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昔、歌合戦では「歌は2コーラス」という原則があったらしいです。
「らしい」と書いたのは、NHKに残る最も古い回である第5回(昭和29年)ですでにそうでもなかったので。
第5回は全編ではありませんが多くの部分が残っています。
ただし、NHKの番組公開ライブラリーで誰でも聴けるわけではありません。
以前、NHKのラジオ放送でこの第5回から何曲か放送されました。
その時の曲について、歌唱時間と歌った構成(何コーラスだったか)を調べてみました。
歌唱時間はいつも通り、ストップウォッチを使った正確なものではなく、音楽再生ソフトに取り込んで再生をしながら歌の開始と終了の時刻を見て計算しています。
また、歌唱構成はあくまで歌詞が対象です。
イントロ、間奏、アウトロが短くカットされていたかどうかは把握できていません。
歌手名 | 出場回数 | 歌唱曲 | 歌唱時間 | 歌唱構成 |
---|---|---|---|---|
宮城まり子 | 初 | 毒消しゃいらんかね | 2分12秒 | 3コーラス |
岡本敦郎 | 4 | 高原列車は行く | 2分6秒 | 2コーラス |
江利チエミ | 2 | ウスクダラ | 2分30秒 | 4コーラス (フルコーラス) |
河野ヨシユキ | 初 | キツツキの赤いトランク | 2分23秒 | 2コーラス |
松田トシ | 初 | 村の娘 | 2分28秒 | 2コーラス (フルコーラス) |
藤山一郎 | 5 | ケンタッキーの我が家 | 2分28秒 | 1ハーフ |
雪村いづみ | 初 | オー・マイ・パパ | 3分27秒 | 2コーラス (フルコーラス) |
この年初出場した雪村いづみが初出場歌手の割には歌唱時間が長かったため、昔は1コーラスが長くてもちゃんと「歌は2コーラス」にこだわっていたのかも、と思ったのが、今回のネタのきっかけです。
…昔は確かに2コーラスでした!と書こうとしたら、3コーラスも1ハーフも、長くてもきっちり2コーラスもありました。
あら?
「毒消しゃいらんかね」はフルで4コーラスのところを3コーラス、「高原列車は行く」はフルで3コーラスのところを2コーラスという、よくあるテレビバージョン。
「ウスクダラ」は1コーラス目が長いですが4コーラス、「村の娘」はフルで2コーラス。
「キツツキの赤いトランク」は、フルの歌詞がどんなものか、ネットからは見つけられませんでした。
「ケンタッキーの我が家」は洋楽だから、実はフルで1ハーフなのでは?と思ったのですが2コーラスだったので、「歌は2コーラス」の原則に則っていません。
歌唱時間からすると、2コーラス歌うと3分を超えてしまうので、1ハーフになったと考えるのが自然です。
「ウスクダラ」はフルコーラス歌っても2分30秒なので、歌詞は削られなかったのかな、とも思いますが、そうすると第1回から出場している大ベテランの藤山一郎よりも若くて、(当時はまだ)キャリアも短かった雪村いづみがずば抜けて長い歌唱時間だったのはなんだったのでしょう。
最後に、「歌は2コーラス」という原則の意味ですが、おそらく「フルコーラスより1コーラス少なく」だったのではないかと思っています。
日本の歌謡曲や演歌はフルコーラスが3コーラスのものが多く、1コーラス削って2コーラスという意味。
洋楽は3コーラスでないケースも多いので(上に挙げた曲だと4コーラスの「ウスクダラ」、2コーラスの「村の娘」「ケンタッキーの我が家」「オー・マイ・パパ」)と、そこは曲ごとの判断になるのかな、と。
昭和40年代から和製ポップスが登場すると、日本の作家による曲であっても、フルコーラスが2コーラスだったり1ハーフだったりというケースも増えます。
アイドルやバンドが歌う曲は2ハーフ(2番の後ろに長めの間奏が入り、サビがある構成)が増え、2コーラス目を削って1ハーフにするか、2コーラス歌うかというバリエーションが増えてきます。
そして、平成に入ると、歌唱時間も他の出場歌手より長めでメドレーを披露したり、平成の後半になるとパフォーマンス時間が長いわけでもないのに、1ハーフどころか1コーラスだけで終わってしまう曲も出てきたり、「歌は2コーラス」の原則はどこかへいってしまったのは、歌合戦をよく見る方ならご存じのとおりです。
最終更新 2021年7月25日