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懐かしのブロック崩しゲーム


「ミミック」の画像です 

 MIMIC 

1997年作品 。106分。アメリカ映画。製作:ディメンション・フィルムズ 。配給=松竹富士。監督ギジェルモ・デル・トーロ(Guillermo Del Toro)。脚本マシュー・ロビンス、ギジェルモ・デル・トーロ。編集バトリック・ラッサー。音楽マルコ・ベルトラミ。撮影監督ダン・ラウストセン。メインタイトル・デザイン=カイル・クーパー。スーザン・タイラー=ミラ・ソルヴィーノ、ピーター・マン=ジェレミー・ノーサム、チューイ=アレクサンダー・グッドウィン、マニー=ジャンカルロ・ジャンニーニ、レナード=チャールズ・S・ダットン、ジョシュ=ジョシュ・ブローリン、レミー=アリックス・コロムゼイ、ゲイツ博士=F・マーレー・エイブラハム

 カメラの闊達さと臭って来そうな粘っこさ。端正さと猥雑さのハーモニー。めりはりのある映像構成は、才能を感じさせる。この種の映画は、オリジナリティを生み出すことがとても難しく、今回も「エイリアン2」を連想したが、それでも観終わると独創的な質感が残った。新生物のデザインもスマートで、「レリック」のように失望させられなかった。ハリウッド映画という窮屈な制約の中で健闘したといえるだろう。女性ばかりが活躍する作品が多い中で、男女が協力して苦難を乗り越える姿が新鮮。歴史を感じさせる地下鉄空間の使い方も自然だ。

 生物学者スーザン・タイラー役のミラ・ソルヴィーノが泥まみれになり、新生物を解体して内臓を取り出し、体液を身体に塗るシーンがたまらない。「誘惑のアフロディーテ」の娼婦役との対比を楽しんだ。ただし、新生物に連れ去られた彼女が何故無事だったのかは、疑問。生みの親と知っていたとは思えない。また人間に擬態するにしても、ペースが昆虫なのだから、内臓器官まで哺乳類化することはないだろう。題名となっている「擬態」に関しては、その怖さがまったく伝わってこなかった。

 カイル・クーパーのメインタイトルが、またまた素晴しい。ぞくぞくするほどの切れ。小手先のうまさではなく、作品をコラージュ化し遺伝子操作の恐怖を鮮やかに照らし出している。これだけで1級の作品と呼べる水準だ。新しいジャンルを切り開いた感がある。


「セブン・イヤーズ・イン・チベット」の画像です 

 SEVEN YEARS 
  IN  TIBET 

1997年作品 。97分。コロンビア映画。配給=ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメント。監督ジャン=ジャック・アノー(Jean-Jacques Annaud)。脚本ベッギー・ジョンストン。製作ジャン=ジャック・アノー、ジョン・H・ウィリアムズ、イアイン・スミス。原作ハインリヒ・ハラー。撮影ロバート・フレンズ。美術アト・ホアン。編集ノエル・ボアソン。音楽ジョン・ウィリアムズ。 ハインリヒ・ハラー=ブラッド・ピット、ペーター・アウフシュナイター=デビッド・シューリス、ンガワン・ジグメ=B・D・ウォン、クンゴ・ツァロン=マコ、イングリッド・ハラー=インゲボルガ・ダプクナイテ。ダライ・ラマ=ジャムヤン・ジャムツォ・ワンジュク、ペマ・ラキ=ラクパ・ツァムチョエ、ダライ・ラマの母=ジェツン・ペマ

 登山家ハインリヒ・ハラーと若きダライ・ラマ14世の交流を描いたスケールの大きな叙事詩。ハラーが少年ダライ・ラマに世界の状況を教えるうちに、自分も変わっていく姿を追う。ハラーに関しては、山を目指すようになった少年時代も、夫婦の具体的なすれ違いも描かれていないので、人物の厚みがそがれた。前半の利己主義者ぶりがもっと際立っていれば、後半の変化もより鮮明になったはずだ。ピットは自分に合わせて役を切り詰める傾向があるが、今回ももう一皮むけてほしかった。

 その点、ジャムヤン・ジャムツォ・ワンジュク演じるダライ・ラマは、好奇心の強さに加えて不思議な風格も漂いはじめ、終盤では完全にピットを食っていた。その他、出演していたチベットの人たちがいい。観光映画になることなく、人間としてのチベット人も、バランス良く配されていた。しかし、双方の異質な文化との出会いという衝撃は、十分こちらの胸に染み込んでこない。チベットの奥の深さといってしまえばそれまでだが、溶け込み方がスムーズすぎる。中国のチベット侵略も日本の中国侵略から描かなければ、歴史の流れが見えてこないのではないか。はじめにハラーとナチスの微妙な関係を匂わせていただけに惜しい。


「メン・イン・ブラック」の画像です 

 MEN IN BLACK 

1997年作品 。97分。コロンビア映画。配給=ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメント。監督バリー・ソンネンフェルド (Barry Sonnenfeld)。製作ウォルター・F・パークス&ローリー・マクドナルド。原案・脚本=エド・ソロモン。製作総指揮スティーブン・スピルバーグ。撮影監督ドン・ピーターマン、ASC。編集ジム・ミラー。音楽ダニー・エルフマン。エイリアン・メイクアップ・エフェクト=リック・ベッカー。K=トミー・リー・ジョーンズ、J=ウィル・スミス、ローレル=リンダ・フィオレンティーノ、エドガー=ビンセント・ドノフリオ、Z=リップ・トーン

 夏に観れば、また違った感じを受けたかもしれないが、劇場公開が冬だったので、観終わってお寒い気持ちになる。ビデオクリップ付きの予告編を長期間流し続け、カップメンまで発売したのに、本編はかなり上げ底だった。もともとは、UFO目撃者を脅しに現われる謎の政府関係者がメン・イン・ブラックと呼ばれていたのだが、映画は国家権力のダーティな部分が取り払われ、単純なストーリーをお手軽なアイデアで味付けしたスナック菓子程度の軽さになった。せめて「アダムス・ファミリー」並みのアクの強さがほしかった。

 「えっ、あの人も宇宙人だったの」というお遊びが用意されていて少しだけ笑わせる。しかし多数の宇宙人が活躍しているからアメリカは活気に満ちて素晴しいんだという印象よりも、宇宙人は身勝手で厄介な存在といった印象を与えてしまうのが残念だ。だから「移民差別が潜んでいる」などという批判も出てくる。たった2人のヒーローが地球を救うというのも古くさいパターン。渋みと軽みを両立させたトミー・リー・ジョーンズ演じるKが、最後に職を女性に渡すところも、現代的に見えながらよく考えると説得力に乏しい。


 

 THE TANGO LESSON 

1997年作品 。102分。イギリス&フランス合作映画。配給=日本ヘラルド映画。監督・脚本サリー・ポッター(Sally Potter)。製作クリストファー・シェパード。撮影監督ロビー・ミューラー、編集エルベ・シュネー。音響ジャン=ポール・ミュジェル、ジェラール・アルディ。振付パブロ・ベロン。衣装デザイン=ポール・ミンター。サリー=サリー・ポッター、パブロ=パブロ・ベロン、グスタボ=グスタボ・ナベイラ、ファビアン=ファビアン・サラス

 「オルランド」で、華麗な映像をなびかせながら400年を駆け抜けたサリー・ポッター監督。「オルランド」という完成されすぎた作品を観て、はたして新しい映画が撮れるのだろうかと心配していた。しかし、予想もしなかった切り口で新作を生み出した。自らの身体を使い、虚実の間を激しく踊り続けて。作品としてのまとまりに難があることは認めるが、彼女の表現者としての切実さは誰にも否定できないだろう。

 しかし、またしてもタンゴである。この男性主導のダンスを「ブエノスアイレス」では男どおしが踊ることで異化が行なわれる。そして「タンゴレッスン」では男女の葛藤とその浄化の場となる。前半でハリウッド界の愚劣さを正面から切り捨て、後半タンゴにのめり込みながら自己の苦悩を突き放す振幅の大きさは、敬服に値する。彼女はウディアレンとは別の技法で自己をパロディ化した。


「ラブ&ポップ」の画像です 

 ラブ&ポップ 

1998年作品 。110分。日本映画。製作・配給=ラブ&ポップ製作機構。製作=南里幸。監督=庵野秀明。原作=村上龍。脚本=薩川昭夫。撮影=柴主高秀。編集=奥田浩史。音楽監督=光宗信吉。吉井裕美=三輪明日美、野田知佐=希良梨、横井奈緒=工藤浩乃、高森千恵子=仲間由紀恵、カケガワ=平田満、ヨシムラ=吹越満、ヤザキ=モロ師岡、ウエハラ=手塚とおる、コバヤシ=渡辺いっけい、キャプテンEO=浅野忠信

 主人公・吉井裕美の股間からのカメラ・アングルなど素人くさいへんてこな映像から始まり、観ているほうが恥ずかしかったが、知らぬ間に映画の中に引き込まれていた。その辺の技術は「エヴァ」で実証済み。編集の巧みさは群を抜いている。現在のアニメ製作現場と監督の自己閉鎖の2つの限界を超えようとする試みといえるが、映画界にとっても刺激的なアプローチだといえる。

 サティなどごくごくポピュラーな選曲が日常性を醸し出しながら、女子高生の淋しさと男たちの寂しさが「援助交際」という形で出会う様が淡々と描かれていく。キャプテンEOの場面は説教臭くなりがちなシーンだが、浅野忠信の切実さと理不尽さが、人々のやりきれない孤独を浮かび上がらせることに成功している。監督自身をカリカチャーしたと思われるウエハラ役の手塚とおるも、ぞくぞくするほどの熱演だった。

 エンドロールで4人の女子高生が、ふてくされながらも力強くどぶ川の渋谷川を歩き続けるシーンは秀抜。当初は4人が沖縄に旅行でやってきて明るく遊ぶシーンにする予定だったようだが、印象がまるで違ったはず。どぶ川と女子高生の方が、はるかに庵野秀明らしい。


 

  THE FULL MONTY 

 フル・モンティ 

「フル・モンティ」の画像です
1997年作品 。93分。イギリス映画。配給=20世紀フォックス。監督ピーター・カッタネオ。プロデューサー=ウベルト・パソリーニ。脚本サイモン・ボーフォイ。撮影監督ジョン・デ・ボーマンB.S.C.。音楽アン・ダドリー。ガズ=ロバート・カーライル、ジェラルド=トム・ウィルキンソン、デイブ=マーク・アディ、ジーン=レスリー・シャープ、マンディ=エミリー・ウーフ、ロンパー=スティーブ・ヒューイソン、ホース=ポール・バーバー、ガイ=ヒューゴ・スピーア、ネイサン=ウィリアム・スネープ

 イギリスらしいひねりの効いたユーモアに包まれた、なかなかに深刻な物語。失業を通じて、家庭、夫婦関係がきしみ始め、男たちは悩みながらも文字通り裸になることで絆を取り戻していく。相変わらず劇場には女性客が多く、映画のなかと同様に笑い声を響かせていた。しかし私は他人事として笑ってはいられない深刻な失業時代が、日本にも来るのではとの思いが脳裏から離れなかった。日本版「フル・モンティ」の登場は、そう遠くないかもしれない。

 「トレインスポッティング」でベグビー役を怪演したロバート・カーライルは、失業者役ガズにもはまっている。親権を失いたくないために、仲間を集め男性ストリップを実現しようとするいじらしさが胸をうつ。そしてガズの子ども・ネイサン役のウィリアム・スネープがなんともうまい。あたふたしている大人たちをしり目に物語をぐいぐいひっぱっていた。


「フェイク」の画像です 

  DONNIE BRASCO 

 フェイク 

1997年作品 。126分。アメリカ映画。配給=東宝東和。監督マイク・ニューウェル(Mike Newell)。原作ジョセフ・D・ピストーネ。脚本ポール・アタナシオ。撮影ピーター・ソーヴァ。編集ジョン・グレゴリー。音楽パトリック・ドイル。メイン・タイトル・デザイン=カイル・クーパー。ジョー・ピストーネ/ドニー・ブラスコ=ジョニー・デップ、レフティ・ルギエーロ=アル・パチーノ、ソニー・ブラック=マイケル・マドセン、ニッキー=ブルーノ・カービー、ポーリー=ジェームズ・ルッソ、マギー・ピストーネ=アン・ヘッシュ

 まずオープニングのクレジット・シークエンス・デザインが素晴しい。「セブン」でも抜群のセンスをみせたカイル・クーパーの仕事だ。彼の仕掛けのおかげで、渋めのストーリー運びにも興味を持ってついていくことができる。

 ジョニー・デップの眼がいい。眼の演技に見とれた。どんな役にも巧みに入り込みながら、観終わるとデップの個性がにじみ出ている。その点では先輩であるアル・パチーノは、落ちこぼれだが殺しの場数は踏んでいる人の良いマフィア像を丹念に練り上げた。マフィア対FBI捜査官という構図の影に、俳優どおしの静かな対決も用意されていた。

 全体を包む気品は貴重。ただ、潜入捜査中に同僚が気軽に声をかけてばれそうになったり、使ったおとり捜査用の船が新聞に載ってしまったりするのは、たとえ事実だったとしても、ストーリーの味を損ねているように思う。


「キャリアガールズ」の画像です 

 CAREER GIRLS  

1997年作品 。87分。日本映画。製作=THIN MAN。配給=フランス映画社。監督・脚本マイク・リー。撮影ディック・ポープ。編集ロビン・セールズ。音楽ザ・キュアー。美術イヴ・スチュアート。ハンナ・ミルズ=カトリン・カートリッジ、アニー=リンダ・ステッドマン、クレア=ケント・バイアーズ、リッキー=マーク・ベントン、ミスター・エヴァンズ(ニック)=アンディー・サーキス、エイドリアン・スピンクス=ジョー・タッカー、リッキーの祖母=マーゴ・スタンリー

 マイク・リー監督の新作は「秘密と嘘」ほどの厚みはないものの、女性2人の生き様がくっきりと浮かび上がる佳品。ハンナ役のカトリン・カートリッジは、苛立ちながら毒舌で周囲を煙にまいていた学生時代と落ち着きを身につけた現在を巧みに演じ分けている。「ネイキッド」のソフィーと「ビフォア・ザ・レイン」のアンを連想する。 「奇跡の海」のドド役を含め、屈折した思いを抱えながら生きる弱さと強さのバランスがとてもいい。

 物語は、ブロンテ姉妹で始まりブロンテ姉妹で終わる。男性の軽薄さと不器用さに対して、女性のしなやかさとしぶとさが印象に残る。傷(ブラント)をもじって「ブランテ姉妹」と乾杯する中華レストランでの二人の会話が、胸を刺す。「女を人間として受け入れる男を求めてさまよっている」(アニー)「たいていの男はどうしようもなく弱い。どうしても、そこを許せない。だから私は孤独」(ハンナ)。男性の私は、リッキーのように眼をそらしたくなる。


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