嬉しいひとときだった。尚、マルタ島のブルー・グロット「青の洞窟」に入ったのもこんなカラフルな舟でした。

ヴィットリオーザのきれいなバルコニー
スリー・シティーのヴィットリオーザをはじめマルタの住宅には装飾豊かなバルコニーが軒を飾る。緑やブーゲンビリア、ゼラニウムなどの花々が咲き、磨かれた窓ガラスに明るい陽光が射し込んで美しい。






マルタの食事はイタリアに近いこともあり、シチリア島などの南イタリアの料理に似ている。海に囲まれているので魚介類が豊富だ。私はマルサシュロックで食べたムール貝や海老、イカ、タコの入った海鮮スパゲッティが一番のお気に入り。漁港の傍のレストランでこれが前菜として供されたがとてもおいしかった。今回の旅は5つ星のホテルに連泊したが、ホテルのレストランの食事も野菜や果物も多くさまざまな料理が楽しめた。

チーズフライ
ビーフ

テラミス
魚のグリル

イカスミのスパゲッティ
ロールキャベツ

海鮮スパゲッティ
メカジキのソテー




マルタ共和国には日本からの直行便がなく、往路ローマ、復路ミラノで乗り継ぐ。小さいがきれいなマルタ空港でまず最初に出迎えてくれたのが十字軍の像であり、町全体が騎士団の足跡に包まれゆかりの建物がたくさんあることは想像以上の驚きだった。明るい太陽と美しい紺碧の地中海、小さい島を彩る文明の足跡、歴史をたたえた町並み、のんびりとしてやさしく穏やかな表情のマルタの人々、治安も良く安心して町を歩くことも出来る。淡路島の半分の大きさというが、本当にそんなに小さいの??というくらい大きく感じる。日本からの旅行者はまだまだ少ないようだが、観光業に4万人の人が従事しているそうだ。映画のロケ地としても多く使われており、旅のプランに地中海の楽園・マルタはおすすめです。

旅の撮影:CASIO EXCILIM-Z40 デジタルカメラ
(update:2006/02/11)



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