JUNK FOOD |
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1998年作品。日本映画。84分。 配給=スタンス・カンパニー。監督・脚本=山本政志。プロデューサー=磯見俊裕。映像=伊藤寛。録音=滝澤修。編集=掛須秀一。リョウ=鬼丸、カウル=アリ・アーメッド、ミユキ=飯島みゆき、ヒデ=義幸、ミャン=MIA、サト=津田寛治、横山=古田新太、敏子=山本静子
「ロビンソンの庭」に感銘を受けて以来、山本政志監督の動向に注目してきた。「ジャンク・フード」は、80年代の凶暴性を取り戻した山本監督らしい作品だが、すっきりと評価できない気持ちが続いている。麻薬中毒のOLのパートは暴力と叙情がかみあっている。しかし、後半はやや拡散的だ。インディーズのいかがわしさや多国籍的な視線はたしかに健在だが、ぎりぎりの所で現在のシステムに回収されているように感じる。
クラブで出会った連中が連れ立って遺骨を海に流すラスト・シーンは、あまりにも感傷的すぎる。あんな形で淡い共同性を演出するのは疑問だ。最初と最後に視覚障害を持つ実母を登場させながら、偽りの日常を演出した意図も理解できない。もっと突き放した表現にならなければ、「人間万歳」になりかねない。エディングの町田康の歌「どうにかなる」も好きになれない。
フレンチ ドレッシング |
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1997年作品。日本映画。100分。 配給=大映。監督・脚本=斎藤久志。原作=やまだないと「フレンチ ドレッシング」。プロデューサー=土川勉、下田淳行。撮影=林淳一郎。照明=前原信雄。美術=丸尾知行。編集=菊池純一。音楽=シーガル・スクリーミング・キス・ハー・キス・ハー。岸田真弓=櫻田宗久、村井=阿部寛、マリィ=唯野未歩子
微妙に揺れる男女3人の関係を描いた佳作。文字にすると暴力的で過激に思える3人の関係だが、よけいな説明をしないことで、かえってリアルな質感が出た。櫻田宗久は体当たりの演技。役者としての決意がみなぎる。「マイ・プライベート・アイダホ」の斎藤久志監督と女優・唯野未歩子さんの挨拶
VELVET goldmine |
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1998年作品。イギリス映画。124分。 配給=日本ヘラルド映画。監督・脚本トッド・ヘインズ(Todd Haynes)。制作クリスティーヌ・バション。撮影監督マリース・アルベルティ。編集ジェィムズ・ライオンズ。衣装デザイン=サンディ・パウエル。音楽監修:ランドール・ポスター。作曲カーター・バーウェル。 カート・ワイルド=ユアン・マクレガー(Ewan McGregor)、ブランアン・スレイド=ジョナサン・リース・マイヤーズ(Jonathan Rhys Meyers)、マンディ・スレイド=トニーコレット、アーサー・スチュアート=クリスチャン・ベール、ジェリー・ディバイン=エディ・イザード、シャノン=エミリー・ウーフ、セシル=マイケル・フィースト、ジャック・フェアリー=ミッコー・ウエストモレランド、パントマイム=リンゼイ・ケンプ
監督トッド・ヘインズが、70年代のグラムロックに心からのオマージュを捧げた作品。映画としてのまとまりには難点もあるが、当時の奔放な熱気が伝わってくるサイケデリックな愛すべきフィルムだ。眠っていたグラムの魂が呼び覚まされたような得難い2時間だった。
少し気の弱い青年役が続いていたユアン・マクレガーだが、「トレインスポッティング」以上に破壊的なロッカー像をたたきつけた。冷えた官能性をただよわせるジョナサン・リース・マイヤーズは、まさに逸材。2人の吹き替えなしの熱唱も見事だ。そしてリンゼイ・ケンプのパフォーマンスが、当時の雰囲気を蘇らせていた。
NIRVANA |
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1996年作品。イタリア・フランス合作。113分。配給=K2エンタテインメント。監督・原案ガブリエレ・サルヴァトレス(Gabriele Salvatores)。脚本ガブリエレ・サルヴァトレス、グロリア・コリカ、ヒノ・カクッチ。製作総指揮マウリツィオ・トッティ。製作ヴィットリオ・チェッキ・ゴーリ、リタ・チェッキ・ゴーリ、マウリツィオ・トッティ。撮影イターロ・ペトリッチオーネ。編集マッシモ・フィオッチ。美術ジャンカルロ・バシーリ。特殊視覚効果デジタリア・グラフィクス。衣装ジョルジオ・アルマーニ、パトリツィア・チェコリーリ、フローレンス・エミール。音楽マウロ・パガーニ、フェデリコ・デ・ロベルティス。ジミー=クリストファー・ランバート(Christopher Lambert)、ソロ=ディエゴ・アバタントゥオーノ、ジョイスティック=セルジオ・ルビーニ、ナイマ=ステファニア・ロッカ(Stefania Rocca)、リザ=エマニュエル・セイナー(Emmanuelle Seigner)
遅れてきたサイバー・パンク映画といえばいいのか。どうもすっきりしない。ヒンズー教などヨーロッパとは異質な文化とコンピューターを結び付ける手法は、使い古された感がある。1982年製作の「トロン」なら許されたかもしれないが、電脳空間の描き方があまりにも古すぎる。
消えた恋人リザを探すゲーム・デザイナーというのも安易な設定。ゲームの世界と現実を対比するアイデンティティ論も聞き飽きたテーマだ。自我に目覚めたゲームの主人公ソロの願いを聞き、会社のデータバンクに侵入してデータを消すというのも月並みな展開。ただ、自身の記憶を持たず、リザの記憶を再現するナイマの毅然とした姿は、ソロと自分を重ね合わせるデザイナーよりも輝いている。
NIGHTWATCH |
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1996年作品。アメリカ映画。102分。配給=松竹富士。監督オーレ・ボールネダル(Ole Bornedal)。製作マイケル・オーベル。脚本オーレ・ボールネダル、スティーブン・ソダーバーグ。撮影監督ダン・ラウストセンDEF。編集サリー・メンケ。衣装ルイーズ・ミンゲンバック。音楽ヨアキム・ホルベック。 メインタイトル=イマジナリー・フォーシーズ(カイル・クーパー、キンバリー・ジュー)。マーティン・ベルズ=ユアン・マクレガー、クレイ警部=ニック・ノルティ、ジェイムズ=ジョシュ・ブローリン、キャサリン=パトリシア・アークエット
オーレ・ボールネダルはデンマークの監督。1994年に屍姦をテーマにした「モルグ」を発表し、ヒッチコックと比較されるほど高い評価を得た。「ナイトウォッチ」は、自作のハリウッド版リメイク。「モルグ」はデンマークの暗く重たい空気が全編に緊張を与えていたが、舞台をロスアンゼルスに移したので、文字通り空気が変わってしまった。いくら映像テクニックを労しても、恐怖が増幅されていかない。
「モルグ」にあったカギとなるシーンが何故かカットされたので、物語が分かりにくくなった。また、ラストの結婚式の見事な処理が削除され、青春群像としての味わいも中途半端に終った。ユアン・マクレガーは相変わらずうまいが、恋人役にパトリシア・アークエットは無理がある。カイル・クーパーのタイトルも、イマイチ切れがない。才能がある監督だけに、なんとも惜しい。
OUT OF SIGHT |
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1998年作品。アメリカ映画。123分。配給=UIP。監督スティーブン・ソダーバーグ(Steven Soderbergh)。脚本スコット・フランク。原作エルモア・レナード。製作ダニー・デビート、マイケル・シャムバーグ。製作総指揮バリー・ソネンフェルド、ジョン・ハーディー。撮影エリオット・デービス。衣装ベッツィ・ハイマン。編集アン・V・コーテス。音楽デビッド・ホルムズ。ジャック・フォーリー=ジョージ・クルーニー、カレン・シスコ=ジェニファー・ロペス、バディ・ブラック=ヴィング・レイムズ、リチャード・リプリー=アルバート・ブルックス、モーリス・"スヌーピー"・ミラー=ドン・チードル、グレン・マイケルズ=スティーブ・ゼーン、マーシャル・シスコ=デニス・ファリーナ
内省しない男たちを中心にしたソダーバーグ監督の新境地。最近人気のレナード作品をスコット・フランクが丁寧な脚本にまとめあげている。そして監督の機知に満ちた映像が艶と落ち着きのある雰囲気を醸し出す。どんな時でも気品にあふれたそのカメラワークは、監督の個性だが、アクションシーンなどではときに物足りなくなる場合もある。
ジャック・フォーリー(ジョージ・クルーニー)、カレン・シスコ(ジェニファー・ロペス)が、最近珍しい、しっとりとした大人の触れ合いを見せてくれる。トランクの中で二人が交わす会話が素晴らしい。「俺たちに明日はない」など、さまざまな映画が登場するのも小粋だ。
踊る大捜査線 |
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1998年作品。日本映画。119分。配給=東宝。監督=本広克行。 製作=村上光一、中村敏夫。企画=北林由孝、山田良明、河村雄太郎。 脚本=君塚良一。撮影=藤石修。照明=石丸隆一。編集=松尾浩。音楽=松本晃彦。青島俊作=織田裕二、室井慎次=柳葉敏郎、恩田すみれ=深津絵里、柏木雪乃=水野美紀、袴田健吾=小野武彦、魚住二郎=佐戸井けん太、真下正義=ユースケ・サンタマリア、秋山副署長=斉藤暁、新城賢太郎=筧利夫、神田署長=北村総一郎、島津捜査一課長=浜田晃、中西盗犯係長=小林すすむ、 日向真奈美=小泉今日子、和久平八郎=いかりや長介
テレビを使って映画をヒットさせる企画が見事に成功した。90年代で最も観客を動員した実写の邦画になりそうだ。笑いとシリアスさのバランス感覚の良さ。日本の刑事ものにありがちな重たさがなく、エリートと現場の警官との対立という構図はアメリカの警察ものに近い。青島巡査部長役の織田裕二の魅力を生かしながら、サイコパス役で小泉今日子を登場させる仕掛けもうれしい。
「羊たちの沈黙」をまねた展開は面白いが、「羊たちの沈黙」ではFBI訓練生の深層心理がレクター博士によって暴かれていくというスリルがあったが、「踊る大捜査線」は犯罪者と刑事が明確に区別され、関係が固定化している。人物造形はくっきりしているが、映画の展開に伴う劇的な人物像の変化はない。熱血漢・青島刑事の隠されたトラウマがドラマに絡んでくると、凄まじい傑作になったかもしれない。
the TRUMAN show |
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1998年作品。アメリカ映画。103分。配給UIP。監督ピーター・ウィアー。脚本アンドリュー・ニコル。撮影ピーター・ビジウ。編集ウィリアム・アンダースン、リー・スミス。音楽バークバード・ダールウィッツ。衣装マリリン・マシューズ。トゥルーマン・バーバンク=ジム・キャリー、クリストフ=エド・ハリス、メリル=ローラ・リニー、マーロン=ノア・エメリッヒ、ローレン/シルヴィア=ナターシャ・マケルホーン、トゥルーマンの母=ホランド・テイラー、トゥルーマンの父=ブライアン・ディレイト
トルーマン以外は、ドラマの出演者だというテレビ番組。5000の隠しカメラが30年間、トルーマンを撮し、放映し続けている。しかも人工の都市は天候さえも制御可能な巨大なドームだ。これは、言ってみれば、大掛かりな「どっきり・カメラ」だろう。1時間ならともかく、30年間も飽きないほど魅力的とは思えない。ラストシーンのように、トルーマンが仕掛けに気付き始め、脱出を試みるような波乱万丈の連続でなければ、とてももたないだろう。
全世界が注視する中でトルーマンはドームを出ていき、観客はほっとして別の番組を探す。これはテレビ批判、観客批判になり得ているのだろうか。あるいは管理社会を撃っているのだろうか。私はそうは思わない。
何ら発見がなかった。「見ている者」と「見られている者」の関係が逆転するインパクトがなければ、批判の力はない。せめて「トルーマンショー」を撮っていたスタッフの生活が暴かれたり、思わぬ人が新たなトルーマンになるようなラストシーンならば、余韻も残ったが。
がんばっていきまっしょい |
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1998年作品。日本映画。120分。配給=東映。監督・脚本=磯村一路。製作=周防正行、桝井省志、宅間秋史。 原作=敷村良子。 撮影監督=長田勇市(J.S.C)。照明=豊見山明長。録音=郡弘道。美術=磯田典宏。編集=菊池純一。音楽=リーチェwithペンギンズ。悦ネエ=田中麗奈、ダッコ=真野きりな、ヒメ=清水真実、リー=葵若菜、イモッチ=久積絵夢、コーチ入江晶子=中嶋朋子、悦子の母=森山良子、悦子の父=白竜
70年代半ば、愛媛県松山を舞台に、高校の女子ボート部の大会に向けた奮闘を綴った青春映画。控えめに淡々と描いていながら、音楽と映像が共振し、少女たちのかけがえのない日々をとらえている。押し付けがましさが微塵もなく、全編が爽やかに輝いている。90年代に、これほど青春の眩しさを切り取った日本映画に出会えるとは。
まず、リーチェの音楽が抜群にいい。湖面をとらえるカメラの流れがうまい。けっしてうまくはないが、田中麗奈ら飾らない少女の振る舞いが美しい。そして、かつて磯村監督の「あさってDANCE」に出演した中嶋朋子は、さり気なさの中に俳優としての貫禄をみせた。
Deconstructing |
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1997年作品。アメリカ映画。96分。配給=松竹富士。監督・脚本ウディ・アレン。製作ジーン・ドゥマニアン、撮影カルロ・ディパルマ AIC。美術サントー・ロクワストー。編集スーザン・E・モース ACE。衣装スージー・ベイジンガー。ハリー・ブロック=ウディ・アレン、ドリス=キャロリン・エアロン、ジョーン=カースティ・アレイ、ケン=リチャード・ベンジャミン、ラリー=ビリー・クリスタル、ルーシー=ジュディ・デイヴィス、クッキー=ヘイゼル・グッドマン、ベス=マリエル・ヘミングウェイ、ジェーン=エイミー・アーヴィング、グレース=ジュリー・カヴナー、レスリー=ジュリア・ルイー=ドライファス、ハーヴェイ=トビー・マグワイア、ヘレン=デミ・ムーア、フェイ=エリザベス・シュー、メル=ロビン・ウィリアムス
現実と虚構の区別がつかなくなった孤独な作家の姿を描いた新作は、ウディ・アレンによる見事な自己批評。過去の自作を換骨奪胎しつつ反復しながら、自らの女性スキャンダルとエゴイズムを暴き、笑いのめす。そして、その悪戦苦闘こそが作品を生み出す原動力であることを静かに肯定している。相当にヘビーなストーリーだが、軽快なジャズのスタンダードナンバーと自虐的なギャグにくるんで、コメディにまとめるうまさには舌を巻く。ベルイマンへのオマージュも忍び込ませる遊びも憎い。
最近は、多彩な俳優を自在にキャスティングする手腕も楽しい。ロビン・ウィリアムスがピンぼけ俳優役で登場。現実の人間がピンぼけ状態になるというアイデアは、初期のアレンを思わせる。地獄をすこぶる楽しく、エロティックに描いてみせたアレンは、まだまだ枯れていない。
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