風のささやき

百日紅

大きな百日紅の木が
紅の花をつける家には
どれぐらいの物語が紡がれて

古びた門構えの家の中では
楽しい食卓も寂しい別れも
一緒にあることの憎しみも
眠れない悔しさも
すべてはその先にある人に託されて
何もなかったかのような
今日のありふれた夏の一日に

百日紅はただ静かに
己の花を咲かせる

縁側に腰を下ろした
今の家人は
今年も咲いた
百日紅に目を向けている