風のささやき

雪の降った週末に

可愛げのない顔をした
雪だるま
赤いニンジンの口

少し離れたところから
怪訝そうに僕を眺める

誰だろう
こんな深い雪の日に
わざわざ訪ねて来るなんて と

 ○

顔に触れた子供の手が
ビックリするほど冷たかった

笑って逃げる子供を
待て 待て と追いかけた

その小さな手のひらの跡
頬にそのまま
残りそうだ

赤く くっきりと
紅葉のように

 ○

いくつかの 柿の実が
まだ枝に ぶら下がっている
干し柿に 選ばれなかった実だ

とんだ晒しものだと
雪にますます
赤くなる

 ○

雪囲いが
間に合わなかったと
笑って話す 隣人

寒いですねと
言葉を交わした後には
黙々と 体を使った作業が続く

降りしきる雪の中の
白い息

 ○

横目で眺める
屋根の雪の厚み

雪下ろしに借りだされるには
もうしばらく
時間がかかりそうだと
ほっとしている

 ○

静けさの中を 歩いてみれば
雪が 隠し忘れた
大根の葉っぱ

ぐったりとして
SOSを
送っているようにも見える

 ○

陽がさしたのは一瞬で
またあざ笑うように
舞い降りる雪

まだまだ 序の口だよと
髪の毛にまとわりついて
耳に 吹聴している

 ○

威勢よく 温風 吐き出す
石油 ストーブ
ちらり ちらりと 
燃える炎が その奥に見える

頑張ってくれ 君だけが頼りだ
かじかんだ指先

 ○

子供の体が温かい
寝かしつけるふりをして
ぎゅっと胸に抱きしめて
あんか代わりに暖をとる

 ○

布団の中に 入っても寒い
肩の辺りで 冷たい獣
凍った息を 吐いている みたいだ