春の楽しみ
自分を春風に渡して 僕が失われていく春との戯れは 少し寂しくて軽やかな 透明になる遊び ○ 菫がかたまって咲いている まるで遠足の子供のように 賑やかで きっと邪魔をしてはいけない ○ 春の小川を日長 見ている どれだけおしゃべりか けれど疲れない 水面に姿を映す 僕のことも少しは話題に 取り上げてくれればいいのに ○ 菜の花の中で 忙しい蝶も蜂も 僕がいることには 気がつかない 僕も黄色に染まっているから ○ 僕の知らないところで 風に吹かれて散る 桜吹雪に身を潜めるための巡礼に 直ぐにでも出かけたい ○ 硬くなった大地を 春の雨が柔らかくしたぬかるみ 子供の足跡と 誰かが滑った跡と せっかくの春の仕事 僕は横に避けて通ろう ○ ビー玉が春の陽ざしを集めている まるで自ずから光が集まり 丸くなったようで 僕の中にも集まって丸くなる 光るものがあるか ○ 一人ぼっちの星が 僕を見落としている 春の宵闇に誰にも知られない 僕は口笛を吹く