風のささやき

秋の神社で

木々が手をつなぎ
カラフルなアーチをかけて
この下を進めと誘っている
まずは気の早い風が
僕らよりも先に通っていった

   ○

秋の陽射しが小判となって
銀杏に鈴なりにぶら下がっている
お金持ちになったように
豊かな気分だ

   ○

日の当たる方の葉は
落ちつくしてしまった
陽射しに肯われて
きっと満足しきってしまったんだ
もういいやって

   ○

竹林だけが緑に若々しい
そこだけ季節が止まっているようだ
揺り動かしてやれと
子供と一緒に根元を揺らした

   ○

姫林檎の実の部分だけ
木に残っている
半分は腐りかけたように
誰か食べてやってはくれないか

   ○

黄朽葉色の道
オオゴミムシが逃げ隠れ
静か
神社はその先にあると
無愛想な標識の赤い矢印

   ○

手をつなぎ
急な石段を登る
子供たちの手にも力が入るのが分かる
手を離すまいと僕の手のひらが火照る

   ○

狛犬がだらしなく口を開け
居眠りをしている神社
子供たちが智恵深くなるようにと
お賽銭を投げ入れると
澄んだ空気に十円の音が響いた

   ○

子供たちが歌いながら
木の棒を持って境内に踊る
稚拙な神楽だけれど
少しは神様の
お慰みとなったと信じたい
穏やかに晴れた秋の午後