風のささやき

この夏に

夏の朝
宝石ばかりが転がる道を
君のところへと駆けてゆく

   ○

僕の中で
何かが燃えていると
感じられるような夏の午後

   ○

青々とした田畑
行き過ぎる車窓から
散歩中の白い犬と目があう

   ○

口開けた雛の腹満たすため
休むことなく働き続ける親燕
いずこの世界でも子育ては大変そうだ

   ○

七夕の短冊に何を願おう
時として思う
人生が早く去ってしまえばと書こうか

   ○

ツタの葉を鳴らす夏の風
まるで木琴の
名手のような緑の手

   ○

花火大会の人混み
乳母車の車輪がきしんでいる
子供たちも随分と重くなった悲鳴

   ○

朝の雨が
白詰草を慕っている
大きな水玉ができた

   ○

一時間に数本の電車が無人駅で止まり
追いついたあかとんぼが
向日葵の上で息をきらす