風のささやき

子供のコートを桜の枝にかける
体の芯に蝋燭でも灯っているのか
何とまあ薄着で冬の公園に遊ぶ
息を切らして走り
頬っぺたは上気して赤い

桜の枝には
たくさんの固い蕾
気がつかなかった
いつの間に準備を始めたのだろう
僕らが眠った後の
満月の月明かりの下にも刻々と

ああ そうか みんな
春の訪れを体の奥底に感じているんだ
その予感が膨らんで確信となって
そのときにいっせいに花は開くんだ

子供も桜と同じように敏感で
鈍感なまま
冬に巣食われている
大人の丸めた背中