風のささやき

春の畑で

枝垂桜は
僕が眠っているうちに散ってしまった
僕が休んでいる間もおまえは
活動をやめることはないんだな
桜色の花びらが残る土を
僕は掘り返してみる

  ○

土筆の芽吹く地面を
子猫がかぎまわっている
春の匂いを体一杯に
溜めようとしているかのようだ
僕らが土を掘り返したら
もっと春の匂いがするから
今しばらくまっていておくれ

  ○

くわなどを普段手にすることのない
僕の腕が快い悲鳴を上げている
こんな疲れならもっと欲しいとさえ言っている

  ○

太陽は何故こんなにも
優しい陽射しを送ってくれるのだろう
いつまでも作業を続けていたくなる

  ○

土にまみれた手を用水路の水で洗う
長く手をつけていることが
とても出来ない
雪解けの水がまだまだ冷たい

  ○

窮屈な黒い鉢植えから
広い畑に植え替えられて
唐辛子やトマトの葉が
嬉しそうに風に揺れている
どこまで根を深く伸ばして
天を掴めるかはみんな次第だが

  ○

如雨露から土の上にこぼれる
水が光をひいている
まるで僕が神様になった気分だ
こんなにきれいな光の群れを作れるなんて