風のささやき

茶畑

緑の絨毯のように
丁寧に刈り込まれた茶畑で
夏の陽は金の指先を伸ばし
余すことなくその葉を撫でる

水辺に涼んだ風が
その指先に誘われるようにそよぐ

今を一緒に生きている
すべてのものたちへの賛歌に
たくさんの蝉が
高らかにいっせいに鳴いている

鬼ゆりがそっと顔を伏せて
その高貴な香りを
茶葉に託そうとする

やがて慈しむように摘み取られ
黄金色に澄んだ茶の滴は
清々しい息吹で体を満たす

ああ これほどに
大切に育まれる命を
僕らはこの手の杯に
静かにいただいているのだ
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