エネルギーと戦争

第三次世界大戦

2013年4月の「自由人の エネルギー勉強会」 のテーマは「エネルギーと戦争」あるいは「第三次世界大戦」にするので私にも何か話せと森永先生に言われた。今年90才になる戦前世代の森永先生が石原や 安倍などの右寄りの政治家が国民に支持 されているように見えるため、第三次大戦の危惧をもったからだという。若い世代は「自民党が、憲法改定案で基本的人権と、何 人も奴隷的拘束を受けないっていう条項を削除してるのを年寄は知っているのかな」という。ところが年寄は逆に民主党の稚拙な妄動の結果、尖閣で浮足立った 若 い世代がネトウヨに汚染されているのではな いかと心配しているのだ。


第三次世界大戦の定義

さて第三次世界大戦の定義だが、アインシュタインは、「第三次世界大戦がどのように戦われるかは分からない。だが、第四次世界大戦が戦われる方法は知って いる。それは棒きれと石でだ。」という言葉を残し、次に世界大戦が起きたら文明が滅びることを示唆している。アメリカ第34代大統領であるアイゼンハワー は「第三次世界大戦に勝つ唯 一の方法は、それ(第三次世界大戦)を防ぐことだ」という言葉を残している。

第三次世界大戦は米中戦争と定義できる。 ピーター・ナヴァロは米中戦争は「トゥキュディスの罠」によって始まる。「トゥキュディスの罠」とは アテネの勃興がスパルタに引き起こした恐怖心のことである。歴史を見ると、既成の大国(米国、スパルタ)が新興勢力(アテネ、中国)と対峙するときの戦争 発生確率は70%。


世界大戦のトリガー

1対1の関係では世界規模の大戦には発達しにくい。第一次大戦も第二次大戦も列強が相互安全保障条約を締結していたため、連鎖反応で伝播した。


日米安全保障条約(US-Japan Security Treaty)のジレンマ

旧安保条約に代わるものとして岸信介首相とアイゼンハワー大統領との間で新安保条約が署名され(1960年(昭和35年)1月19日)、同年6月23日に 発効した。新条約では集団的自衛権を前提とした双務的体裁を採用しており、日米双方が日本および極東の平和と安定に協力することを規定した。新安保条約は その期限を10年とし、以後は締結国からの1年前の予告により一方的に破棄出来ると定めた。当条約は締結後10年が経過した1970年(昭和45年)以後 も破棄されておらず、現在も効力を有している。

国連憲章の武力不行使の原則を確認し、この条約が純粋に防衛的性格のものである。自由主義を護持し、日米両国が諸分野において協力することを定める。

Article Vは共同対処宣言(義務)で、これがアメリカの対日防衛義務を定めているとされる。 次のアンダーララインのように日米の自衛活動は日本の領域が侵害されたときのみ発動され、国連が必要な処置をとったら反撃はやめなければならない。とされ ている。

Each Party recognizes that an armed attack against either Party in the territories under the administration of Japan would be dangerous to its own peace and safety and declares that it would act to meet the common danger in accordance with its constitutional provisions and processes. Any such armed attack and all measures taken as a result thereof shall be immediately reported to the Security Council of the United Nations in accordance with the provisions of Article 51 of the Charter. Such measures shall be terminated when the Security Council has taken the measures necessary to restore and maintain international peace and security

このように安全保障条約は核の傘を保証したものではない。それに主権は米国民にある。米国市民もICBMで反撃される可能性を冒してまで条約をまもること を支持するとは考えら れない。現役の当局者は条約を守るというが、引退者は正直である。引退者の一人、ヘンリー・キッシンジャーは「同盟国に対する核の傘を保証するため自殺行 為をするわけはない」と語っている。中央情報局長官を務めた元海軍大 将スタンスフィールド・ターナー(英語版)は「もしロシアが日本に核ミサイルを撃ち込んでも、アメリカがロシアに対して核攻撃をかけるはずがない」と断言 している。元国務次官補のカール・フォードは「自主的な核抑止力を持たない日本は、もし有事の際、米軍と共に行動していてもニュークリア・ブラックメール (核による脅迫)をかけられた途端、降伏または大幅な譲歩の末停戦に応じなければならない」と述べた。

日本の対応策として:

@米国の衰退にともない軍事力も頼りなくなり、米国は中国を選んで日本を捨てることにそなえ、日本はNATOに加入するか、ただし、ヨーロッパの戦争に巻 き込まれる。

A日本は米国、インド、オーストラリア、ニュージーランドと安全保障条約を締結する。しかしオーストラリアが日本の潜水艦購入をやめたように相手国が乗っ てこない。

B日本は憲法を改正し、日米安保は終了させ、自前の核兵器を持ち、核抑止力を持つ。これが安倍政権の狙いのように見える。しかしこれは簡単ではない。 NPT 条約から脱退しなければならないし、第一米国が許さないだろう。北朝鮮やイランのように世界に敵対する羽目になり、経済封鎖され、息の根を留められる。

Cありえないシナリオとして日本はロシアと同盟する。しかしこれは世界経済への足掛かりを失う自殺行為だろう。

D憲法も変えず、現状維持とし、核なし自衛に徹する。核なしで核兵器と同等の報復力はせいぜい相手国の原発を通常兵器で報復攻撃する能力の涵養だろう。そ のためには自らは脱原発し、使用済み燃料は地下隔離しなければならない。

さー!どれを選ぶか?


憲法改正論議

サダム・フセインがクエートに進 攻したとき、日本は憲法の制約を理由に参戦しなかった。しかしエネルギー確保という自衛上の目的に沿うと巨額の戦費は支払った。オサマ・ビンラデンはこれ を根 拠に日本も敵に認定して今日に至る。これがアルジェリアでモフタルのゲリラが外国企業を襲ったとき日本を例外としなかった理由だろう。今後日本の原発はゲ リラのターゲットになら ない保障はない。警備で対処するにしてもテロリストのターゲットになれば防ぎようがない。そうなったら原子力発電施設を廃炉にし、敵原発を通常兵器で攻撃 するという奥の手が有効になる。

東大の菅原琢准教授は安倍政権が集団的自衛権に関して改憲なしに法改正してもすぐ反対派は訴訟をおこすだろう。そうすると民主党が選んだ最高裁判事がいる かぎり、違 憲判決となるかもしれない。5年毎に半数が入れ替わるため、少なくとも10年政権を維持すれば思い通りになる。安倍政権がもう一期政権を維持できれば自民 党寄りの最高 裁判所判事が増えるので自民政権の意思通りになる。要は国民が次の選挙でどういう判断をするかだ。

そもそも憲法はイングランドのジョン王の横暴な課税を制約すべくシモン・ド・モンフォール議会が王にのませた契約書マグナカルタに由来する。近代憲法はトマス・ホッブスが描 いたリバイヤサン(怪物)たる統治権力を馴致(じゅんち)す るための義務規定。または「国民が公権力を縛るルール」だ。改憲論者はよくマッカーサー憲法といって嫌悪するが、これは地球上に存在するもっとも近代的な 憲法で個人を尊重し、多様で相対立する世界観・価値観の存在を認め、その公平な共存を目指したものではある。これと日米安保と原発により戦後の繁栄を築 いたこと はまちがい。原発はコストがかかることと、頼りならないことが判明し、中国が覇権を要求しだし、米国の覇権が弱まったため、自衛力だけでは無理で、集団的 安全保障の要請が高まっている。いわゆる環境が変化しているわけ。「変化を伴う継承」と いうダーウィニズムによる社会進化論から見れば、生物に備わってい る免疫力と同じく、環境が変われば環境と不適合となった9条だけは変えてその他の条項は継承するというが現実的であろう。現政権はドサクサに紛れて憲法の 本来の目的を逆転させて民を統治するという視点にたつのは許してならない。ついでに「なんでも改憲」論者は人間の本質を理解できない人々だ。彼らの望みを かなえれば次の 戦争に なる前に経済戦争に負ける。戦争は前述のように技術の戦いでもある。個人の発想が自由 にできる社会を築かねばそのような技術はでてこないことは現在の日本の製造業の現状をみれば明らかである。力がおとろえたとはいえ、復元力を米国に与え続ける米憲法と同じ価 値観に立脚する日本国憲法を維持することこそが、日本が米国の大切なことではないか?

グロチウスが「戦争と平和の法」に書いたように憲法の上位にある自然法としての個別的自衛権がある。自然法は国民が国家権力の行使に制約を課す目的の憲法 の上位にある自然法だ。集団的自衛権を認めても米国民が自分の息子・娘が日本のために血を流すのを許すと思うのはあまりにもナイーブ。アメリカの戦争に巻 き込まれないように集団的自衛権の行使は抑制されなればならないだろう。集団的自衛権はしばしば大戦の契機となってきた歴史がある。このため発動は慎重に しなければならない。何らかの憲法上の制約を設けるひつようがあるだろう。いずれにせよ、集団的自衛権は気休めに過ぎないと覚悟して日本は単独自衛権行使 の覚悟を固める必要がある。キッシンジャーは日本では国民的なコンセンサスが出来上がって日本が変わるまで15年かかるという「15年の法則」なるものを 指摘したが時間をかけても国民の合意形成が必要だろう。憲法で交戦権は国民のものと明記してるのだから、個別的自衛権行使のための自衛隊法、国家安全保障 法などの周辺法を整備するだけですむ。無論、周辺法整備のとき、ナチに独裁権を与えた全権委任法のような過ちはさけなければならない。

橋爪大三郎氏が「国家緊急権は正統防衛や緊急避難とおなじ自然権で法律より上位にありより根源的なので憲法に書き込む必要なない、時に政府が国家緊急権を 行使するときには事後に検証し、刑事責任を問われることを覚悟して行使すればよい」と言っている。憲法の上位にあるのはグロチウスがとなえた自然法でこれ には国家緊急権だけでなく自衛権がある。だからいまの自衛隊は憲法違反としても、国際的には自然法で説明できる。だが集団的自衛権は自然法なのかどうか? わかっていることは第一次と第二次大戦は集団的自衛権で芋づる式に始まったという歴史がある。ところがその後原爆が開発された。誰かが慌ててミサイルを ぶっぱなす可能性があるし、北朝鮮という少しおかしな国もある。アメリカが開発したPAC3という迎撃ミサイルの命中率は試験回数31回中成功が23回、 失敗は8回と完璧ではないし、PAC-3はそもそも基地防衛用に開発されており、国土全体を守れない。(迎撃範囲は射高15~20km、射程は20kmと 短い)とうわけで集団的自衛権は原爆から守ってくれるものではなく、藪蛇になる恐れはある。アメリカの核報復能力を期待して核抑止力がでるのか不明であ る。キチガイ相手にあまり意味はない。安倍政権はアメリカとの集団的自衛権を発動して、もし原爆食らったとき、その開戦責任を問われて刑事責任をとるのが いやなので、安保法を作ったがそれでも不安で憲法を変えて、集団的自衛権と国家緊急権も憲法に加えて自身の責任のリスクを避けるためのだろう白紙委任状が ほしいということなのだろう。私の人生経験はやはり白紙委任状は危険だという。企業では経営トップが下に諮問もせずに勝手に企業を運営できる。万一、失敗 したとしても辞表をだすだけ。ところが社員は露頭に迷うことになる。まっぴらごめん。

1937年に政府批判を理由に東大を辞職させられた矢内原によれば、戦後の「公」の動きの第一段階はGHQが1945年10月に出した「自由の指令」だ。 これにより「私」の領域における思想の自由と一般私人の政権批判の自由を回復した。それまでは1935年の天皇機関説事件の中で、美濃部達吉の天皇機関説 を排撃することで政治的主導権を握ろうとした立憲政友会・軍部・右翼諸団体が時の内閣に迫って出させた、天皇が統治権の主体であることを明示し、日本が天 皇の統治する国家であると宣言した国体明徴声明(こくたいめいちょうせいめい)により「私」の自由は制限されていたのであ る。この結果は憲法21条にひきつがれた。第2段階は1945年12月に出された「神道指令」であり、信教の自由を保障するとともに国家神道を政治から切 り離した。第3段階は1946年元旦の天皇の「人間宣言」でこの結果は憲法20,89条と第1章の象徴天皇制に引き継がれた。最後に憲法9条は植民地主義 と軍国主義の過去にとどめを刺すために作られた。そして憲法尊重擁護義務は「公共」「公職」にのみ向けられており、国民には向けれれていない。封じ込めら れた側はこの憲法を敵視し、憎悪の対象になる。憲法学者石川健治はもし憲法9条をはずせば、戦後の立憲主義は音をたたて崩れおちる可能性があると指摘す る。


自然権たる復讐権

「個別的自衛権は国際法では認められる」という伝統は16-18世紀にグロチウスにより自然に人間に備わっている自然的権利を国にも適用できると論じたこ とからきていると理解でき る。バートランド・ラッセルにほれば実はグロチウスより先にギリシアのストア派がとなえた自然説を復活させたものだと言う。自然に従えば、全ての人間は平 等であるというのがストア派の主張だった。

復讐は「忠臣蔵」やベルディの名作リゴレットはこれがテーマだ。とすると個人と国家の復讐権は裏表であったと気が付く。無論、今ではどの国も個人には 報復権はみとめず、刑法で国が処罰するしくみである。だから国内 法である刑法は復讐権を認めないが、国の復讐権は自然権であると解釈されていると理解される。それがあるから自衛権としての交戦は国際法上認められるとい うわけ。とすると核抑止力は核兵器にたいし ては核兵器で復讐する能力だ。日本は すでに原爆 を2発いただいているため、核による復讐権はある。しかしそれを米国は行使できないように日本を装解除し、憲法9条で縛った。しかしソ連が軍事大国化して 米国は怖くなり、助っ人がほしくなり、単独自衛権は自然権だから憲法9条には抵触しないといって自衛隊(はじめは警察予備隊)をつくらせた。中国がぼっ興 するとさらに怖くなった 米国は集団的自衛権を行使できるようにしてくれと日本の官僚にはたらきかけ、安倍政権は官僚に操られて法制化した。しかし、さすが憲法との矛盾で動きが取 れ ない。集団的自衛権を行使すると第二次大戦の経験のごとく、事態を悪化させ、ドミノ現象で大戦に発展する可能性があるし、折角核兵器のおかげで二国間の 戦争はなくたっているのだから、集団的自衛権は何となくアナクロな感じ。米国が今後中東に係わっているうちに泥沼にはまり日本に助っ人の役を振ってくるの は明らか。

日本の選択としては、現行憲 法はそのままにし、集団的自衛権は行使せず、単独自衛権としての復讐権行使ができる自衛隊の物理的グレードアップをするのが賢明かもしれない。目下AIは ブレークしつつある具体的には復讐権行使AIなるものを潜水・低空飛行ドローンに搭載し、とりあえず核武装はゆるされないので通常爆弾の弾頭を装填してお き、もし核攻撃をうけ たなら自動的に攻撃国の全ての原発をターゲットとして攻撃国に復讐せよとAIに指令して、常時海底に待機させ。すべてを任せる。



憲法7条を根拠とする制限ない首相の解散権

衆議院によって内閣が不信任された場合の憲法69条による解散は他国でも認められているが、憲法7条による解散は首相独裁に至る道で危険と政治学者野中尚 人は指摘する。いわゆる7条解散は吉田内閣が行い、最高裁が統治行為論を認めてから確定した歴史がある。英国は2011年にこれを禁ずる法律を制定した。


ナチに独裁権を与えた全権委任法をくりかえすな

5/2の朝日のオピニオン欄に日本の天才プログラマーでソフトウェア開発会社サルガッソー社長で東大特任研究員鈴木健さんの複雑性の制御法がでている。要 約すると

人間の脳は複雑な世界を複雑なまま理解できない。それでは社会を動かせないので「責任 者」という仮構を作り出した。これら代表とか責任という感覚は「膜」すなわち線を引いて世界を分けるという生命の本質に由来する。生命は細胞膜を作って境 界を引き、内側に資源を囲い込む。そして細胞のなかには核があり、そこに生命の設計情報が入っている。社会制度はこの生命現象の一つに過ぎない。国境は 「膜」である。多くの人が有限の土地に住めば縄張り争いが生じ、これを解決するために国境が生まれる。そして王という「核」が誕生する。
王という小自由度の権力を制御することによって複雑で大自由度の社会全体を制御できるようになった。こうして核によって膜の内側制御できるという幻想が生 まれた。ところが膜と核が結びつくと、資本や権力が横暴なものに変質してしまう。近代の経済システムは私的所有権を認め、資本が資源や労働を組織化し、企 業という膜の中にそれらを囲い込むことによって成立している。
貨幣はこの経済システムの血液だが、もっている人に溜まりやすい。職業政治家は落選すれば生活が破たんするので、影響力を維持するためにウソを言うように なる。というわけで選挙で職業政治家を選ぶという代表民主主義はいまや破綻している。職業政治家に代わってインターネットを使った伝搬委任投票システムを 使って集まった人々から特定の目的に限定した意思決定主体を構築できる。

というものだ。民主党に失望した日本人は自民党をえらんだ。ところが自民党は憲法96条を変えて国会議員の半分が賛成すれば憲法を改訂できるようにすると している。これはかってナチに独裁権を与えた全権委任法のような過ちに私には思える。船田元などはまさに大ウソつきのように見える。 このような自民党を支持するとのは第二次大戦に入る軍部を支持したような愚かな行為だ。もし国防上憲法9条の改訂な必要なら、それだけ改訂すればよい。し かし前述のようにそれさえ必要ないのだ。

独裁権を握った自民党は使用済み燃料をどこかの地方自治体におしつけるのだろう。

米国民がなぜ銃規制に反対するかというと政府を信用していない。もし政府が暴走したら、市民がそれぞれの武器を持って集まり自由軍をつくって政府を倒すと いう精神が生きているためだと。なるほど秀吉が刀狩りをしたか理解できた。日本をだめにしたのは秀吉だったということのようだ。


国連・国連軍・国連安全保障理事国

日本は国連を正しく理解していない。その本質は第二次大戦の戦勝国連合である。したがって連合国の敵だった日本とドイツが国連安全保障理事 国になる正当性がない。また貧しい発展途上国を多く抱える国連は貧困問題の解決が第一優先だ。

国連は国連軍の創設に失敗した。今後もその可能性はない。故に憲法9条の矛盾を解決するために国連は使えない。従って当面は米国従属の安保条約のみが生命 線となっている。でもこれはカルタゴの轍を踏むことになる。第二次大戦で迷惑をかけた中国や朝鮮などの周辺国との歴史的和解が大切になる。


米国からの真の独立

憲法は我々の人権を守る最後の砦として守り、自衛は独自のAI潜水・低空飛行ドローンを開発し、国内の原発は全て廃炉にすれば米国の核報復 能力にたよらずとも通常弾頭のみで核報復能力と同等以上の損害を相手国に与えうるという実力により、独立を維持することは可能となる。


戦争の規模と確率はべき分布(power-law distribution)

戦中派である私はテロは別として中国もバカではないから核兵搭載のICBMが飛び交うなんていうことは少なくとも超大国間ではありえないと考えていた。そ して米国は核兵器を持つ国とは戦争するつもりはないとも聞く。しか し戦前派の森永先生は戦争など、ちょっとしたきっかけで発生するという。もし中国の軍部が暴走をはじめれば米国は核兵器をつかうことを躊躇しないだろうと い う。なにせ国民に武器を持つ権利を認めている国だ。そういえば、たしかに戦争の規模と発生確率は地震の規模と確率と同じくべき分布になるということは良く 知られている。金持ちと貧乏人の比率もそうだし、世界規模の戦争だって確率は低いがおこらないとは言えない。戦 争がべき分布になることを最初に論文に書いた人は物理学者リチャードソン(L. F. Richardson 1948, 1960)である。東京大学の伊藤岳によれば全ての戦争について死者1万人以上の戦争のべき分布は下の図のようになる。ここで横軸は戦死者数x の対数、縦軸は累積分布関数P(X≥xmin) の対数、青線は近似線、黒の点線はxmin を示す。ここで確率密度関数p(x)=x-1-αのベキ指数α=0.69、累積分布関数P(X≥xmin)=X、 ここでxmin=10,000人。著者も原発の事故の放 射能放出規模と確率がべき分布に乗ることを証明し、α=0.268とした。


戦争のべき分布 伊藤岳


第三次世界大戦の主戦場

歴史的必然の米中間の第三次大戦はどこで発生するか?対戦は地上では戦われない。宇宙を舞台にすることになるだろう。歴史的な流れを見れば、陸→海→空→ 宇宙という順 だ。準備段階はともかく、始まってしまえば戦争は実は前の戦争で主力であった飛び道具でくりかえされることはない。日本は第二次大戦に戦艦を用意した が、じつは空母が戦力だったとおなこことだ。 イラクで威力を発揮したクルーズ・ミサイルですらもう出番はないとみている。ジョージとメレディス・フリードマンの「戦場の未来」を読んでい たおかげで戦車の勃興と没落⇒戦艦⇒空母機動部隊⇒核兵器+戦略爆撃機⇒核兵器+ICBM⇒核兵器+クルーズミサイル⇒核兵器+無人機⇒核兵器+宇宙船と 兵器⇒コマンドラインのサイバー戦争という変遷が必然だとおもう。


オレンジ計画に学ぶ

オレンジ計画(War Plan Orange)は戦間期(1920年代から1930年代)において米国で立案された、起こり得る大日本帝国(日本)との戦争へ対処するためのアメリカ海軍 の戦争計画である。計画は1919年に非公式に立案され、 1924年初頭に陸海軍合同会議(Joint Army and Navy Board)で採用されている。これをリードしたのはマハンの「海上権力史論」の影響を受けたセオドア・ルーズベルトだ。当時アメリカはフロリダをスペイ ンから取り、カルフォルニアをメキシコから奪い、フィリピン、ハワイを掠め取る勢いがあった。日露戦争の仲裁もパナマ運河の建設もいずれ太平洋をアメリカ の湖にしようという野心があったためである。そうしてついに衝突し、日本帝国はやぶれ、日本は今、アメリカの版図に囲い込まれ、歴史の必然は米中対決に向 かっている。これが第三次大戦の危惧になる流れだ。普天間も TPPもアメリカの戦略の線上にある。

ただアメリカの戦争立案者たちは当時、潜水艦と航空活動の技術進歩がマハンの学説を時代遅れにしていることを正しく評価す ることができなかった。特にアメリカの立案者たちは航行中の回避行動が取れる戦艦を航空機で沈められる可能性や、日本の空母機動部隊がアメリカ艦隊の戦力 を削るどころか真珠湾攻撃でなされたように遠路出撃して米艦隊を一挙に活動不能に陥らせるほどの打撃力を持つことについて、理解してなかった。将軍は常に 前の戦争を戦うと言われるゆえんだ。皮肉にもハワイ攻撃こそ、米国民に戦意を持たせることになった。


エマニュエル・トッドの予想


各国の識者のフロントランナーはエマニュエル・トッドだ。彼は「帝国以降 アメリカ・システムの崩壊」を書いた。米国の製造業はグローバリゼー ションによりまず日本、ついで中国に負けた。米国民の消費生活を維持するために米国の貿易収支はつねに赤字で、諸外国からの資金の流入によってマネーフ ローが 成り立っている。古代ローマが地中海を包含することにより、各地 からローマに流入する豊富な産品によりローマの農民と職人の仕事を奪って無産化してしまったとおなじことが今アメリカで発生している。こうしてパンとサー カスの時 代に入りつつある。日本でも目下進行中の現象である。しかし諸国が米国を必要としなくなり、基準通貨としてのドルの信用が 失われれば、 ドルは暴落し、米国への資金の流れは途絶し、米国に投資していた資金提供者と米国は破産する。日本にも同じことが発生するかもしれない。


ジャック・アタリの21世紀の歴史


ジャック・アタリは世界の秩序の今後は5段階を同時に、あるいは順番に辿ることになると分析した。第一段階では2030年ころまでに米国の製造業は衰退 し、対外債務は膨れ上がり、貧富の差は拡大し、年金制 度は崩壊する。こうして下層ノマドが増え、新たに超ノマドを引き付ける中心都市を出現させる余力はないどころか、世界の警察官になる余力すらなくなる。第 二段階では中国の共産党の権力に終止符が打たれる。GDPは米国と並ぶ。しかし日本と同じくノマドにはドをア閉ざしているので世界の中心都市を提供できな い。インドも常に中国よりうまくゆくことはない。そのころ、日本の経済力は世界5 位ですらないかもしれない。第三段階では超ノマドが中心都市なしに世界の市場をコントロールするようになる。こうして資本主義は衰えるどころかますます生 き生きと活力をもち一層支配的になるだろう。第四段階では国家を超えた資本主義市場超帝国は市場を作り上げて国家に勝利するが、人類の半分からなる貧困層 は下層ノマドとなり、都市に流れ込み暴動を起こす。超帝国の統治法はだれもわからない状態になる。これを超紛争という。市場に負けて民主主義の機能を手放 した国の中では非合法な海賊が跋扈するようになる。世界は多極化し、すべての地域の野望が相互にぶつかり合う。都市も武装国家になる。国家は下層ノマドや 海賊からなる暴徒を鎮圧するために兵士や警察官を確保できなくなり、移民兵士を使うようになる。ロボット戦闘員・工作員、E爆弾、使用済み核燃料を混ぜた 通常兵器など想像を絶する兵器が登する。30年以内に15ヶ国が公然と核兵器を持つ。日本は決心すれば4ヶ月で核兵器を作れる。第五段階で結局、人類は 「超帝国」や「超紛争」では持続性のある世界を構築できないことを悟る。結局、第5段階は世界の協力と調和による「超民主主義」が登場する局面が来るはず としている。


ローマクラブのヨルゲン・ランダースの「2052 今後40年のグローバル予測」


●都市化が進み、出生率が急激に低下するなかで、世界の人口は予想より早く2040年直後にピーク(81億人)となり、その後は減少する。
●経済の成熟、社会不安の高まり、気候変動によるダメージなどから、生産性の伸びも鈍化する。
●人口増加の鈍化と生産性向上の鈍化から、世界のGDPは予想より低い成長となる。それでも2050年には現状の2.2倍になる。
●資源枯渇、汚染、気候変動、生態系の損失、不公平といった問題を解決するために、GDPのより多くの部分を投資に回す必要が生じる。このため世界の消費 は、2045年をピークに減少する。
●原子力エネルギー利用の将来はない(The Death of Nuclear)
●資源と気候の問題は、2052年までは壊滅的なものにはならない。しかし 21世紀半ば頃には、歯止めの利かない気候変動に人類は大いに苦しむことになる。
●資本主義と民主主義は本来短期志向であり、ゆえに長期的な幸せを築くための合意がなかなか得られず、手遅れになる。
●以上の影響は、米国、米国を除くOECD加盟国(EU、日本、カナダ、その他半の先進国)、中国、BRISE(ブラジル、ロシア、インド、南アフリカ、 その他新興大国10カ国)、残りの地域(所得面で最下層の21億人)で大きく異なる。
●予想外の敗者は現在の経済大国、中でもアメリカ(次世代で1人当たりの消費が停滞する)。勝者は中国。BRISEはまずまずの発展を見せるが、残りの地 域は貧しさから抜け出せない。



オーストラリア国立大学のヒュー・ホワイトの予想

同じような予測をオーストラリア国立大学のヒュー・ホワイト(Hugh White)が2010/9にAustralia's future between Washington and Beijingに書 いている。ヒュー・ホワイトが2010年9月のWheeler CentreでのRafael Epsteinのインタビューに応えて、 中国人の日本嫌いは江沢民の教育やプロパガンダが一因だが、未だ記憶をとどめる 民衆レベルのものだ。いまだ日本軍の残虐行為を記憶している人々がいるため、これを忘れて水に流すのは簡単ではないだろうと指摘している。

中国にとっての選択肢は3つある。Bが望ましい。

@ハードな覇権:かってのソビエトが冷戦時代にとったようなスタンスを中国がとる。しかし実現はむずかしい。
Aソフトな覇権:かっての中華帝国のような覇権である。これはまず日本が拒絶感をもつだろう
B列強協調(concert of power):中国、アメリカ、日本、インドなどが集団指導体制を築くこと。NATOのようなもの。ASEANみたいなものは数が多すぎてまとまらない。

アメリカにとっての選択肢は3つある。Aが望ましい

@アジアからの撤退
A協調体制の確立
B中国と対決(アジア回帰)


オーストラリアには5つの選択肢 がある。
Cが望ましい

@アメリカに従い続ける
A同盟相手をアメリカ以外に変える
Bスイスやスエーデンのように武装中立
C海洋部を中心とした東南アジアの中規模国と地域同盟を結ぶD ニュージーランドのような非武装中立


Eurasia Group(イアン・ブレマー)の見方


イアン・ブレマー著、日本経済新聞出版社 (2012/6)の「Gゼロ」後の世界―主導国なき時代の勝者はだれか」によれば2012年の敗者に見られる最も重要なトレンドは、全て米国の信頼する同 盟国ということだ。日本とイスラエルと英国は同じような境遇にある。これら3国は、米国との関係がかつてほど有益ではなくなっており、現在進行中の大きな 地政学的変化の外にある。また国内問題に縛られ、世界を主導するリーダーが存在しない「Gゼロ」時代の諸問題に対処できていない。結果的に、日本は中国と の問題を抱え、英国は欧州連合(EU)との間で勝者のいない状況に陥り、イスラエルはアラブの春を傍観してなにもできない。


米ロ関係

元経済政策担当の財務次官補で、ウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者であるPaul Craig Robertsによれば歴代民主党政権はロシア封じ込めに熱心であったが、軍の実力は劣化している。

アメリカ海軍は、ロシアの超音速対艦ジルコン・ミサイルで陳腐化させられた。ジルコン・ミサイルは2017年に初登場した射程距離は400km、マッハ8 を出せる艦対艦ミサイル。

例えば、ロシアのサルマトICBMの速度と軌道の変化が、ワシントンの迎撃システムを無効にしてしまった。射程は1万1000キロ以上。弾頭は重量100 トン,飛行速度は音速の20倍。イギリスやフランスやドイツやテキサス州を破壊するには、一機のサルマトで十分だ。アメリカ合州国を破壊するのは、わずか 一ダースで済む。

ワシントンの途方もなく高価なF-35ジェット戦闘機はロシア戦闘機にかなわない。

アメリカ戦車はロシア戦車に到底かなわない。


米中関係


1989年に作成された「ペンタゴン・ペーパー2025」ではアメリカは2025年までに韓国はもとより日本からも撤退するとしている。このとき日本は@ 米国との軍事同盟を強化するか、A自前で核武装するか、B中国にひれ伏すかのいずれかであろうと予想した。

2009年に米国は自らの衰退を認め、世界でのリーダーシップは、維持するも「アジア回帰」をすすめ、中東や南アジアの金食い虫の活動はやめることにし た。そして海軍や海兵隊などの遠征機能により多くの資源を配分することにした。そして対中国は融和から対抗へと舵を切ったのである。中国は一党独裁をやめ なければ腐敗し、内部から崩壊する可能性はあると期待しているためである。

2012年アメリカ大統領の諮問機関・国家情報会議(NIC)グローバル・トレンド2030(Global Trend 2030)を公表した。これによると現在はナポレオン戦争の終った 1815年、第一次大戦が終わった1919年、第二次大戦終結の1945年、ベルリンの壁が崩壊した1989年に匹敵する覇権の移動時期に該当する。 2030までに中国経済はアメリカを抜いて 世界一となり、最早アメリカは覇権国家ではなくなる。諸大国の内の「同輩中の首席」(first among equals)になる。アメリカは最早中国を封じ込められなくなり、取るべき最善のみちは中国との協力関係を結ぶことだと提言している。そして日本はもは や復活しない。そして4つのシナ リオを想定している。
@    現在の秩序が継続
A    アメリカのアジアへの関与が減少し、アジア諸国が競合して勢力均衡が生まれる
B    中国が政治的に自由化し、平和愛好的な東アジア共同体が成立
C    中国が勢力を拡張して排他的な中華秩序が生まれる
そして日本やインドがだらしないとCの可能性大としている。

2017年トランプ政権の国家通商会議の委員長のピーター・ナヴァロは「米中もし戦わば  戦争の地 政学」 を書く。戦争発生確率は70%。ここで中国は対艦巡航ミサイルや対艦弾道ミサイルを開発している。これは日本のイージス艦船および米機動部隊を無力化する 目的を 持っている。また制空権確保のため、第五世代戦闘機を開発し、その製造機数は中国の方が多い。中国の実力が米国のそれを上回るのは時間の問題。米国は張り 子のトラの空母依存をやめ、潜水艦と機雷を重視すべし。ただしでき ていない。
第一列島線上の米軍基地である佐世保、横須賀、横田、嘉手納、読谷村のトリイステーション,オサン、テグおよび第二列島線上のグアム基地は遮蔽もなく裸の まま放置され、グーグルで丸見えのため、中国側はミサイルの照準をすでに合わせている。中国側の基地は4,000kmの地下長城、海南島の潜水艦基地は皆 地下にかくれている。
中国が北朝鮮を支え続けるのは、もし支援を止めて北朝鮮が崩壊すれば合体した朝鮮半島は米国側に着くからである。中国産の物品を購入すれば、中国の軍備を 助けるようなものだ。
アジアは世界人口の60%で、米国はこれなしには経済は成立しない。だからアジアを捨てることはありえない。またアメリカのプレゼンスがアジア諸国間の歴 史 的憎悪や怨恨を抑えている。アメリカが引けばこれが再燃する。韓国や日本はアメリカの核の傘がなくなれば核武装するだろう。これは危険。だからアメリカは 手を引けない。中国共産党の目標は中国の存続ではなく、共産党支配の存続である。中国本土を爆撃すれば中国共産党が祖国防衛の英雄になってしまう。
弱さは侵略への招待状。結局パワーバランスを計って戦争を防止するしかない。これは生物に免疫が必要なのと同じ。


フィリピンの失敗

アメリカはフィリッピンにクラーク空軍基地とスービック海軍基地を維持してきた。これは米本土にある基地を除けば最大級のものだった。しか し1991年のピナツボ火山の大噴火後、フィリピン国内の基地反対闘争のためフィリピン上院は基地提供の継続を拒否して、米軍は両基地から撤退した。こう して南シナ海における米国の抑止力が失われた。力の真空は周辺勢力がそれを埋めようとする。こうして南沙諸島と西沙諸島に中国は人工島を造った。

日本は尖閣諸島のある東シナ海で力の真空をつくってはいけないことを教える。




中国問題

防衛大学太田教授らは日本を含め、西欧の海軍はクラウゼヴィッツ流の兵力集中を基本に戦略をたてるが中国は孫子の兵法にしたがう独特の戦略をもつ。すなわ ち
@三戦:(1)輿論戦(media warfare)、(2)心理戦'(psychological warfare)、(3)法律戦(legal warfare)
A超限戦:なんでもありということ。サイバー攻撃、レアアースの輸出禁止、日本人逮捕がその例
B瓦解戦:宣伝により相手の虚偽性、欺瞞性、反歴史性を示し、民心と国際社会の支持を失わせ孤立させ、みずから瓦解させる戦略
の非軍事戦略である。中国はいま尖閣にたいして瓦解戦をしかけ、最後に日米同盟を分断しようとしている。

中国の国家海洋戦略は接近阻止・領域拒否(anti-access and area denial-A2/AD)である。近海防御のために第一列島線(沖縄列島)内側を確保しようとしている。沖縄から米軍が撤退すれば中国は尖閣列島に侵攻 するであろうことは容易に推察される。ちなみに第二列島線は小笠原列島である。尖閣列島にレーダーを設置されれば、沖縄の米軍と台湾の東側は丸見えとな り、沖縄の米軍基地は無力化される。すなわち日米安保は機能しなくなる。

中国はすでにアデン湾に海賊対応として艦隊を展開している。また海南島に核弾頭弾道ミサイル搭載原潜を配備予定。中国は現時点ではSea Denial流の海軍戦略で機雷、ミサイル、小水上艦艇、非大気依存推進潜水艦、陸上基地依存航空機、早期警戒機、対艦弾道ミサイル(anti ship ballistic missile-ASBM)や機動弾道ミサイル(maneuverable reentry vehicle-MaRV)を装備している。ASBMやMaRVは空母キラーと呼ばれ発射時の初期値で狙う日米の弾道ミサイルは無力で日米にとって厄介。 イージス艦もターゲットにされる。またフリゲート艦に配備された垂直発射の対空ミサイルは日米がもつ中距離対空ミサイル(standard missile-2:SM-2)と同程度の能力を持ち、駆逐艦が搭載しているラムジェットやターボファンエンジン搭載の対艦攻撃用巡航ミサイルもアウトレ ンジ攻撃が可能で日本にとっての脅威となっている。これは短波帯を使う超水平線レーダー(over-the-horison Targeting-OTH-T-)の高性能化が貢献しているためである。また対艦攻撃力をもつ航空戦力を持っている。このようなミサイルセントリック戦 略に日本は全く立ち遅れている。

中国は長期的にはジュリアン・コーベット卿が提唱したコルベット型相対的制海(command of the sea)を経由してアルフレッド・マハン提唱の空母を持つマハン型の絶対的制海(sea control)に向かおうとするだろう。今後10年間に数隻の空母を就航させる計画である。無論最新鋭の航空機も配備予定だ。ただ幸いなことに中国はい まだ海外に自前の軍港を持たない。

中西輝政京大名誉教授は中国は国連憲章第53,107条敵国条項により日米安保をPRAという手法無力化して尖閣諸 島を攻略する意図を持っていると いう見方を紹介する。-Will No.98 2013/2/1

2012/9/27に楊外相は国連総会で

1.日本による尖閣国有化は、日本が再び中国の主権を侵害せんとする侵略行為である。
2.日本のこのような行動は、第二次世界大戦後に生まれた国際秩序を破壊する行為である
3.日本の行為は、国連憲章の原則と精神に違反する挑戦である

と演説した。そして2012/11/6ラオス・ビエンチャンで開催されたASEAN会議で50ヶ国の代表の前で尖閣問題に関する中国の立場は国連で明確に した通りだが、かさねて

●「日本は中国への侵略を行っている」
●「日本は反ファシズム戦争の結果を否定してはならない」
●「日本の行動は、戦後の国際秩序と原則への重大な挑戦だ」

と指摘した。敵国条項の対象国は日本とドイツである。

中国の戦略を推定すると中国が尖閣に漁民を装った特殊部隊を上陸させる。取締りのために日本が海保の巡視船を出すが、衝突が起こり、 中国海軍の軍艦が沖合に姿を現す。対応して海上自衛隊が動く。そして軍事衝突一歩手前の事態になる。日本政府が海上警備行動を発令した瞬間、中国当局は次 の声明を発表する。「中国は、国連憲章の定めを破り、再び侵略行動を開始した日本を制裁するため、国連憲章の「敵国条項」に則って軍事行動に入る」アメリ カ世論は敵国条項をだされると介入を拒否する可能性大。ここで日本人の安保への信頼は一挙に崩れる。つまり中国は日米に楔を打ち込むことができる。 そして王手。尖閣は中国のものとなる。

実は1995年に日本とドイツは共同でこの条項を憲章から削除することを提案し、決議まで勝ち取ったが、批准書は定数集ま らなく、そのままになっている。その後、日本は何百億円もばらまいてドイツと共に2005年に常任理事国入りを目指したが、中国の反対でとん挫した。全く 戦略がまちがっていたこ とが今分かった。これは外交の優先順位判断の失敗だ。

では中国はこの敵国条項を盾に戦争を始めるかというと、もしそうすれば中国側兵士にも犠牲が出る。そうすると中国人民が日系企業を追い出しにかかるだろ う。そ のとき中国経済はおおきな影響をうける。だから損得考えれば賢い指導層はそのような決断はしないだろうと考えるのだ正常だろう。アジア研究所所長の 小林教授も同じ見方だ。ただ不安要因は中国においてはシビリアンコントロールができていないふしがある。かっての日本軍のように軍部独走の気配がある。中 国側のステルス戦闘機がスクランブルを掛ける頻度も増えているし、射撃用ロックオンレーダー照射をしたーしない論争も生じている。兵器は動かさなかったの で冷静に対応できたが、関東軍の盧溝橋事件の逆 の事態も連想される。一方自衛隊機が領海侵 犯した航空機に警告の曳光弾を発射した時、間違って当たるという不測の事態も起こりうる。これをきっかけに人々の思惑を超えて事態 が進展することもある。こうして本格戦争にはいる可能性は否定でき ない。なにせ「べき乗則」(ブラック・スワン)が支配する世界だ。だからオバマは日本に警告弾発射は控えるよう異例の要請をしている。日本も米国も中国と 消耗戦はしたくないから危ない。表向きの勇ましい言葉合戦はさておいて、むっつり助平でしっかり見張っていないと尖閣はあっという間に先制攻撃されてとら れてしまうかもしれない。

ただ中国のような一党独裁国が長続きすることはなく、貧富の差の拡大、疑似科挙制度で登用した役人の腐敗、国有企業の非効率、地方財政の闇、少数民族間の 問題、一人っ子政策のための少子高齢化で20年後には人口は減少に向かい、社会保障の未整備で 不安定になるか、負担増で経済は収縮に向かい米国と逆転しないかもしれない。そうすると共産党政権の正当 性 への疑問も生ずる。5年後の指導層交代までに共産政権は崩壊するかもしれないし、成長の鈍化が生じ、人材の活用に失敗すれば中国が技術開発でうまくやるか どう かもわからない。中国軍は朱子学ベースの科挙制度によって成立していた旧中華的官僚システムと同じく腐敗しており、自 壊せずとも有効に機能しないという期待もあるが逆に暴 発の危険もある。この場合、一般大衆は反日教育で洗脳されているため、彼らに支持された軍部が尖閣を取りにくる恐れもある。仮に10年後に中国が内部崩壊 せず、米国も弱体化したとき、中国企業 が技術的にも完全独立すれば、敵国条項適用の決断をする可能性も否定できない。だから中国に進出した企業はかっての満州進出日本人と同じ運命になることは 理 論的にありうることを肝に命じておいたほうがいい。

中国軍は日本より巡航(クルーズ)ミサイルを多く保有しており、日本は専守防衛といって攻撃兵器は米軍に依存し持っていない。こうして単独では劣勢であ る。だから専守防衛の原則を維 持しながら自 衛 のための通常兵器による報復攻撃兵器を保有して抑止力を持つ必要がある。自衛は自然法として国際的に認められているため、憲法改訂も必要ない。ましてや集 団的自衛権の法整備も必要ない。自衛のための報復能力涵養のためなら、クルーズミサイルもICBMの保有も問題ないだろう。先制攻撃に使わないための法整 備をするだけで良い。ただこの考えは国民に敵の第一撃を受ける覚悟が必要となる。こうして抑止力を準備をして見守り、共産党独裁の中国国家が自滅するのを 待つ戦略をとる。それまでは米国 との安保協定を利用するがその傭兵コストは増える方向なので、自衛のためのロボット兵器を開発してローコストで抑止力を持つ必要があるかもしれない。

以上、外交の視点、軍事の視点から論じたが、所詮、経済力がなければ国境は強いほうから弱い方に移動するのが歴史的事実だ。すでにスマートフォーンや撮影 用ドローンなどのエレクトロニックスの新製品は中国のシリコンバレーといわれる深せんにリードされている。日本政府は日本企業 が中国に工場を持つと不利になる制度を作り、別の国に移転するか、製造工程を自動化して日本に戻ると補助する政策を打ち出すべきだろう。日本企業が中国か ら調達する製品に関税をかける手はあるが、これはグローバリゼーションの流れに棹さし、そもそも日本の成功そのものの仕組みにツバすることだ。いずれにせ よ心ある企業はすで に中国から撤退の方向になるようだ。ただニッサン自動車は膨大な投資を行っており、投下資本はゼロ評価せざるを得ないことになったいるという。トヨタは用 心して投 資はしていないという。


中国のソーラーパネル製造基地化の問題点

世界的な再生可能エネルギーの採用熱と中国のFIT制度のおかげでソーラーパネルの価格が下がり、日本を含む先進国のパネル工場は閉鎖され、中国は世界の パネル生産基地となった。日 本にとっての問題は再生エネルギーを増やせば、それだけ中国の貿易黒字がふえ、彼らの軍事予算が増えることだ。抑止力は真空を嫌うから、だれが政権の座に 座 ろうと日本は対応せざるを得ない。多分、日本は軍事予算でいずれ破綻するのではないかと危惧する。


日ロと日韓国境問題


ロシアはヨーロッパ向けのガス輸出が中東産LNGの出現で減少し、日本への輸出に活路をえたいとおもっている。中東への足がかりのシリアは今まさにアラブ の反乱に飲み込まれつつある。今がチャンス、ロシア産の石炭、天然ガスなどを積極的に購入し、共に北極海航路を開発して中国の脅威に備えるべきであろう。 韓国との竹島は漁業権の実利と韓国人の心の癒しとバランスをとって、同盟を強化し、北朝鮮の脅威に備え、日本が衰退して軍備費に耐えない国になるまえ に中 国包囲網を構築しないと尖閣という戦略的要衝を失うだろう。


多極化と超国家組織


シェールガスの富で少し先に伸びるかもしれないが、大方の識者の予想の通り、いずれ米国は衰退する。ただ多様性と自立する市民から構成される米国 は復元力もあり、米国の軍事的覇権が終わっても 米国はアントニオ・ネグリ、マイケル・ハートの「帝国 グローバル化の世界秩序とマルチチュードの可能性」にえがかれた超国家<帝国>の国王の地位にはと ど まるだろう。そしてその下に貴族層として多国籍企業、NATOのような多国籍軍事組織、G20、国際金融エリート、グローバル企業が国境を越えて同盟を組 んで超国家組織を作り出すだろうと予想される。最下層にはイギリス、ドイツ、日本などの国民国家、衰退した隷属国家が中国、ロシア、インド、ブラジルの台 頭勢力が協力体制を組み、法王、イマーム、メディアなども、貴族層と交渉する。ハーバード大のジョセフ・ナイ教授も同様の見方をしている。



超国家の階層構造

中世以降、土地、水、天然資源などの自然資源、知識、情報、言語、情動など社会資源などの公共財を私有化することにより経済が発達した。こ れが封建時代から資本主義時代への流れ。しかし弊害がでた。そこで共有物を公的に所有することを試みたが失敗した。これが共産主義とか社会主義の流れ。マ ルチチュードとは<帝国>を構成する新しい階級と定義さ れる。労働者や人民、大 衆とは区別される。彼らは虐げられる一方で自由に国境を越えて移動する、移民労働者や不安定な身分のまま小さな企業を渡り歩く半専門職的な知識労働者であ る。マ ルチチュードは最下層に含まれネットワークで連帯する自律分散の個人で構成される。<帝国>の貴族達が恐れるのはマルチチュードの抵抗である。なぜならマ ルチチュードは常に法律によってではな く、暗黙のうちに公共財へのアクセスの 自由を要求し維持しているからである。知識、情報などへのアクセスはインターネットの普及によりある程度みたされつつある。公共財へのアクセスを阻害する ものは家族、企業、国民国家である。超国家あるいは<帝国>が機能すれば、世界は一つになり、世界大戦 というものは減るが、公共財へのアクセスの 自由を要求するテロなどは永久的に継続するだろう。


列強協調、超国家組織化、地域同盟または地域的覇権国家

ヒュー・ホワイトは日本を強国と認定して列強協調できるとみてくれているが、日本も少子高齢化で今世紀半ばには一億を切り、21世紀末には 5,000万になる人口で 強国と認定されるから、はなはだ心もとない。結局オーストラリアにとっての地域同盟と同じく、朝鮮半島との地域同盟くらいしか残されていないのかもしれな いと 青山学院の杉田弘也は指摘する。ー世界4 April No.815 2011

もし列強協調または超国家組織化または地域同盟が失敗すると近代以前にもどって地域的覇権国家が台頭する。たとえばあの中華帝国だ。日 本の政治家・官僚には列強協調または超国家造りに積極的に関与してゆく能力はないので米国にクリンチしか能がない。だからだれが政権をとっても日米安保護 持とTPP締結と集団的自衛権行使しかでてこない。

2025年以降にもし米国が覇権を失うとしたら日米安保は案山子になる運命だろう。米国が覇権を失わなくとも、米国がエネルギー自立すれば中東のアラビア 湾の覇権維持に熱意を失う。そのとき、日本は集団的自衛権行使だけで米国の庇護にすがるわけにはゆかない。中華帝国の辺境部族になりさがることを避けるた めには自前の 核なし核抑止力をもつことだ。これについては後で詳しく論ずる


敵としてのマルチチュード


ゲリラ・テロリストによって引き起こされる小規模の争いはべき分布が教える通り、死者は少ないが発生頻度は高い。もっとも有名なのがイスラ ム原理主義運動が震源地となるものであろう。

米国がベトナムで負け、イランでホメイニ革命が発生し、米国はこの国の利権を失った。パパ・ブッシュがクエートに進攻したイラクを押し戻した まではまだよかったが、2001年のアルカイダによる9/11アタック、アルカイダをか くまうアフガニスランのタリバーン制 圧、イラクのサダムフセインを捕獲し裁判で葬った後、2010年から「アラブの春」というカオスが出現した。チュニジア のジャスミン革命 後、エジプトに波及。核開発を放棄したリビアの暴君カダフィが倒れ、バーレンで もシーア派の暴動が発生し、イェメン、シリアに波及した。リビアの米大使が暗殺されても米国は反撃していない。無論国家財政の逼迫も一因だろうが、それだ けでない米国の戦略がかくされているとみるのが妥当だろう。すなわち米国はゲリラ・テロリストをいわゆる超国家<帝国>の抵抗勢力、マルチチュードと認 識している節がある。このような司令塔を持たない自律分散勢力には中央集権的正規軍は本質的に対応できない。だから米国はアルカイダ殲滅のためにパキスタ ンでパキスタン政府の許可なしに無人攻撃機(Drone)を使って400人の殺害をしているのである。残念ながら関係の無い市民40名も命をおとしている ので国連は問題にしている。といっても米国は北アフリカに介入するつもりはないから、これからますますアフリカ、中東地域は危険地帯になるだろう。

ドイツは北アフリカで集光型太陽熱発電(CSP)を展開するプランをもっ ているが困難が予想される。アルジェリアのガス生産施設を運営するBPや長年ヨーロッパのコントラクタと共同してア ルジェリアやリビアのガスプラント建設を手掛けた日揮はアルジェリアの内陸600kmの砂漠地帯にあるイナメナスで2013年初頭、アルカイダ系のベル・ モフタルのテロ攻撃の対象になった。ベルモフタールはガルダイヤ生れでアルジェリアの独立戦争の英雄の子。アフガニスタンで腕を磨き、北アフリカで人質誘 拐をして資金稼ぎし、解体された旧リビア軍の武器で武装している。その兵士はアルジェリア、チュニジア、リビア出身で現体制に失望している若者だ。 オラ ンドもマリ介入でこれから苦労するはず。リビアのガス生産の操業が止まるかどうか?

米国が9/11事件の報復としてアフガニスタンに侵攻、オサマビンラデンを取り逃がしてもあきらめず、10年かけて殺害したように、仇討ちをしなければテ ロ 抑止力が生じない。仇討ちは忠臣蔵のように名誉回復の問題ではなく、抑止力のための行動ということ。米国はベトナムでもイランでも最後は逃げ出さざるを得 なかった が、ニューヨークの仇はとった。これがテロ抑制のたいせつな行動様式だ。さて日本では行政権は内閣に属する(憲法65条)とあり、かつ内閣総理大臣は自衛 隊の最高指揮官である(自衛隊法7条)。日揮とBPの犠牲者38名はアルジェリアのゲリラが日本と英国をターゲットとした戦争であったわけ。安倍首相はし たがってキャメロン首相のようにアルジェリア政府に英国ができることがないか聞けたはずである。だがそれをしなかった。現に習志野に特殊部隊を訓練して もって いたわけ。憲法の改訂も自衛隊法の改訂も必要なく、もしアルジェリアの要請があれば首相が出動命令もだせたはずである。でもそうしなかった。そして憲法改 正などととぼけたことをいっている。法 体系は完備されていて、改正の必要はない。決心しさえすればよい。こういうなにもしない政府ではこれからゲリラがますます活発化する中東で資源開発はでき な い。幸運にもベルモフタールはフランスの支援を受けたチャド軍に殺害されたとされているが。オランド首相はここらへんの勘所を押さえている。

石油資源開発(JAPEX)がイラクでガラフ油田の利権を落札したという。しかし、かれらは米国の覇権の無くなった地で日本政府の軍事的保護もなしにどう やって仕事をするつもりなのか。千代田化工はむかし、イラクで沢山の生産施設を建設した。しかし現場は結局間接的に米国の覇権に守られていたと今つくづく 思う。米軍がビンボーになって中東から出て 行くわ けだから。日本企業はこれからやばい。用心棒を雇えばコスト高になる。原油もガスも今後突然とまることがあるし、開発は難しくなる。これからは豪州とパプ アニューギニアしかなくなるのかと心細い。そうすると事故のリスクを冒して原子力に頼らざるを得ないということになるのかどうか?原子力は事故となれば死 を覚悟した突入が必用なのだ。行くも帰るも地獄。今回の安倍首相のチョンボは中東だけでなく、中国の現指導部が崩壊した時、統制を失った中国軍を反日教育 で洗脳された中国人民が支持し、尖閣をとりにくることを容認したことになるのだ。

三井系が投資したイラン日本合弁(IJPC)の化学プラント建設は千代田化工が担当していたが、イランのホメイニ革命で、中断し、サウジの隣国イ ラクを巻き込むブッシュ親子の戦争後はイラクの仕事を失った。工事が中断したIJPCは日本資本の撤退に伴い1990年に入り、社名をBandar Imam Petrochemical Company に変更、韓国企業を使って設備の再建を行った。更に、これに隣接してPetrochemical Economic Zone をつくり、順次プラントを建設した。三菱重工が千代田の協力で天然ガス液化プラントを建設しようとしたPars地区にもPars Economic Zoneをつくり、多くのプラントを建設したが日本企業は蚊帳の外である。2004年には、NPCはイラン西部地方の経済発展を図るという政府の方針の下 で、両Special Economic Zone から総延長2,285kmのエチレンパイプラインを西部国境沿いに建設し、年間280万トンのエチレンを北部に輸送、沿線に石化プラントを建設している。

 三菱系が投資したサウジのアルジュベール地区の石油化学プラント建設完了後は、韓国のコントラクタに価格で太刀打ちできなくなってこれも失っ た。ナイジェリアでも石油精製、石化プラントを建設したが、部族対立と政権の腐敗でその後の縁は切れた。千代田化工はその後、カタールで 世界最大のLNGプラントを建設し、イタリアのコントラクタ とアルジェリアの地中海岸のアルジューでLNGプラントをかろうじて完成させた。今後、中東・アフリ カのプラント建設はアメリカのシェールガス革命で減るかもしれない。またエネルギー生産プラントが政変で停まる可能性がある。アラブの春の背後に はインドネシアのアチェ 騒動のように貧富の差、社会的不公平が隠されている。このよ うに北アフリカや中東のゲリラは同じ先進国の資源の収奪という共通の母をもつ、彼ら貧しさに沈む人々にも富とチャンスが平等に波及するようにしない限り、 今の体制にはいずれ限界がくることになる。

サウジ、カタール、バーレンなどの王政が倒れることだってありうる。日本が中国 に対抗するために米国の庇護をえようと集団的自衛権を行使することは当然として、当然これらイスラムの覚醒した人々の標的 になることを覚悟しなければならない。原発は特にテロリストの攻撃に脆弱性をもち、これが破壊されると福島級の災害が及ぶ。正規軍はゲリラには抵抗力を持 たないので原発をもつことはテ ロに弱み をみせることにもなるのだ。



戦争回避策に利用された人為的温暖化説


人類の発展は化石燃料の利用によるところが大である。人類発祥以来人類は薪、炭依存であったが、石炭の利用で産業革命がおこり大きく発展した。これは決し て過去のことではなく、ドイツや米国ではいまでも石炭は発電用基幹燃料である。

石炭の後は米国のペンシルバニアで始まった石油・天然ガス時代と続く。しかしその資源は有限である。これは資源量の半分を消費したら供給量が減り、価格が 高騰してその取り合いのために戦争で殺しあうことになる。ローマクラブがその流れを予想した。破局を恐れて、仲良く資源を分かち合うためにヨーロッパの政 治家達やマスコミが化石燃料消費により排出される二酸化炭素で地球温暖化のおそれがあるからできるだけその消費をおさえようという政治運動をおこし、こ れが人為的温暖化説といわれるもので戦勝国連合の国連がこれを支持している。たまたま自然現象による温暖化進行とフェーズが一致したため、一般大衆には 説得力ある説となった。しかし1998年以降10年以上気温上昇はちおまりむしろ寒冷化している。グリーンランド海起因の海洋循環の振動現象と混同した可 能性がある。日本としてはこれに加担することはない。

原子力もチェルノブイリ、福島事故で頼れないことが判明し、再生可能エネルギーのコストが下がるまでのつなぎとして、再度化石燃料回帰が生じている。では 温暖化はどうするという心配には米国でも石炭が主流であるから天然ガスに切り替えることで防止できるという建前になっている。一人困るのが原子力と天然ガ スが主力エネルギー源の日本だけである。純粋科学的には人為的温暖化説は間違っているのだが、自然現象としての気候変動は1998年以降寒冷化しているの に、この仮説がまちがいだと日本の科 学者は証明 できない、というかむしろこれに悪乗りして生計を立ててる始末。いずれにせよ京都プロトコルは国毎に節約パーセントを申告させるやり方で経済的にフェアで はない。 各国のエネルギーミックス比を同一にしようというのがフェアなやり方だと主張する必要がある。例えば石炭の最大は50%、天然ガスは最大70%、再生可能 エネルギーは最少10%と合意するなどである。気象変動は自然現象のため、二酸化炭素排出制限しても関係なく進行する。適応戦略こそ、しなけ ればならないことなのだ。

化石燃料を世界各国で使えば資源争奪戦争になるのではと心配になるが、これもシェールガス資源が世界各地にあるので争奪戦にならないであろうとされてい る。石油やガス の資源とされたものは背斜構造の貯留岩にトラップされたものだけで、そのもととなる、根源岩には貯留岩の10倍以上のガスや石油が含まれているのだが、間 隙がメタン分子径の10倍程度で、井戸を掘ってもファンデルワールス力で固定され流れ出してこない。ところがこの根源岩を高圧の水で破砕して砂を噛ませ隙 間を作れば膨大な量のガスが得られることがわかった。こ れがシェールガスとかシェールオイルと言われるものだ。米国は新たなシェール・ガ ス・オイル開発の成功でエネルギーに関しては、中東依存から脱却するかもしれない。そうすれば少なくともエネルギー消費型の産業の寿命が延び、アメリカの 世紀 は少し伸びるかもしれない。しかもシェールガス・ オイルは中国やヨーロッパにもある。まだ予測は難しい。


米国のシェールガス資源 IEA world energy outlook


中 国のシェールガス資源 IEA world energy outlook

2014年後半から2015年にかけて原油価格がバーレル100ドルから40ドル近くまで暴落した。シェールオイル増産と中国経済の成長が止まったことが 原因とされる。


エネルギー生産と輸送シーレーン防衛


日本へ石油と天然ガスを供給している地帯は中東、オーストラリア、ソ連である。

米国のアラスカはすでに枯渇した。米本土のシェールガスを日本に輸出するか ら不確実だし、そもそも現時点では過剰生産で原価を割っているため、液化して日本に輸出することはコスト的にいっても無理があろう。結局中東のカタールの 巨大LNGとオーストラリアのLNGが当面の日本の生命線になっている。

日本にとってはカタールが不安定化したらLNGが入ってこなくなる。オーストラリア、インドネシア、マレーシア、樺太だけでは不足する。これから開発され るスラウェシ、パプアニューギニアではLNGプラントが建設中だが、規模からいってカター ルの代替にはなりえない。ロシアのシベリアの石炭と天然ガスやモンゴルの石炭を確保しておかないと価格冒頭は避けられない。原子力に頼るとしても無理をし て30%程度しか 賄えない。

マラッカ海峡が通過不能になれば日本への原油もLNGもロンボック海峡を使わざるをえないが、中国は中東の石油やLNGをインド洋経由でバングラデシュ、 パキスタンの港に荷揚げし、かっての援蒋ルートを使って資源を運び込めるように、バングラデシュ、パキスタンで港の経営権を買い取ったり、建設を支援して いるという。



日本へのLNG輸送ルート


カタールの世界最大のLNGプラント              大きな地図で見る



エネルギーセキュリティー対策としての再生可能エネルギー


フィードインタリフ制のおかげで2012年には住宅用太陽光発電の導入量はほぼ1ギガワットとなり、原発1基分となった。これからも伸びると予想される。 しかし風力、地熱、バイオは広域系統運用機関の未整備、農地法、公園法の制約が多く、普及はいまいちである。電力自由化と規制緩和が必要となる。

原子力が事故で全面的に止まり、化石燃料が地域紛争で入らなくなるリスクを考え、日本は独自に膨大なポテンシャルのあ る地熱発電、海上風力、海流発電などの再生可能エネルギーを開発し、不安定化した他国に頼らないエネルギーを確保する必要がある。地熱発電は地下水があっ て、温泉がわくような自然現象にたよることなく、積極的に高温岩体に水を注入して、熱回収する方式を開発しなければならない。地下1,000− 4,000m にある乾燥した高温岩体に穴を2本堀り、その間を高圧水で破砕し連結する。そして一方から水を注入するともう一方から温水がでてくる。この熱でバイナリー 発電する。そして排水は川に捨 てず、再注入するため公害は一切発生しない。そして冷水塔をヒートシンクにせず、空冷式にすれば、湯気もでず、ビジュアル公害も出ないから国立公園内に建 設 しても何ら問題ない。規制緩和しないとこの構想は不可能である。



ドイツVOITH社の海流発電構想

海上風力、海流発電に関して詳しく説明しよう。海流発電機は小笠原列島にそって設置する。そして島の周辺の海域での風車発電も組み合わせる。小笠原諸島か ら直流送電で送電することも考えられるが何しろ長距離である。そこで電力をアンモニア燃料に変換して船で運ぶことも考えられる。原子力はいくら規制委員会 が頑張っても事故をゼロにできない。ならば人の住まない小笠原諸島の無人島に原子炉をおき、発電+水電解ないし、熱化学反応で水素を製造し、これをアンモ ニア燃料に変換することだって可能である。放射性廃棄物も無人島に埋めてしまう。要は工夫次第。


日本のとるべき外交戦略


中国共産党指導部は過去に国境に関しては同時に二方面作戦はとっていない。中国が東南アジアへの友好的アプローチから方向転換し、南沙諸島や尖閣に乗り出 したのはロシアとの国境策定が安定化したためである。したがって日本はアメリカは無論、ロシアやインドと何らかの提携するのは筋だろう。地政学的に中国を 挟み撃ちする位置にあるか らだ。それに日本は中東の石油や天然ガス(LNG)に依存しているわけで、すでにインド洋にはソマリア海賊対応で自衛艦が常駐している。もし南沙諸島が中 国の物となれば、第二のホルムス海峡化する。ただ中国も同じホルム海峡というアキレス腱を持っている。なぜなら中国は多くの原油を中東に依存しているため だ。そこで日本はロシア共同で北極海航路を開発するということが考えられるし、イランとの関係を回復しなければならない。

米国はイランとイスラエルの敵対関係を緩和するためと中東産油国の現体制を守るためにアラビア湾に空母を置いているが、米国がエネルギー で自給自足できるようになれば、すでにアジア回帰の方針をだしている米国はアラビア湾とインド洋のシーレーン確保は受益者が自分でせよと突き放すだろう。 そのときに日本にとって目下増強中のインド艦隊は頼りになるはず。オーストラリアや東南アジア諸国や韓国との連携も大切になる。冷戦期の対ソ連封じ込めの ためのNATOのような、東南アジア地域同盟とでもいえるものを米 国も 含めて構築しておかねばならない。

日米安保は現時点では機能しているが、既述のように2025年もそうだとは期待できない。日本は自力でシーレーン防衛できる だけのイージス艦とクルーズ・ミサイルを中心とした空海軍力と宇宙を含めた国土防衛のための独自の核抑止力を持つことを真剣に検討せざるをえなくなりそ う。 米国は日本が米国の庇護をもとめての集団的自衛権行使より、日本が自分は自分で守るという防衛体制の整備のほうがよほど好ましいと考えている節 がある。

地政学はしかし大陸国より海洋国が結局世界のリーダーになりうることを証明している。その理由は自由、民主主義が行動原理になっているためと考えられ る。中国は司法は遅れていて、とても文明国ではない。そもそも中国もロシアも内陸国で世界帝国を築くには内向き過ぎて米国の代替は務まらない。


各国の米軍駐留費負担割合

トランプは安全保障は米国に丸投げだと嘲笑したと朝日新聞2019/07/20ころ、各国の米軍駐留費負担割合(%)をせいりしてくれた。たしかに日本が最大だが、日本の国防費は5兆円とすれば米軍駐留費は0.4兆円だ。


米軍駐留費負担割合(%)
負担額(億$)
日本
74.5
44.11
ドイツ
32.6
15.64
韓国
40.0
8.43
イタリア
41.0
3.67
英国
27.1
2.37
カタール
61.2
0.81
サウジアラビア
64.8
0.53
2004年DOD報告


2017年の世界の軍事費トップ10



軍事費(億ドル)

GDP比(%

 

1

米国

6100

3.1

 

2

中国*

2280

1.9

 

3

サウジアラビア*

694

10.3

 

4

ロシア

663

4.3

 

5

インド

639

2.5

 

6

フランス

578

2.3

 

7

英国

472

1.8

 

8

日本

454

0.9

 

9

ドイツ

443

1.2

 

10

韓国

392

2.6

 

ストックホルム国際平和研究所の公表資料を基に編集部作成




巡視船

横浜海上保安部所属の巡視船「しきしま」(PLH31)船齢25年は海上保安庁で最も大きい巡視船でフランスからのプルトニウム海上輸送(総航程約2万海 里:約3万7千km)の護衛をした

尖閣列島周辺のように頻発する中国公船の領海侵犯対策で3隻の建造をするという。 これは必須な投資だろう。もし中国人の不法占拠があれば直ちに身柄確保に向かわねばならない。かれら警察機能が阻害される事態になれば、海軍力の出番とな る。



護衛艦

一番おおい軍艦だ。最も新しい護衛艦は5000トン型護衛艦である。ガスタービン推進と電力推進のハイブリッド方式を採用している。また、RWS(Remote Weapon Station)を搭載で兵士は身をされさないで射撃できる。

さらに対潜探知能力に優れた海洋護衛艦である。



空母艦隊

空母はかっての戦艦と同じくすでに時代遅れ。空母は艦艇としての戦闘力が高い訳ではなく、目標に近づけて使う艦ではない。わざわざ危険に晒す必 要はなく、搭載している航空機の作戦半径に入りさえすれば良いのだ。

ただ一般市民むけの覇権誇示には有効のため、2017年5月北朝鮮ICBM対応として米国は原子力空母艦 隊を2セット日本海に送り込んだ。米国は現在10隻の空母を持っているが戦闘任務につかえるのは1/3で、東アジアと中東に各1隻しか配備できない。

中国や英国もスキージャンプ台式空母を新造した。

日本はヘリ搭載空母「いずも」をもっている。建造当初から、専守防衛に必要となれば短距離離陸ジェット戦闘機F35Bの空母にする意図をもって建造された という。全長248m、排水量1,9500トン。これはカタパルトを持っていないが、政府は2017年暮れ、甲板を耐 熱化してF35Bの空母にも使えるようにする計画をたてることにした。この方針は潜水艦監視能力は低下する。



イージス艦

レーダーと迎撃ミサイルを搭載する移動型プラットフォームとしてイージス艦は必須。またクルーズ・ミサイル、ドローンの 発射基地としても必須。イージス駆逐艦は、対空戦、対水上戦、対潜戦全てに高いレベルで対応できる。

2015年10月27日、米海軍のイージス駆逐艦「ラッセン」が、中国が南シナ海に建設した人工島から12海里以内の海域を航行した。このオペレーション は、中国の南シナ海に対する権利の主張を根本から否定するもので、軍事衝突も辞さないオバマの決意を示すものである。米海軍艦艇が進入したのは、南シナ海 に存在する南沙諸島(スプラトリー諸島)のスビ礁だ。米国が送り込んだのは、イージス駆逐艦一隻である。艦隊を送り込めば、米国が中国に対して攻撃の意図 があるという誤ったシグナルを送る可能性もある。



潜水艦

米国は原爆の複数弾頭搭載のトライデントII弾道ミサイル24発を発射可能なUSSケンタッキー等の原潜がワシントン州のバンゴール基地から太平洋に3ヶ 月の隠密航海に出ている。この間、時々海面すれすれに浮上し、GPSによる位置測定と海軍基地との連絡をとる。

潜水艦からのミサイル発射は海面下で行われる。ミサイルは、17本のチタニウム合金製容器に分割された容器内の炸薬に点火させて、発射管から射出される。 爆風のエネルギーは水タンクに導かれ、瞬間的に水を沸騰させて蒸気を発生させる。これによる圧力上昇はミサイルを発射管から射出し、海面へ到達しかつ離脱 するに足るだけの運動量を与えることができる。ミサイルは発射管内で窒素によって加圧されており、ミサイルに損傷や荷重を加えたり、不安定化させる海水の 浸入を防止している。

米国は、中国の原潜の位置を掴んでおかな ければならない。潜水艦の位置を常に把握することが出来るのは、潜水艦による追尾だけだ。さすがの米海軍といえども、いったん太平洋に出 てしまった潜水艦を探知することは極めて難しい。中国の戦略原潜が出港する時から探知、追尾し、米国の攻撃型原潜で追跡し続けることである。南シナ海での 米海軍の活動は、米国の核抑止戦略にも関わるもだ。かくして南シナ海で、米海軍が自由に活動できることは、米国の安全保障にとって極めて重要な意味 を持つのである。

中国の戦略原潜は、海南島の海軍基地に配備されている。中国の戦略原潜から発射されるミサイ ルの射程は、約8000キロメートルと言われ、南シナ海から発射しても、米国本土に届かない。抑止力として使うために、中国の戦略原潜は、常に、太平洋で 戦略パトロールを実施しなければならない。自国を自由に核攻撃させるような状況を米国が許せない。


2017年の米中の潜水艦隻数をジェーン海軍年間と米DOD年次報告で比較すると下表のようになるという。 中国は2020年までに潜水艦70隻体制になる。

  米国 中国
弾道ミサイル搭載原子力潜水艦(SSBN) 14 4
巡航ミサイル原子力潜水艦(SSGN) 4 0
攻撃型原子力潜水艦(SSN) 51 5
攻撃型ディーゼル潜水艦 0 54
合計 69 63

中国の潜水艦と駆逐艦の数は日本、韓国、インドの合計を上回っている。

日本の潜水艦はすべてディーゼルかスウェーデンのコックムス社スターリングサイク ル・エレクトリック・エンジン搭載の非大気依存推進システム搭載潜水鑑である。


非大気依存推進システム搭載潜水鑑

米国のように地球の裏側まで出かける目的を持つなら原子力潜水艦は核ミサイル発射の隠密プラットフォームとして必要だろう。英国もこれを持っている。これ に「最終手段の書簡」 を 載せて、世界のどこかで深く潜行させておくのだ。日 本は非大気依存推進システムAIP(Air-Independent Propulsion、)搭載潜水艦で対処。MHI開発のそうりゅう型は長期にわたる連続潜航を可能とするスウェーデンのコックムス社スターリングサイク ル・エレクトリック・エンジンは液体酸素を気化して得られた酸素と燃料(ケロシン)の燃焼熱(約800℃ カルノーサイクル効率55%)をシリンダー内の ヘリウムガスに伝え、このガス の膨張と海水冷却による圧縮の繰り返しによってピストンを動かす。 液体酸素を燃料とするディーゼル・エレクトリック方式の非大気依存推進システムは、ディーゼルエンジン焼損防止用の窒素ガスはエンジン 排気ガスを冷却した後、二酸化炭素は海水に溶かし込んで放流した後リサ イクルする。このバッテリーを容積あたりの蓄電量が大きいリチウムバッテリーにかえることが考えられる。

2018年就航予定のそうりゅうはGSユアサ製のリチウムイオンバッテリーを搭載予定という。すでにJAXAがジオスペース探査衛星「ERG(愛称「あら せ」)に搭載している。AIPの鉛バッテリーは2週間しか潜航できなかったが、リチウムは格段にながくなり、使い勝手がよくなるという。

燃料電池は液化酸素は必須だが、液化水素を使う必要はない。ケロシンを水蒸気改質し、二酸化炭素は海水に溶かし込んで放流し、ガス精製の必要のない 固体酸化物型(SOFC; Solid Oxide Fuel Cell)燃料電池をつかえばよい。こうなれば原子炉より静寂なエンジンとなろう。液化アンモニアを熱分解する方式もよい水素燃料となろう。この場合、発 生する窒素ガスの処分に困るかもしれないが。

そうりゅう型は89式長魚雷を発射する533mm魚雷発射管が6基とハープーン(UGM-84)対艦ミサイルが装備されており、このハープーンミサイルの 射程は124キロ、速度は864キロとなっている。89式長魚雷は有線誘導が可能なアクティプ・パッシブソナーを採用しており、最大で130キロで50キ ロ先の標的を攻撃し、弾薬は高性能炸薬 267kg分を搭載可能である。核抑止力を確保するためにクルーズ・ミサイル搭載にすればよい。

オーストラリア海軍はこの技術に魅了されて、日本との共同開発を模索したが、日本側の受けてのMHIと川重オーストラリアでオーストラリア人を使って建造 する条件満たせずフランス企業にさらわれた。日本企業が国際的な管理能力にかけているためとされた。



無人潜水型兵器(核魚雷 ポセイドン)

これに核兵器を搭載して常時潜水して待機させれば、核攻撃に対し報復可能となる。ロシアが開発するとプーチン。

AI搭載の無人潜水艦を開発したら戦争を変える。しかし日本はそのような気力もないようにみえる。(2019/11/22)


戦闘機・攻撃機・攻撃ヘリ

日本は1977年、戦後初の国産戦闘機F1を導入したが、後継機のF2開発時は日米摩擦時で共同開発となり、開発費は全額負担、技術的成果 はただで米国の ものとなるという結末に終わった。現有のF4とF15は100%米国の技術でライセンス料を支払っての日本製。

国産戦闘機F2の後継機としてX2を独自開発する計画はエンジン開発したところだが、財務省は高コストを批判し、多分安倍内閣はトランプに屈して 米国産をえらぶだろう。こうして軍事産業は日本から消えてなくなる。X2を独自開発するとしたとしても、戦闘機の搭載する戦闘機搭載用統合火器管制システ ムの開発は至難の業だ。

現有の第4世代F-15も搭載する空対空ミサイ ル (AAM)の増設などのバージョンアップや第五世代のステルス戦闘機F-22はすでに時代遅れとなり、2011年12月民主党政権がロッキードマーチンの ステルス戦闘機F-35Aの導入を決定した。順次航空自衛隊の200機ある主力機F15と交代させる予定だった。

中国は次世代ステルス戦闘機殲20を配備し、力の均衡が破れかかっている。

戦闘機を国産か米国産を選ぶかの問題には意味がなく、空母も加えてミサイルとドローンの登場でかっての戦艦と同じく、時代錯誤の代物にちがいない。

日本は米国のロッキード・マーチンのテキサス・フォートワーストで生産するF35の3,359機中147機は日本が6.7兆円で購入するという。今回はF35は組み立てもしないという。しかしイラン開発のド ローンをつかってサウジの石油生産工場を攻撃をした例を見ると。日本のF35の147機は無駄使いと印象深い。(2019/11/22)



空対空ミサイル
(AAM air-to-air missile)

相手航空機にたいし、終末誘導は赤外線ホーミング(IRH)、セミアクティブ・レーダー・ホーミング(SARH)、アクティブ・レーダー・ ホーミング(ARH)の三種類がある。

中国は長距離空対空ミサイルPL15を2018年に実戦配備。英国際戦略研究所(IISS)はミリタリーバランス2018で中国の空軍力増強により米国の 優位はゆらいでいるとしている。


航空機用GPS誘導爆弾(スマート爆弾)

航空機から固定地表ターゲット。GPSアンテナ受信機、慣性誘導システム、ミッション・コンピュータ、電動アクチュエータ、電源、ケーブル 搭載爆弾。

空自のF2戦闘機 は対地攻撃できる精密誘導爆弾を持っていが射程はせいぜい20〜30キロメートル。


空対地ミサイル(ASM air-to-surface missile)

空対地ミサイルは固定地表目標にたいし、戦闘機、攻撃機、攻撃ヘリから発射するミサイルである。通常レーダー誘導である。2017年政府は 最新鋭ステルス戦闘機F35に搭載し、日本 の離島防衛につかえるノルウェー防衛大手コングスベルグ・ディフェンス&エアロスペース社が開発中の空対地ミサイル「JSM」は射程が約500キロメート ルある。レイセオン社製のジョイント・ストライク・ミサイルも同等の能力がある。射程が1,000kmある米ロッキード・マーチン社の長距離巡航ミサイル 「JASSM―ER」の導入も検討するという。こうして公海上から北朝鮮のミサイル基地も攻撃できる能力を持つことになる。

2018/3/11 ロシア国防省は核弾頭の搭載が可能な極超音速ミサイル「キンジャル」を戦闘機ミグ31から発射する実験に成功したと発表した。同ミサ イルはマッハ10で飛行、ミサイル防衛(MD)システムを回避でき、2千キロ以上先の標的を高精度で狙えるという。


対地巡航ミサイル

イラク戦争はイラクが多量破壊兵器をもっているという諜報機関の間違いに基づく間違った戦争だったが、このとき、最大の功績をあげたのがアラビア湾の米艦 船から発射されたクルーズミサイルだ。 GPSの位置情報と内臓地図を使い、地上すれすれに飛ぶ能力があり、レーダーに捕捉されにくいため、攻撃に非常に有効でローコスト。この兵器は攻撃兵器と されて、憲法9条違反として日本は 所有していない。これゆえ、核攻撃の抑止力としてのクルーズミサイルはこれを所有しておらず米軍に依存している。しかし、尖閣諸島防衛としてクルーズミサ イルをもつことは自衛は合憲とすれば可能。

問題は日本がクルーズミサイルで攻撃されたときにどうするかだ。中でも厄介なのが超音速巡航ミサイルで、ロシアや中国が開発しているという。陸上自衛隊の 03式中距離地対空誘導弾改(以降03式中SAM改)が2015年夏に、米軍の演習場で超音速ミサイルの迎撃に成功した。ニューメキシコ州ホワイトサン ズ・ミサイル射撃実験場で実施された実験では、10回の発射全てで目標に命中したと報道されている。迎撃した標的の中にはマッハ2以上で海面近くを飛行す る、超音速巡航ミサイルも含まれていた。03式中SAM改は元々は護衛艦に搭載する対空ミサイルから発展した物で、護衛艦への搭載も将来的は可能。開発者 は三菱電機で射程距離は非公開だが、従来型(推定60キロ程度)を大幅に上回るといわれている。JTPS-P25防空レーダー(推定300km)と連動し て100キロ以上の距離から超音速のミサイルや航空機を迎撃可能。03式中SAM改の元になった艦対空誘導弾XRIM-4は諸事情で開発中止になったが、 今度は逆に護衛艦用に移植されるのではという推測もされている。

いずれにせよ米国が日本から引き揚げることになった場合にそなえ、自衛のための兵器としてこれを開発所有することは技術力を維持する意味でも重要となろ う。すでに韓国は航続距離 600kmのクルーズミサイルを米国より調達所有している。

ロシアは2017/10/7 これまでの空軍によるシリア爆撃に加えて、海軍の艦艇からも巡航ミサイル攻撃が実施された。ロシアが実戦で海上からの巡航ミサイル攻撃を行ったのはこれが 初めて。カスピ海上に展開した4隻のロシア海軍21361型ミサイル・コルベット(露国防省)艦艇から合計26発の3M14Kalibr巡航ミサイルが発 射され、シリア国内の「イスラム国(IS)」拠点11カ所を破壊したという。飛行距離は1500kmに及んだ。3M14はカリブル-NKの対地攻撃バー ジョンで最大で2000-2500kmもの射程がある。これはロシアが西側並みの長距離精密攻撃能力を初めて実戦で証明したことになる。現在のところ、海 上から大陸深奥部にまで精密誘導攻撃を行えるのは米海軍と英海軍だけだが、今後数年から10年程度で、ロシア海軍も相当の能力を備えてくると想定する必要 がある。イラクは米国の同盟国でありながら、ロシアへの接近を強めつつ、巡航ミサイルの通過をも認めた。



地対艦ミサイル

2018年の環太平洋合同演習(リンパック)で陸上自衛隊の特科(砲兵)はカウアイ島で国産の12式地対艦誘導弾(SSM)の試射を行った。沖縄本島と宮 古島の間を航行する中国海軍の封じ込めが目的とみられる。


対艦巡航ミサイル

誘導兵器であり、初期には目視誘導のものもあったが、現代ではレーダーもしくは赤外線による自律誘導を行なうものが主である。艦船を撃破するために比較的 炸薬量も多い。超低空飛行特性が特徴である。

艦船に搭載される防御システムではイージス艦搭載のSM-3弾道弾迎撃ミサイル以外に対抗手段が無い。

2017年、ようやく政府はみずから封印してきた長距離巡航ミサイルを搭載させる調査費の予算請求することにした。有事の際に敵艦船などを攻撃するためと している。ただ射程が長いため「敵基地攻撃能力」としての転用も可能で、専守防衛を堅持する政府方針との整合性が問われそうだ。

先制攻撃しなければ専守防衛といえるのではないか?



大陸間弾道弾(ICBM  intercontinental ballistic missile)

IISSのミリタリー・バランス2015によれば、核弾頭を運べる大陸間弾道ミサイル発射機の数は、米国が450、中国が66である。北朝鮮は目下鋭意開 発中。日本はゼロ。

もし北朝鮮が再突入時の高温回避問題が解決し、プルトニウム弾頭のペイロードがトンをこえればサンフランシスコを標的にできる。ウォールストリートジャー ナルのベーカー編集局長はICBMの迎撃は困難なのでもし北朝鮮がICBM開発に成功すれば米国の抑止力は失われ、日米、米韓安全保障条約の履行は困難に なる。同盟の力は弱まり、日韓は脆弱になる。そうさせないために、向う半年間に米国が北朝鮮を先制攻撃する可能性が高まっている。もし中国が北朝鮮問題を 解決できなければ米中関係は緊張し、解決できれば日米の貿易摩擦が取り上げられると予言。

ロシアは音速の10倍の速さで米国のミサイル防衛網(MD)をかいくぐり、複数の核弾頭を搭載したICBMを開発したとプーチンが発表している。これはア メリカにはないものだ。


既存の弾道ミサイル防衛システム(Ballistic Missile Defence: BMD)


冷戦時代は、核には核で抑止力をという相互確証破壊理論が核抑止力の中心であったが、最近の迎撃ミサイルの精度向上のため、日本は迎撃ミサイルで核の第一 撃を退けれ ば、同盟国、米国の報復核攻撃と連動することにより相互確証破壊理論と同等の抑止力が得られるという戦略が次第に強くなっているようだ。中国は自国の核兵 器が無効となり、下手をすると核報復を喰らうのでしきりに気にしている。

ICBMなどの弾道ミサイルを迎撃できないと核兵器を持たない国は持てる国に守ってもらう必要がある。日本のように核を持たない国は米国と同盟を 組むことで担保しているが、もし弾道ミサイルの迎撃能力を持てば、同盟なしでも独立を維持できることになる。ICBMなどの弾道ミサイルをレーダーで捕捉 し、弾道弾迎撃ミサイル(Anti- Blliastic Missile: ABM)または(Ground Based Interceptor: GBI)で迎撃する。レーダー観測の初期値からその弾道を予測して発射する。迎撃率は50%と言われる。米国は北朝鮮対応としてGBIをアラスカに15基 増設して全部で45基に増やす。

米国はICMBの迎撃実験を2017/5/30に行って成功したという。北朝鮮がICBMを数年以内に持つと予想できるからだろう。マーシャル諸島クエゼ リン環礁か ら模擬ICBM打ち上げて、カルフォルニア州バンデンバーグ空軍基地の地下のミサイルサイロに配備された大型地上配備型迎撃ミサイル(Ground Based Interceptor:GBI)で迎撃するという。これはミッドコース段階の迎撃システムである。早期警戒衛星(DSP衛星またはその後継となる SBIRS-High衛星)でICBM発射を探知した後、大遠距離の探知が可能な海上配備Xバンドレーダー(SBX)や機能向上型早期警戒レーダー (UEWR) で標的ICBMのコースを追尾し、得られた弾道情報を総合して戦闘管理および指揮・統制・通信センター (BM/C3) が迎撃を判断し、GBIを発射。宇宙追尾・監視システム (STSS) と称される低軌道の赤外線センサー衛星やXバンドレーダーからの情報を元に、GBIへ最新の目標指示データを渡しつつ迎撃コースに乗せる。大気圏外に運ば れた重量70kgの迎撃体EKVはブースターから切り離され、冷却された赤外望遠イメージセンサーで標的であるICBMの再突入体を捉えて実弾頭と囮の識 別を行い、4つのスラスターで自身の軌道を修正しつつ直撃する。迎撃体は炸薬を積まない運動エネルギー兵器であり、秒速7km以上の高速で衝突する際に生 じる衝撃と熱で大量破壊兵器と目されるICBMの弾頭を無力化する。

ICMBの迎撃実験は成功したようだが、そのキーは海上配備Xバンドレーダー(SBX) にある。これはロシア製の石油プラットホームを基に、上部に装備したレドーム内に大型のXバンドフェーズドアレイレーダーを搭載したものである。全長 116m、全幅73m、排水量は50,000tで、4基の電動式スラスタを使って自走航行も可能。 極東からの攻撃を警戒するために、アリューシャン列島のアダック島を母港とし、アラスカ近海の北部太平洋に配備される。小型の弾道ミサイル弾頭を探知・追 尾するため、使用周波数は短波長で解像度が高いXバンドとされており、発信出力もメガワット級と大きい。推定探知距離は5,000km。

日本には迎撃ミサイルとして米国が開発したイージス艦から発射するSM-3迎撃ミサイルがある。海上自衛隊のイージスBMD艦がミッド・フェイズでの迎撃 に特化している。高度250kmで迎撃する。SM-3ブロック1Aの開発には 日本 も参加し、40回の発射実験を行ったうち迎撃に成功したのは33回で、成功率は82.5%だった。ロケット初期故障も含む確率だからもっと確率は向上して いるはず。最初のBMDはSM-3ブロック1Aで上昇限度500km、射程1,200kmとされている。2015年に試射に成功したSM-3ブロッ ク2Aは上昇限度1,000kmと考えられていて、テポドンが高度500kmで飛行すれば迎撃可能になる。2016年10月にはハワイ沖で試射をし、 2017/2は成功。 2017年から2021年から実戦配備される予定だったが2017/6の試射と2018/1/30の試射は2回とも失敗だった。海上自衛隊が建造中の7隻 目の イージス艦「DD27」とイージス・アショアに搭載される予定だが、どうなるのか。日本はブロック2Aの推進装置とノーズ・コーン(先端部分)の開発を担 当。これでテポドン迎撃可能な体制がいつ完成するか不明。これでイージス・アショアも遅れる。

SM3迎撃ミサイルで撃ち損じた弾道ミサイルは高度15kmで迎撃するパトリオット(Phased Array Tracking Radar Intercept On Target)PAC-3で破壊する。イラク戦争当時より迎撃確率が向上している。ただ精々10km程度しか飛べず、今後弾道ミサイルが進化し、軌道を途 中で変えられれば撃墜できない。それにICBMが大気圏に突入した最終段階は補足できないのではと考えられる。

パトリオットはICBMに対し無力とは思うが、2017/8在日米軍司令部や航空自衛隊の航空総隊司令部が置かれ、日米同盟を機能させる重要な拠点である 横田基地で日米迎撃訓練をするという。

米軍は2013年に地上配備型Xバンド・レーダー2基を青森県つがる市の十三湖近く の車力(しゃりき)と 京都の丹後半島の経ヶ岬に配備した。これはトレーラーほどの大きさの移動式前方配備型Xバンドレーダー(FBX-T)で、THAADミサイル・システムで 利用されているレーダーを転用したものであり、アメリカ軍が運用するが日本側と連接され、ホットポイントである日本海における固定用(ウオッチタワー)で あると考えられている。

THAADミサイルは大気圏に再突入する高度40-150kmで弾道ミサイルを迎撃する。米軍はイ スラエル、トルコ、中東、及び 日本に展開中で、2016年には北朝鮮のミサイル対応として韓国にも配備された。日本もTHAADミサイル導入を2015年に決定、これが配備されれば三 段階の迎撃が可能に なる。中国は自国の核搭載弾道ミサイルが無効になるため反発している。

米国防総省ミサイル防衛局(MDA)は2017年7月ハワイ北方の太平洋上空を飛行する空軍のC17輸送機から弾道ミサイルに見立てた標的を発射。アラス カ州コディアックの太平洋宇宙港コンプレックス-アラスカ(PSCA)に配備されたTHAADが標的を探知・追跡し、迎撃したと発表した。THAADの迎 撃試験はこれが14回目でこれまですべて成功しているが、中距離弾道ミサイル(IRBM)を迎撃したのはこれが初めてだとしている。ICBMの迎撃は THAADでは無理かも。

北朝鮮が開発中のICBMは射程6,700km、高度2,000kmでこれが大気圏に突入するとスピードがありすぎて迎撃ミサイルは無力となる。 2017/7/29の北朝鮮の実験では高度23,700kmに達したという。これは射程10,000kmとなり米本土を攻撃できる。弾頭が大気圏再突入の 熱にも耐え、核弾頭の起爆装置が正確に作動したという。

日本が2016年までにBMDに投じた金額は1兆6000億円。2018年までに累計2兆円になる。THAADミサイル導入すれば数千億円増える。

核ミサイルは現在では、大気圏外で複数の弾頭に分かれる多弾頭型が主流。ブロック1Aやブロック2Aは1個の弾頭にしか命中しないので、複数の迎撃ミサイ ルが必要。米ロの協定によってアメリカは多弾頭型対応の迎撃ミサイルを開発しないと約束しているので、開発は凍結されている。

このようにして互いに相手を上回る核を保有する戦略は、今では現実的でなくなった。どれだけ相手のミサイルを迎撃できるか、その迎撃網をかい潜れるかが、 現代の戦略優位性と言える。

2018年に至り、防衛省はイージス艦のシステムを陸に上げたイージスアショアを秋田市の新屋演習場と山口県萩市むつみ演習場に配備する予算をつけた。2 基2,000億円+ミサイル。無論、米国の「核の傘」は神話に過ぎないことは自明で、日米安保は通常兵器による戦争防止有効としても核戦争には無力だ。だ からその配備の必要性は否定できない。ただ導入のもう一つの理由としてイージス艦の乗組員の負荷を減らすためとある。しかしこれは米軍のように乗り組み員 を交代制にすればよいこと。高価な機材は稼働率をあげなければ意味がないし、無防備で港に係留させておけばそれだけ脆弱性は増す。それをしないで陸上に固 定基地を持っても真っ先に攻撃されて無力化されるのでほとんど張り子のトラに過ぎなくなる。イージス艦の乗組員の交代制が先ではないか。これは尖閣諸島に 張り付いている海上保安庁の艦船の乗組員についても言える。



ロシアが開発中のミサイル

戦略核搭載可能な滑空型ミサイル(アヴァンガールト)、爆撃機用の超音速高速ミサイル、原子力巡航ミサイル(ブレヴェスニク)を開発中とプーチン。ただし 爆撃機用の超音速高速ミサイルはすでにあるし、戦略核搭載可能な滑空型ミサイル(アヴァンガールト)の存在は妖しいとされている。最後に原子力巡航ミサイ ル(ブレヴェスニク)は原子力ジェットエンジンの開発に成功したひとはいないのでアドバルーンに過ぎないと考えられている。



アメリカが開発中の核巡航ミサイル

トランプ政権の政策。



日本の偵察衛星

1998年8月31日、朝鮮民主主義人民共和国が咸鏡北道舞水端里の発射場から、何らかの“飛翔体”をほぼ東の方向に向けて発射した。飛翔体の一部(ロ ケットの1段目と推定される)は日本海に、他(2段目以降と推定)は、日本の東北地方上空を通過して、三陸沖の太平洋に落下した。目覚めた日本は2011 年以降準備し、2017/3に7基目の偵察衛星をH2Aで打ち上げた。現在7基体制で偵察しているが、力不足でたよりにならないようだ。

ミサイル発射を最初に捉えるのはアメリカの早期警戒衛星である。日本の保有するレーダーや情報収集衛星は、原理的にリアルタイムでの情報収集は不可能であ るため、衛星による早期警戒情報はアメリカ軍の北アメリカ航空宇宙防衛司令部に頼っている。



偵察レーダーサイト

日本列島の海岸線にそって27サイトある。米軍が作ったものを引き継いでいる。千葉県の愛宕山山頂にある峯岡山な どはその内の一つ。その他、稚内、網走、根室、襟裳、大湊、山田、加茂、奥尻島、大滝根山、 佐渡、峯岡山、輪島、御前崎、経ヶ岬、笠取山、串本、高尾山、見島、海栗島、脊振山、江島、 下甑島、高畑山、沖永良部島、久米島、与座岳、宮古島にある。ただしこれらは対象はステルス能力のない航空機でICBMは見えない。

ICBM用には青森県車力分屯基地(しゃりきぶんとんきち)と丹後半島の経ヶ岬通信所(きょうがみさきつう しんじょ)に は米軍のXバンドレーダーが配備されている。このレーダーは当初THAADミサイルシステムの一部として開発されたもので、北朝鮮による弾道ミサイル打ち 上げを探知・精密追尾して、ミサイル防衛システムに情報が提供される。この2つの基地はGoogle Mapでは古い航空写真をつかっているためか、格納庫にはいっているためか見つからない。

X バンド・レーダーは波長2.5〜3.75cmの電波をフェーズド・アレイ型素子で放射するため、高い分解能が得られる。 位相配列レーダーとは平面上に多数の小さなアンテナを備えることで機械的な首振り動作を必要としないアンテナである。弾道ミサイル防衛システムの目標 (ミサイルや弾頭)捕捉、弾頭とオトリとの識別、追尾、迎撃ミサイルの誘導に使用される。大気による減衰が大きく、遠方に到達させるには大出力が必要とな る。イージス艦ではレーダー稼働中は甲板からの乗務員退去がルール。

FPS-3と呼ぶ日本のアクティブ・フェーズドアレイレーダーはドームに収納された回転式である。信号処理装置などは地下に設置されている。経ヶ 岬、加茂、大滝根山、当別、輪島、福岡の脊振山、笠取山の5ヶ所のレーダーサイトに配備している。この情報を自動警戒管制システム (JADGE:Japan Aerospace Defense Ground Environmentに結び、PAC3の迎撃に使うことになている。

三菱電機製のFPS-5と呼ぶ固定式のアクティブ・フェーズドアレイレーダー(ガメラレーダー)を開発し、2011年度までに試験機が千葉県旭市に、完成 機が鹿児島県の下甑島(しもこしきじま)、佐渡、大湊(青森)、与座岳(沖縄)な ど4カ所、計5ヶ所 のレーダーサイトに配備した。1000kmが見れる固定式である。下甑島と大湊はGoogleMapでは見つからない。100億円と高価であるため、中断 し半値のFPS7に移行。

FPS7は素子には窒化ガリウムを用いて、電波送信出力の高出力化を図っている。NEC製である。J/FPS-5は、高性能ではあるが、継続的な取得は予 算的に困難であった。J/FPS7は、比較的低廉な取得費用でもって、老朽化したレーダーサイトの機器更新を行 い、ステルス機や巡航ミサイル等の低RCS目標への対応性を向上させることを主眼としている。見島、沖永良部島、宮古島に配備。



佐 渡のガメラ


偵察機・偵察哨戒機


自衛目的のため日本は哨戒ヘリコプター、P1哨戒機。38個のソノブイ発射可能。最大8発までの対艦誘導弾(91式空対艦誘導弾やAGM- 84 ハープーン)や空対地ミサイル(AGM-65 マーベリック)を装備できる。



無人偵察機


グローバルホークは米軍が三沢基地と横田基地に配備。武器は持たない。



早期警戒機・早期警戒管制機(AWACS)


機体に全方向を監視できるレーダーを装備し空中から管制等を行う軍用機。E2C『ホークアイ』を沖縄・那覇基地に進出させ、必要に応じ、より強力な警戒監 視が可能なE-767 AWACS機も浜松基地から適宜、発進させている。しかし、中国の空、海軍力のビルド・アップは米国防総省の専門家をして驚愕させるスピード。長期対応と して航空自衛隊はE2C『ホークアイ』部隊を一部、三沢基地から那覇へ移動。


基幹回線


ミサイル防衛網の基幹回線としては、新自動警戒管制システム (JADGE: Japan Aerospace Defense Ground Environment)が使用される。早期警戒衛星や警戒管制レーダーで捕らえられた弾道ミサイル情報はJADGEによって各迎撃部隊に送られる。

JADGEは、2008年度までにミサイル防衛システムとの連接するための改修設計と製造を完了し、2009年度にFPS-5と連接、2010年度に米軍 のXバンドレーダーと連接、2011年度に適合化改修を完了させた。

アメリカ軍の三沢基地(横田基地にも)にはJTAGSが配備されており、早期警戒衛星からの警報はここで受信して、新自動警戒管制システム (JADGE)に入力することができる。



宇宙戦争


トッド以来の名論文といわれるものがウィスコンシン大のマッコイ教授のThe Decline and Fall of the American Empireという論文だ。これによれば宇宙戦争向け の無人偵察攻撃機X-37B(ボーイング社)がすでに2回ほど打ち上げられており、3回目は2012年12月だという。無論、軍事機密なので米当局からは な にも公表はない。ー 世界4 April No.815 2011

アマチュア観測から推測したNY timesの記事も ある。X-37BはNASAのシャトルの遺伝子を受け継ぐため、ペイロードが何であるかわからないところがミソ。必要に応じて攻撃兵器(核兵専守防衛器含 む)陽子 などの荷電粒子を加速器で飛ばす粒子兵器(A particle beam weapon uses a high-energy beam of atomic or subatomic particles (either photons or forms of charged particles) to damage the target by disrupting its atomic and/or molecular structure)を入 れ替えて再打ち上げして待機させることができる。シャトルのような中身に何を積み込んだかわからないX-37Bのような宇宙船を沢山打ち上げておいて、そ れで偵察すると同時に そのなかから適宜ミサイルや荷電粒子が飛び出す方式というのが米国が描くシナリオだろう。ではX-37Bが主役かといえば問題がある。



X-37B NY times


X-37Bを使うためには暗号化した指令コードを電波なりレーザーなりに乗せて行うということになる。対抗者はこの暗号を事前に解読して指令を無害化する ワームを敵 側のネットワークに仕込んでおくなどのサイバー冷戦が目下米国と中国で繰り広げられているわけ。これを実際に発動するのが第三次世界大戦の定義だ。しかし 米国はこれに負けるだろうと予想される。唯一の弱点はコマンドライン暗号解読だ。

現にグーグルが中国市場に参入したとき、自主検閲を要求され、のちに拒否したが、この過程で上海の人民解放軍61398部隊からと思われる本格的なハッキ ング攻撃を受け、重要な機密を盗まれた。サイバー攻撃では40種類以上のマルウエアファミリーが使用された。おなじような攻撃は公表されていないが主要メ ディアや他の企業も経験 している。2006年中国の民間サイバー部隊が米軍の兵站システムNIPRNet (Unclassified but Sensitive Internet Protocol Router Network)を攻撃し、20テラバイトのデータをダウンロードした。NIPRNetは世界のネットワークに接続するオープン系だから、このような脆弱 性は避けられない。

しかし作戦指揮系はクローズド系だ。ところがイランの遠心分離器の制御系はクローズ系にもかかわらず2010年9月に Microsoft Windowsで感染するコンピュータ・ワームであるスタックスネット(W32/Stuxnet)でダウンした。遠心分離機を制御するPLC(プログラマ ブル・ロジック・コントローラー)がスタックスネットによって乗っ取られ、周波数変換装置が攻撃されたことにより、約8400台の遠心分離機の全てが稼働 不能に陥った。またブシェール原子力発電所においても被害が生じたとされている。感染経路はUSB経由とされる。ニューヨーク・タイムズによると、この ワームは、NSA(アメリカ国家安全保障局)と、イスラエル軍の諜報であるen:Unit 8200により、イラン攻撃用に作られたと報じられた。いまや007工作員もバーチャル化してしまった。

そもそも米国のソフト産業を支えているのはアジア系米人 だ。米国の若者は日本とおなじく軟弱な文系に逃げ、高度な能力を失いつつある。特にシリコンバレーで人材難がはげしいというわけでアメリカはこのバーチャ ルな戦争で負けるかもしれないという予想が各国の識者から出てきている。私の知る米国のエンジニアリング企業のエンジニアはアジア系でそのトップはインド 系、営業や財務が白人の文系で構成されている。

ところでこの傾向を象徴するようにマイクロソフトもインテルも落ち目だ。インテルのCEOがポール・オッテリーニという財務系のCEOになったときいて、 いよいよ企業の終末フェーズに入ったのかもしれないとおもっていたら、案の定、ポール・オッテリーニは2013年5月に 引退するという。これは日本の企業におこったこととまったく同じ現象。今のインテルが最も恐れるライバルは英国ケンブリッジに本社をおくアームという企 業。アーム社の 強みは成長著しいスマートフォンやタブレットのモバイル市場にある。同社はいわゆるファブレス企業で自ら製造はしないが、省エネ設計のマイクロプロセッ サー(超小型演算処理装置)を独自開発し、そのIP(知的財産権)をこれもファブレス企業の米クアルコムなどにライセンス供与している。こうしてライセン ス生産されたアーム仕様の プロセッサーは世界のスマートフォンの90%に搭載され、 タブレット端末でもシェアは高い。このように米国の強みはどんどん消えている。そしてクワルコムは米エヌビディアやサムソンに追われる立場だ。

米軍は直接には中国から部品を調達していないが、調査では軍用部品の中に15%は中国製の部品がつかわれているという。787のバッテリー充電器の部品は 韓国製だったという。時間がたてば米軍機といえども中国 製部品なしには飛ばなくなる日がくる。そのうちに組み込みCPUすら中国製となるだろう。すでに携帯のCPUは台湾製か韓国製だ。

米国政府は米軍にもサイバー攻撃部隊を創設し、中国製のパソコンやルーターなどインターネット機器の購入を禁止したという。

防衛省の通信網は宇宙通信も含め民間のネットを借り上げて、ファックスで連絡などということをしていたが、2017/1/24に 三菱重工業と宇宙航空研 究開発機構(JAXA)は種子島宇宙センター(鹿児島県)から、防衛省独自の通信衛星を搭載したH2Aロケットを打ち上げた。 分離した通信衛星「きらめ き2号」は、現在使っている民間衛星に代わる、防衛省の独自衛星。雲などの影響を受けにくい波長帯域を利用し、高速で安定的に通信できる。また陸、海、空 の自衛隊の部隊間通信が一元化され、効率よく情報を共有できる。



レールガン

ミサイル防衛の防御率はせいぜい2から3割。多数の弾頭で攻撃される飽和攻撃には弱い。ミサイルは高価のため、財政的にもたない。ここでゲームチェンジャ ―が登場する。現在考えられているのがレールガンである。電磁誘導(ローレンツ力)で安価な鉄製の弾頭を250km飛ばせる。船で相手国に接近し、ミサイ ル発射直後に撃ち落 とせる。日本はレールの材質の研究に10億円使っているという。


サイバー戦争


米国のGDPは2026年に中国、2050年にはインドに抜かれる。このような弱い経済では財政力が低下し、未来の戦場である宇宙でX-37Bなどを中心 とした宇宙無人偵察攻撃衛星を実用化することが困難。既述のように若者の教育の質が劣化しており、暗号自動解読スパコンを開発した中国のサイバー攻撃能力 に負ける可能 性があり、X-37Bなどの宇宙兵器さえコントロールできなくなる。こうして軍拡競争は一発も実弾が爆発されることなく、誰も死なず、誰も第三次世界大戦 がはじまったことさえ気が付かないうちに終結し、米国の覇権は静かに死を遂げる。それは中国が米国の指揮命令系統の暗号を解読して無力化したことが分かる 一瞬のことだ。これが国家の脳死というやつ。結局、米国はこうして2025年ころまでに覇権を失うだろうというのがマッコイの予言だ。米国でのシェールガ ス発見による冨が少しこの時期を遅らせる可能性があるが、米国はエネルギー自給のメリットを利用して装置産業は今後も力を維持 するだろうが、自動車産業のような人海戦術にたよる製造業を失い、金融などの虚業しか残っていないため、おそかれ早かれ臨終 の時期は来るだろうと思われていた。ところが、トランプ登場で先行きは混沌としてきた。オバマ時代でも9/11の後遺症で人に頼る諜報機関職員2万人の CIAに加え、職員は3万人以上、予算も中央情報局(CIA)を上回る電子機器を使う国防総省傘下の諜報機関NSAが巨大な予算を獲得して、 targeted surveilanceだけでなくmass surveilanceを行っている。これは全世界の人のコミュニケーションをすべて監視するということ。技術的には可能。軍事用回線だけに限らず、銀行 システムや電力・鉄道インフラストラクチャーの閉鎖的システムがサイバー攻撃されることもと考えておかねばならないことは韓国で経験されている。スノーデ ン はCIAのエージェントとして日本のインフラストラクチャーに使われるSupervisory Control And Data Acquisition:SCADAなどにイランのウラン濃縮施設を攻撃したと同じStuxnetウィルスというマルウェア―を埋め込んだと告白してい る。初期のことはUSB経由で感染させたがいまではもっと洗練されている。Stuxnetは米国とイスラエルが共同で開発したものだ。中近東では Flameというウィルスも発見されている。

日本でも「テロ等準備罪(共謀罪)」が国会に提出され、気づかぬうちに日本もどんどん監視国家になりつつある。

電力中研の木下さんがトリウム熔融塩炉研究に関して一週間中国訪問で感じたことは中国の科学者は元気で、かなり能力が高いそうだから侮れない。

そもそも西洋文明が現代科学文明を生み出し、フロントランナーになり、コンピューターもアルファベットで制御されている。若い頃、フォートランでプログラ ム書いていて、コンピューター制御言語系がアルファベットでなくカナであったら日本人のソフトの生産性が上がると考えたものだ。技術文明が西洋発でアル ファベッ トで意思疎通しているのは東洋人には圧倒的に不利。常に翻訳工程の遅れと品質劣化に悩まされる。そもそも原語でなければ正しい認識に至らない場合もあるの だ。エリートは教育でなんとか後を追うということは可能だが、モノづくりで奴隷的につかわれている一般大衆 は置いてけぼり。この点を置き去りにして原発を再稼働しても日本製品のデザインの魅力が失われて久しく、日本は沈没したままだなとつくづく思う。米国人の 友人と話しても彼らはこの有利さを認識している。「もし日本語で世界がうごいているとすれば俺たちは全く太刀打ちできない」と。もし中国が独自の漢字ソフ ト体系を築けば、宇宙戦争に勝利できることは確実となると、中国とトリウム熔融塩炉開発を模索している木下氏はいう。

通信システムの欠点は無線通信に深く依存しているために旧式の電波妨害に脆弱であることだ。光通信など別系統の通信方式を開発する必要がある。

問題は日本にはサイバー攻撃に耐える人材は皆無で育てても居ない。今後の戦争はサイバー攻撃で決着がついているだろう。にほんはいつ敗けたかも気が付かな いうちに、死がやってくるだろう。


原子力と核拡散とテロリスト

原子力発電はウラン235の濃縮度4%程度の燃料を使う、更に濃縮度をあげ、100%程度にし、5cmのベリリウムで包めば、 臨界量52kg程度となる。

原子炉で作られる使用済み燃料を再処理してプルトニウムの濃度を93%程度に精製すれば4-8kg程度で原爆は作れる。北朝鮮がつくった かもしれない強化爆弾は 純度81%程度のプルトニウウム2kgの周りを重水素化リチウム、三重水素化リチウムでつつんだものであると推定されている。これ を貨物船などに一般貨物として積み込み、ターゲット国の港で爆発させるというテロ行為は理論上ありうることで米国は警戒している。

日米原子力協定に基づき日本が英仏に委託して再処理した不純物の多い原子炉級プルトニウムは31トン、燃料のバックエンド処理ができないため、現在廃燃料 中に溜まっている未処理 原子炉級プルトニウムは144トンある。六ヶ所村の再処理プラントはトラブルで稼働していないがこれを動かす根拠となる米国との協定は2018年改訂しな ければならない。韓国は不公平だとクレームしていて研究だけは米国が認めた。

六ケ所村の処理プラントは使用済み燃料からプルトニュウムを化学的抽出でプルトニウムを分離回収 しているので兵器に使えるプルトニウムは製造可能である。しかし米国との協定で六ケ所村では抽出分離した後すぐ、同量のウランと混合して兵器に出来 ないようにしている。無論、再溶解して再抽出すれば兵器にできるがこれは国際協定違反で世界を敵とするのは必定。

日本が海外に原子炉を輸出すればその国の政権が転覆し、公共財へのアクセスの 自由を要求しているイスラムの覚醒者といわれるマルチチュードに乗っ取られれば核拡散の危険性は増す。したがって原子炉輸出など安全保障上の危惧がある。


戦時のターゲットとしてのダム


原発と同じく破壊されると甚大な被害が生じるのが巨大ダムである。特に中国の三峡ダムはターゲットとして話題になる。通常爆弾なら300トン必要と言われ ているが、核兵器なら1発で可能である。


核なし、安保なし、憲法改訂なしで核抑止力は確保できるか?


ゲーム理論が 教えるところでは核抑止力は非協力ゲームのナッシュ均衡でこれは同等の痛手を相手に与える報復力をもたないと成立しない。そこで核を持たない国は持つ国と 相互安全保障協定を締結して均衡が保たれると考える。日米安保がそれだ。しかし、米国の衰退を考えると安保なし核抑止力も準備しておかねばならない。核武 装論はこ こに発する。実際に日本が核武装できるかだが、核拡散条約の例外として国際的に認められるなら核武装できる。しかしイラン、北朝鮮のように国際的孤立化を してまで持つということは貿易立国の日本では採用できない戦略であろう。第一、原子力発電の燃料であるウラン235を入手できなくなる。

では核を持たずに抑止力を持ちうるか?それが実はある。マルチチュードの戦略を採用するのだ。 核兵器を持っている国は必ず核廃棄物を数トン内臓する原子炉を持っている。核兵器は爆発時甚大な被害をもたらすが、数キログラムの核分裂物質をまき散らす だけだからその放射性物質の被害 はたいしたことはない。しかし、原子炉の使用済み燃料はトン当たり160エクサベクレル(1018)も分裂物質を含んでいるのだ。 かつ崩壊熱除去のため、数年間は無防備な地上のプールに中間貯蔵されているのだ。ちなみに宇宙の寿命は1エクサ秒。これをクルーズ・ミサ イル搭載通常兵器で攻撃して報復出来る能力を持つことで核抑止力となりうる。巨大な原子力発電施設を取水設備を含め、地下化することはコスト的に引き合わ ない。弱者 としてこれを使わない手はない。報復は倫理がないとは批判できない。なぜなら核兵器 にはそもそも倫理はないのだから。むろんこの抑止力を獲得するには自分の原発を全て廃炉にし、使用済み燃料も通常兵器で破壊されない場所に保管しておか ねばならない。ドイツの脱原発の隠された利点がここにある。無論隣国のフランスには近すぎて使えないが、同盟国だから使う必要もない。300kmがこの報 復力を使える目安となる。そしてICMBの迎撃に失敗し、核兵器がさく裂したら自動的にこの報復装置が作動するように設計しておくわけである。だれも政治 的に止めることはできないというわけだ。(2014/8/3ハマスはイスラエルのティモナ原発向けにミサイルを発射し、近くに着弾した。)

核兵器を持たずに核抑止力を持つという方法にすでに日本が暗黙裡につかってきた方法で再処理したプルトニウムだ。核兵器には転用できないようにウランを混 ぜてMOX燃料してある。兵器級の実験プルトニウムは全て米国に移した。ただ軽水炉も安全上の理由で簡単には再稼働できないし、コスト高で燃料用プルトニ ウムは溜まっている。もし原子力が廃棄物の捨て場を確保できずに止まればMOXを燃す手がなくなる。いや おう なしに管理しながら持っているしか手はなくなる。

原子力空母も原潜も港にあるときには同じテロなどの攻撃に対し脆弱性をもっている。特に港でメンテナンスをしているときだ。したがってこれも日本にはもち こみさせないというこ とが条件である。

現時点で日中がたたかったら日本有利とよく言われる。ワシントンの国際評価戦略センター主任研究員リチャード・フィッシャー氏の日本有利説がよく 報道される。その理由は日本側の潜水艦がすぐれているからというもので、将軍は過去の戦いをするという過ちをおかしている判断だ。実は日本は中国の巡航ミ サイル配備に対応した装備をしていない。これでは日本は座して死を待つことになることにも国民は気が付いていない。日本は専守防衛で「相手から武力攻撃を 受けたときにはじめて防衛力を行 使し、その態様も自衛のための必要最小限にとどめ、また、保持する自衛力も自衛のための必要最小限のものに限るなど憲法の精神に則った受動的な防衛戦略に こだわってきた。しかし専守防衛方針でも敵地を攻撃して防衛する考えもある。「日米防衛協力のための指針(いわゆるガイドライン)」では、必要な場合には 米軍がそうした任務を遂行すると定められてきた。また、現時点で自衛隊はそのための能力を有していないが「他に適当な手段のない場合」においては、「座し て死を待つ」のではなく、一定の制限の下で攻撃的行動を行うことは、法理論上は認められていると解釈される。近年、弾道ミサイル脅威の高まりに伴って、我 が国も独自の敵地攻撃能力を持つべきと考えられる。それは専守防衛の基本的な枠組みを放棄することを求めるものではなく、専守防衛を維持した上で、必要な 場合に弾道ミサイ ル脅威を取り除くための敵地攻撃を行うものだ。自然法で自衛権はすでにあるのだし、行政権は内閣に属する(憲法65条)とあり、かつ内閣総理大臣は自衛隊 の最高指揮官である(自衛隊法7条)のだから法的にも問題ない。無論ナチ政権が使った5条からなる全権委任法(授権法)により非常時に独裁権を時の政府に 与えるような法改正こそするべきではない。というわけで、日本も米軍がもっている空対地巡航ミサイルであるマーベリック、空対艦巡航ミサイルのペンギン、 そして艦の垂直発射システムから飛 ぶ艦対地巡航ミサイルのトマホーク、航空機 や衛星からレーザーで攻撃するairborne laser(ABL)を装備し、策源地攻撃のできる戦略が急がれる。クルーズ・ミサイルは攻撃型兵器だが、核も空母ももたず、米国の助けも期待せず、核抑 止力とするには報復ができる兵器体系を持とうということだ。空母を使う航空機は攻撃型の兵器であるが、過去の兵器体系に属する。潜水艦搭載クルーズ・ミサ イルが日本の核なし、安保なし核抑止力として有効だろう。人工物を含む最新の地形図とGPS機能を内蔵した 潜水艦発射型クルーズ・ミサイルを常備し、常時相手の地形図をレーダーカメラで宇宙から測定、更新しておくこという地道な努力が必要だろう。

韓国は北朝鮮の核実験の直後、射程距離1,500kmの艦対地クルーズ・ミサイルを装備していると明らかにした。国連ルールでは800kmまでと制 限しているにも関わらずである。日本も中国や北朝鮮に過てるシグナルをおくらないためにも早急に艦対地クルーズ・ミサイルを配備する必要があろう。そして クルーズ・ミサイルの基盤となる自前のGPS、独自の通信網かく乱技術開発も必須だろう。


そもそも核抑止力とは

John Leslieは「世界の終焉」の最後の章に「囚人のジレンマと核報復」という章を設けて核報復はいままで核戦争を抑止してきたようにみえるが、かなり危 なっかしい。抑止力の均衡がやぶれていつ崩壊してもおかしくないと指摘している。


核兵器保有数

スエーデンのストックホルム平和研究所の2017年推計 (ミサイルに装架された弾頭数)

米国 6,800(1,800)

ロシア 7,000 (1,950)

中国 270

英国 215(120)

フランス 300(280)

インド  132-130

パキスタン 130-140

北朝鮮  10-20

イスラエル 80

全世界合計 14,465発

日本のプルトニウム保有量は47トン、93%程度の兵器級プルトニウム8kgで核兵器ができると すれば、6,000発。


核兵器は安上がりか

防衛大学校安全保障学研究会の武田康裕、武藤功の両氏は日米同盟の解体コストを年に22兆2661億円〜23兆7661億円とし、現在の日米同盟を活用し た防衛力の在り方が費用対効果に優れ、現実的であることを裏づけている。核武装については、独自に核戦力を持つためのコストと、核武装したときの代償とし て引き受けなければならないコストに分けて計算している。

日本が独自の核戦力を持つことについては、日本の地勢的な条件から、残存性が期待できる、つまり抑止力として機能する戦略核戦力は、原子力潜水艦 (SSBN)をプラットフォームとする潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)だけだ、としている。そのコストを推定するとき参考になるのはイギリスで、1隻 あたりトライデントIIミサイル(D5)16基と核弾頭48発を搭載する原子力潜水艦4隻をローテーションで運用しており、コストの総額は約3兆円、年間 のランニングコストは約3000億円。

3000億円だけを見れば護衛艦3隻の建造予算を下回り、一見すると安上がりなようだが、現実には日米同盟の恩恵を受けている部分を日本独自に補わなけれ ばならず、その巨額さから「核武装は決して安価ではない」としている。

しかし、日本が安保のためにアメリカに譲っているところを入れれば損したかもしれません。もう日本には航空機製造でもコンピュータソフトであろとAIのた めのビッグデータであろうが譲る所がなにもない。まあそもそもそんな実力も人材も育てたかと言えばノーでしょう。岡嶋裕史の「プログラミング教育はいらな い・・・GAFAで求められる力とは」を読めば明らかです。



小型核兵器

トランプ政権が開発中。




未来の有人ステルス、無人戦闘攻撃機(ドローン)


X47ペガサスのような無人ステルス戦闘攻撃機はレーザー光線と高出力マイクロ波(HPM)で敵のミサイルや通信施設を破壊することができる。X-47は レーザーで迎撃することで敵のミサイル発射基地までも一挙に破壊することができる。空対空ミサイル(搭載重量最大2045キロ)も装備し、多様な方法で敵 のミサイルを迎撃することも可能とされたがまだ研究段階で配備されていない。ただ無人機は無線誘導電波かく乱に弱い。

F22 Predetorのようなベクタースラスターを持った有人ステルス戦闘機は米国では実戦配備され、沖縄にも一時配備されたが、引き上げた。足が短いので、 空中給油機なしには役に立たない。米国ではこのほかにF35のような空母から垂直に離艦でき、ホバリングできるステルス戦闘機を開発している。日本も導入 予定である。ウサマ・ビン・ラデン殺害に使われたステルス有人へり、無人へり、対空ミサイル、無線誘導ミサイルなど試作された。Droneとも呼ばれる無 人攻撃機(UCAV Unmanned Combat Air Vehicle)は一部イラクでは実戦配備され、パキスタンでも使われている。Secrets of Future Airpowerに 詳しい。無人へりなどは尖閣などの無人島防備に必須となろう。日本も独自開発を含め整備してゆかねばならないだろうと2012年に書いたが、2015年3 月になり、自衛隊がボーイングから購入したドローンであるスキャン・イーグルがエンジン不調で墜落、国産で開発した機体は翼の一部が落下して操縦不能に なって林に墜落とか。まだまだ前途遼遠である。

無人戦闘攻撃機もAIの進歩で完全自律型も可能であるが、核兵器より怖いところもあり、底なしの軍拡競争にならぬように一線を画する必要がある。その一線 とは「ヒューマン・イン・ザ・ループ(人間が関与する)」か否だ。




潜水・低空飛行ドローン

先制攻撃には使わない報復兵器としてのミサイル潜水艦構想を突き詰めてゆくと潜水・飛翔報復兵 器となる。非大気依存推進システム搭載潜水艦を小型化・無人化し、使い捨てにする。この先端に艦対空ミサイ ル、艦対地クルーズ・ミサイルを装着する。ターゲット国の沿岸でこれを切り離し、クルーズミサイルはジェットエンジンで目標に接近する仕掛け。すべて GPSと事前査察マップにしたがい自律的にターゲットを攻撃する。この潜水・飛翔報復型自衛兵 器を開発所有する。

米国が米兵を日本の傭兵としてつかうなら全額支払えといってきたとき(すでにかなり支払っているらしい)、日本は国家の借金がGDPの2.5倍もあるわけ で、その傭兵費用も支払えない時がくる。その時に備え、潜水・飛翔報復型自衛兵器というロボット報復兵器を開発したほうが安くつく。そして技術の民生波及 効果で製造業も利益が増え、税収も増えて国家財政がドイツのように良くなる。

当然このドローンは内臓AI頭脳で自律的に行動する。


AIイージス艦船(多分実現しない)

日本が北朝鮮や中国という独裁政権の支配下にある国と隣である以上、核兵器のような攻撃兵器で抑止力を保持している米国とのとりあえずの同盟維持は大切と 考え る。しかし米国は大西洋と太平洋を自分の勢力範囲としているから、それに適応した兵器体系しか持っていない。結果として現在日本に配備されている迎撃ミサ イルは日本の防衛には役立たず、米国本土防衛のためにしか存在しないと言っても過言ではない。

2017年の北朝鮮の試射のように北朝鮮本土から4発のICBMで核兵器が運ばれるときは米国製迎撃ミサイルで対処できるだろう。しかし北朝鮮が開発して いる潜水艦発射ミサイルで至近距離から狙われると対処できない。

これに対処するには日本の全海岸線に多数のレーダーと小型ミサイル基地を多数整備するか、多数のAI搭載自動運行イージス艦を建造するしかないのではと愚 考する。残念ながら米国はそのような兵器体系をもっていないため、日本は自力開発しなければならないことになる。政府がまともな思考力をもっていたら核兵 器を持つ攻撃力を持つための憲法改定より、独自兵器体系に予算を振り向けるべきだと思う。

しかしカルタゴが滅んだと同じ理由で、長年米国に国防を依存する選択してきた政府指導者からそのような戦略思考能力は失われたように見える。


AI兵士、コンピュータとAIより構成される自動国防機械

人工知能搭載ヒト型戦闘ロボットはゲームチェンジャーになりうる。特に市街地における対テロリスト掃討兵士などは実用化近い。

John Leslieは「世界の終焉」でコンピュータと人口知能に政治や国防を任せる時代がくるかもしれない。こうすれば国家は人を捨てても栄えることができる。 そこまでにならなくとも国民の幸 福よりも他国を負かすことのほうにはるかに関心を持っている国家がどれほど多いか、そして、他国を負かすことを最優先にすることができなかった国家が、地 図の上から抹消されるという深刻な危険を犯すことになりかねないことをおもいだしてみようと言っている。


グローバル・コモンズ


遠藤乾北大教授が軍備強化による抑止力は相手国の強固姿勢を呼び起こす悪循環に陥る。この悪循環を断ち切るために、工業化による大気汚染、感染症の発生、 放射能汚染、食の安全、テロ、避難民などグローバル時代の諸問題を協働して解決して相手に安心感を与える政策を加味すべしというもの。中国も協力的な参画 をする可能性をもっているのだから、取り締まり対象としてしかみれないとコモンズは枯れてしまう。


原子力空母を退役させて首都圏を核事故から守る

地政学的視点をはずれても東京から40km圏の横須賀に原子力空母や 基地があるという純技術的リスクをどうするという問題もある。明治天皇の玄孫にあたる憲法学者竹田恒泰氏の指摘の通り「原子炉は自国に向けた核兵器」 ともいえる。敵国やテロリストから攻撃をうけなくとも事故で放射能をまき散らされたら首都圏は壊滅となる。なんのための空母や潜水艦か分からなくなる。し かし日本として 安保はしばらく維持しなければならない。唯一の手段はしたがって核抜き核抑止力を持ち、安保がなくても良いシステムを構築することだろう。そうすれば原子 力空母は単なる「張子のトラ」となる。そして 原子力空母に退役してもらうのが最善策となろう。

日本は自国産のクルーズ・ミサイル発射可能なAIP潜水艦を持てば、核抜き核抑止力が可能となり、米軍に原子力潜水艦母港を提供する必要もなくなるだろ う。こうして日本は核フリーの国になる。


原子力空母ジョージワシントン


核兵器の傘

国力が低下してきた米国は世界の警察官を単独では務まらないと集団的安全保障の名の下に世界の警察官に協力できるように日本の憲法改定を強 く望んでいるようだ。確かに、朝鮮戦争、ベトナム戦争、イラク、アフガニスタン、シリアで米国は実質上負け続けている。

警察官になるには暴 力組織と強力な武器を 持たねばならない。その強い兵器は核兵器でなければ意味がないし、核兵器行使は双方 向だから広大な国土を持たないと第一撃で反撃も出来なくなるおそれがある。警察官は核があって広大な国土を持ち、経済的に大きくなくては務まらない。これ に合格するのは米国、 ソ連、中国しかなく、日本には無理ということになる。それでもなんとするために第一撃を受ける前に予防的先制攻撃などが必要になるという考えが出てくる。 これでは核兵器は却って平和の敵となりうる。

過去の世界大戦はそもそも安全保障条約が点火栓となっている。

英国、フランス、イスラエル、インド、パキスタン、北朝鮮などが独自の核を保有しているが、国土も国力も小さいがゆえに自衛目的にしかつかえない。ドイ ツ、 スペイン、ベルギー、イタリアなどNATOの国は自前の核は持たないが、有事においてはアメリカの核を使う権利をもっているのでこれも自衛目的だ。

日本は核兵器を持 つ米国の抑止力に頼るという のが現在の建前だが、アメリカの対日防衛義務を定めているとされるArticle Vは核の傘を保証していない。そもそも日本が核の一撃をうけた後、民主主義国の米国が核で報復してくれると期待するのはあまりに甘いといわれてもやむを得 ないだろう。ならばNATO諸国とおなじように有事においてアメリカの核を使う権利を譲り受けてもそれが本当の抑止力になるかどうか?

このように日本は実は裸であったことがわかる。やはり自衛のための暴力組織がないと力の空白を生み、他国の暴力を呼び込むことになる。例えば尖閣諸島の占 領だ。しかし 狭い国土では核兵器は役に立た ない。で、相手を殲滅する程度の通常兵器による報復能力が必要ということで現に専守防衛の自衛隊がある。この場合、先制攻撃は禁じ手だ。


原子炉の脆弱性

ところが我が国をみれば狭い国土に50基以上の原発があり、通常兵器で攻撃されるだけで核攻撃と同等の被害が出る脆弱な国になってしまっている。なぜそう なったかといえば米国が守ってやるから、米国発の原発を買ったらとそそのかされて、疑うことなく従ったつけが回ったということだ。原発に一撃を喰らうだけ で放射能汚染が生じ米軍すら逃げだし、反撃も出来なくなる。ではどうしたらよいか?

そもそも中国の海軍力は艦船の隻数では日本、韓国、インドを上回り、米国の空軍力は中国空軍の増強によって風前のともしび。


核兵器なしの報復能力

日本が陥った罠はじつはすべての核兵器保有国も陥った罠とおなじなのだ。この罠を利用すれば自前の核兵器を持たずとも、核兵器と同等の報復能力を 持てる可能性がある。核 保有国にある原発やダムは巨大なエネルギーをたくわえている。中国の三峡ダムは排泥のためのゲートがダムの下部に設置されているため、クルーズミサイル攻 撃に対し脆弱である。この巨大ダムや原発を通常弾頭を持つクルーズミサイルのターゲットにするだけで核弾頭と同じ 被害を与えることが可能だ。ようするに核兵器は時代遅れの役立たずなのだ。

この非核弾頭クルーズミサイルは原潜ではなく、最新のリチウム電池搭載潜水艦から発射するだけで核抑止力と同等の抑制力は持てる。ク ルーズミサイルは太陽電池の電力から合成したアンモニア燃料を使う。戦争継続のための燃料輸入も 必要ない。分散発電故、どこかの太陽電池を攻撃されても、能力低下は微々たるものだ。

ただこの報復力を使うためには原発や自国のダムのような大きなエネルギーを閉じ込 めている構造物をまず廃棄して、風車とかで太陽光とバッテリーだけで自活でるようにしておくという準備が 必要となる。風車の発電コストは低いが、東北地方に偏っているので、送電線が必要になる。太陽光発電は完全分散エネルギーで、利用は国土の1.8%に太陽 電池をしきつめるだけで日本の電力は100%をまかなうことが可能だ。自動車は100%EV車にすれば石油も不要となる。 そして日 本の原野は国土の60%もあるのだ。しかし農地の30%以下を太陽電池で遮光するソーラーシェアリングを使えば、原野に手をつけることすら必要なく、現有 農 地だけで電力の全てを賄うことが可能となる。農家は収穫量を失うことなく1反当たり100万円の収入となる。

問題は太陽電池のコストダウンは中国企業が巨大太陽電池工場に積極投資して初めて可能になった。日本企業は対抗できないので、輸入という脆弱性を抱えるこ とに なる。国防上、国産できる能力を涵養する必要がある。

バッテリーのほうは今のところリチウムイオンバッテリー以上のものは成功していない。燃料電池はプラチナなどの希少金属が必用であるが、リチウム資源もア ノード用の多孔質黒鉛もカソード用のニッケル、コバルトは基本的にステンレス・スチール用の資源で供給に問題はない。ニッケル・コバルトの代わりにマンガ ンを使う手もある。ボトルネックは巨大製造工場に巨額の 資金が必要なだけだ。

火星に向かったイー ロン・マスクのEV車向けのパナソニックの巨大リチウムイオンバッテリー製造工場がネバダで動き出したばかりでまだコストダウンに成功するか未確認だが、 世界中がEV車開 発に走っているので、長い目でみて価格 が下がると期待できる。エネルギーを巨大な原発で発生させるパラダイムは送電線というコストを支払った。同じように巨大 農業による野菜生産は流通コストという代価を支払っている。太陽光発電は分散発電のため、自家発電が可能となり、電力会社も配電網も不要となる。街の景観 はすっきりときれいになる。

パナソニック/テスラのバッテリーの特徴はリチウムイオン電池は単三サイズのモジュールを数千本束ねた だけといいう構造で、大型化しているところに特徴がある。生産の遅れはこの単三モジュールを束ねる工程のロボットがうまく動かなかったためとされている。 トヨタが固体リチウムイ オン電池を開発するとしていることも素人考えと批判さている。このEV車用のバッテリーは太陽光家庭用分散発電にそのまま転用または共用できる。折角の日 本生れのバッテリー製造 能力を維持することが戦略的に原発技術を維持するより大切となる。

中央発電のためのすべての日本のダムは土砂抜きのゲートを持っていないので次第に埋まって単なる崖に成り下がり、蓄えるエネルギー量も減り発電量も減る。 したがってわざわざ撤去する必要はない。

以上の準備は米国に依存することなく、日本がそのつもりになれば憲法も変えずに出来ることである。なにも侵略国のダムを先制攻撃すべしといっ ているわけではない。いずれにせよ、先制攻撃は現憲法で不可能だし、改訂して先制攻撃しても核兵器を持たない限り返り血をあびるか、差し違えに終わる。目 的は あくまでも暴力の真空を嫌って何時でも報復できる力を準備しておこうというだけ。専守防衛だ。こちらからは先制攻撃は絶対にしない。無論敵の一撃による犠 牲は覚悟 する。シェルター位は必要だろう。報復を決意していれば怖いものはない。

化石燃料を使い続けようとしても、その輸送線を確保しなければならないため、その護衛費もエネルギーコストを押し上げる。たとえ人為的温暖 化説がまち がっているとしても、トランプの真似をしてパリ協定をいきなり脱退するのは第二次大戦の敗戦国である、日本にはできないだろう。化石燃料購入費、護衛費に パ リ協定の排出権購入費を加えると、火力発電は再生可能エネルギーにコスト的に負ける。加えて排出権を再生可能エネルギー発電業者から買うと再生可能エネル ギーの競争力は更に増す し、化石燃料を海外から購入する外貨が不要になるので国家の収支も良くなる。こうして太陽光による分散発電はますます普及し、将来の中心的なエネルギー 源となり、原発もダムも廃棄しても困らない。こうして日本は米国という軛または第二次大戦の敗戦国という負い目から自由になれるのだ。すなわち分散エネル ギーは権力と力の分散と平和をもたらす のだ。

人類史を顧みれば、政治組織にしろ、企業組織にしろ、権力の集中は社会を停滞させる。そしてそのような社会は国際競争下で敗者になるように宿命つけられて いると我々は、第二次大戦で学び、目下再び学びつつあるのだ。個人が自らの頭で考えて行動しなければ社会の進歩はない。


あとがき


いままで読んだ本をひっくり返し、時事ニュースと合わせてエネルギーと国際関係を整理したらはまった。千代田化工の顧問だった岡崎元タイ大使に毎月1回国 際関係を1年間講義してもらったのがやはり考えのバックボーンになっている。これを現役と引退大学教授がつくる総合知学会の合宿で紹介すると抑止力とゲー ム理論との整合性を指摘され書き直した。筆者は昔中近東でプラント建設に従事したが大分様相は変わってきていると実感する。アントニオ・ネグリ、マイケ ル・ハートの見方は大体そのようになってきていると感ずる。4月元チェコ大使の大鷹氏のコメントが楽しみだ。



参考文献

1.野中郁次郎他「失敗の本 質

2.アルフレッド・マハン「海 軍戦略

3.クラウゼヴィッツ「戦争 論

4.バーバラ・W・タックマン「八 月の砲声

5.横手慎二「日露戦争史

6.マヌエル・ドメック・ガルシア「日本海海戦 アルゼンンチン観戦武官の記録

7.メレディス・フリードマンの「戦 場の未来

8.森嶋通夫「なぜ日本は没 落す るか

9.J・H・エリオット「ス ペイ ン帝国の興亡 1469-1716

10.ポール・ケネディ「大 国の興亡 The Rise and Fall of The Great Powers

11.川勝平太「文明の海洋 史観

12.梅棹忠夫「文明の生態 史観

13.上垣外憲一「鎖国の比 較文明 論」ぷすぶるぐ

14.山本七平「日本はなぜ 敗れる のか 敗因21ケ条

15.オリ・ブラフマン、ロッド・A・ベックストローム「ヒトデはクモよりなぜ強い 21世紀はリーダーなき組織が勝つ

16.長谷川英祐「働か ないアリに意義がある

17.岡田英弘「歴史とはな にか

18.リチャード・A・ヴェルナー「虚 構の終焉」

19.松原久子「驕れる白人 と闘う ための日本近代史

20.小室直樹、日下公人「太 平洋 戦争、こうすれば勝てた

21.トーマス・ペイン「コ モン・ センス

22.オスヴァルト・シュペングラー「西洋の没落 世界の形態学ぼ素描 第一巻形態と現実と

23.アントニオ・ネグリ、マイケル・ハート「帝国 グローバル化の世界秩序とマルチチュードの可能性

23.エマニュエル・トッド「帝 国 以降 アメリカ・システムの崩壊

25.フランシス・フクヤマ「歴 史の終わり 上下

26.フランシス・フクヤマ「信 無くば立たず

27.フランシス・フクヤマ「大崩壊の時代―人間の本質と 社会秩 序の再構築 上下

28.内田樹「日本辺境 論

29.ナシーム・ニコラス・タレブ「ブラック・スワン

30.伊藤岳東京大学大学院 総合文化研究科「マクロ・レベルにおける戦争の動態「多様性の中の法則性」と「法則性の中の多様性」2010 年12 月10 日

31.アントニオ・ネグリ、マイケル・ハート「コモンウェルス(上)―<帝国>を超える革命論

32.ジル・ドゥルーズ、フェリックス・ガタリ「千のプラトー  資本主義と分裂症

33. 太田文雄、吉田真「中国 の 海洋戦略にどう対処すべきか

34.ウィリアム・パウンドストーン「囚人のジレンマ

35.アントニオ・ネグリ、マイケル・ハート「マルチチュード上下

36.C. P. Snow「Science and Government

37.エドワード・ミラー「オレンジ計画  アメリカの対日侵攻50年戦略

38.ジャック・アタリ「21世紀の歴史

39.ピーター・ナヴァロ「米中もし戦わば  戦争の地政学

40.バートランド・ラッセル「バートランド・ラッセル著作集12巻

41.John Leslie「世界の終焉 人類はいつ、どうやって絶滅するのか

42.白木正四郎「ゴル ゴダの火

December 04, 2012
Rev. November 22,, 2019
wikiとリンクしていると保存でできなくなる。
Komposerで有効になっているセキュリティプロトコルを使っていないからjpress.ismedia.jpと安全に通信できません。というため関連リンクをかっとすると保存できた。

評論に戻る


トッ プページへ