小景
春
- ポンカンポンカンを
- 白いてまり満開の桜は白い手まり
- パン屑小鳥にあげたパン屑
- 遠い日の桜いつか遠い日の桜
- 歌声そう言えば今日は道すがら
- 節分鬼の面をつけて子供たちは
- 春信青信号
- 空に雲をほぐす休まない手が
- 若い葉っぱ若い葉っぱはあどけなく笑う
- 新緑湖に映る若葉は掴めない
- 春の楽しみ自分を春風に渡して
- 春の空春の空はなんてシンプルなんだろう
- 枝垂桜枝垂桜が風に嫌々をする
- 道祖神道祖神を飾る春の花の豊富さだ
- 萌えいずるもの突き刺され青空に突き刺され深く
- 小さな銀杏の葉小さな銀杏の葉が風に打ち落とされていた日
- しじみ蝶蝶かと思えば桜の花であることの驚き
- 春の夕日二両編成の八戸へ向う
- 芽ぐむ木々今日の雨は
- 木の芽の食事芽吹いたばかりの木の芽
- ばっけあぜ道に
- 春風くしゃみをする人が多い
- 花吹雪花吹雪よりも鮮やかに
- 新しい春に春一番が
- 春の畑で枝垂桜は
- 春(畑を耕して)さっき耕した畑に
- 春の日春がたたずまいをただし
- 菜の花の春菜の花が一斉に手を振る
夏
- 無人駅ですれ違う電車も
- 百日紅大きな百日紅の木が
- 夏草線路には伸び放題の夏草
- 茶畑誰もいない茶畑を
- 夏祭り夏の最中のピーヒャララ
- 夏の木陰で見た夢を夏の木陰で見た夢を
- 夏の午後に限りなく眠りたい
- この夏に夏の朝
- 空蝉もう実体は空へ
- 夏空夏の大きな白い雲のように
- 夏空に空を行く白い雲に大人たちは無関心だ
- 花火遠くで 花火が
- 胡瓜折れ曲がった 胡瓜
- カサブランカあなたが その真っ白な
- 蟻小さな蟻が 黄金虫の亡骸を
- 夏の終わりひぐらしよ
- とある朝に長い雨に傘を咲かせる
秋
- 銀杏沢山の緑の子供を
- 秋の神社で木々が手をつなぎ
- コスモスまるで言葉が分かるようだ
- 秋の温泉宿で白いお湯の中では
- 落ち葉に散ることを思いながら
- 秋の陽射しに秋の黄金色の陽射し
- 秋の空に澄んだ秋の空は
- 秋の化粧赤々と燃える焚き火が
- 秋の空に秋の高い空を