読書録

シリアル番号 1314

書名

世界の終焉 人類はいつ、どうやって絶滅するのか

著者

John Leslie

出版社

青土社

ジャンル

哲学

発行日

2017/11/30第1刷

購入日

2017/11/27

評価



原題:The End of the World    the science and ethics of human extinction  by John Leslie 1996

2,700円と高価な本。著者はカナダの功利主義哲学者。原著は福島第一の事故前の1996年に書かれたものだがロジック中心にあらゆる見方を徹底的に検討するので古さは感じない。

著者は現在は危険な状態だが、人類は存続すべきと言う立場であらゆる可能性を論じてみせる。人類の生存に対するあらゆる脅威として。気候変動 なども論ずるが生存にかかわる大問題にはなりえない。むしろ、種の多様性が生態系をより丈夫にすると信じられていたが、最近では種の多様性を長期に渡って 支えられるような安定した環境下では脆い上層構造ができてしまっているかもしれないのだ。物理学上の大問題として、核兵器や加速器による高エネルギー実験によるビッグバン発生の可能性についても論ずる。

素粒子論の標準モデルによればトップ・クオーク(質量172 GeV/c2)とヒッグズ・ボゾンの質量125-126 GeV/c2 によって不安定になるという。E=mc2からm=E/c2

コンピュータと人口知能に政治や国防を任せる時代がくるかもしれない。こうすれば国家は人を捨てても栄えることができる。そこまでにならなくとも国民の幸 福よりも他国を負かすことのほうにはるかに関心を持っている国家がどれほど多いか、そして、他国を負かすことを最優先にすることができなかった国家が、地 図の上から抹消されるという深刻な危険を犯すことになりかねないことをおもいだしてみよう。

センサーとコンピュータからなる自動化機械でどこかで核爆弾がが爆発したことを感知したとき人類をすべて滅ぼす核爆弾を破裂させる終末機械の開発を指導者が命じるかもしれない。このようなことが生じないように憲法で規定する必要があるかもしれない。

最後に「囚人のジレンマと核報復」という章を設けて核報復はいままで核戦争を抑止してきたようにみえるが、かなり危なっかしい。抑止力の均衡がやぶれていつ崩壊してもおかしくないと指摘している。

人類の絶滅の議論の前に一体、日本は持続可能なのだろうか?世界の終焉は兎も角、日本の終焉はありうる。現実に数年以内に金融システム崩壊が迫っているようだ。野口悠紀雄の「異次元緩和の終焉」によると;

日銀の緩和マネー→投資や消費に向かわず、企業の内部留保として積み上がる→企業が株式などを購入→預金過剰にもかかわらず投資案件がなく金がだぶついて いる銀行から銀行の手持ち国債を日銀が額面金額より高い価格で購入→銀行の日銀当座預金残高が増える→物価目標の実現がするしないにかかわらず緩和政策の 転換→国債の金利上昇と日銀内銀行の当座預金金利上昇→日銀の巨額損失→この日銀損失が日銀が保有する国債の金利収入を上回る逆ザヤが発生+国債償還時に 国から受け取る金は額面通りのための損失=45兆円>日銀の自己資本=7.6兆円⇒日銀の債務超過。

金利が上昇すると国債利払い費が急増し、2023年度の利払い費+元本償還費=国家予算の50%となり財政破綻となる。これで日本はエンド・オブ・ザ・ ゲーム。いま必要なのは、インフレ目標の達成にこだわることなく、できる限り早く異常な政策から脱却することだと野口氏は主張。しかるに安倍政権は黒田日 銀総裁の首を保証し、北の核の脅威なんではしゃいで、米国のイージス・アショアなどの迎撃ミサイルシステムを購入して国家財政をますます疲弊させている。

金融危機をなんとか切り抜けたとしても北朝鮮はICBMのロケット本体が米国に到達できる能力ありと証明したが弾頭はまだ出来ていないようだ。その証拠に 熱遮蔽のカバーがまだ不十分なのか弾頭が幾つかに分解して日本海に落下している。数年以内にこの技術が完成すれば米国本土をねらえ るようになる。米国としては抑止力をうしなうことは避けたい。そこでそれまでに北朝鮮の芽を摘んでおこうとかんがえるのが自然である。米兵を朝鮮半島に投 入することなく、通常兵器弾頭搭載のクルーズミサイルで北朝鮮の軍事施設を攻撃したときの北朝鮮の反撃は韓国と日本の軍事施設に向かうことを覚悟しなけれ ばならない。にもかかわらず安倍首相はトランプをけしかけている。

友人のS氏は日米安保の原文

US-Japan Security Treaty Article V
Each Party recognizes that an armed attack against either Party in the territories under the administration of Japan would be dangerous to its own peace and safety and declares that it would act to meet the common danger in accordance with its constitutional provisions and processes. Any such armed attack and all measures taken as a result thereof shall be immediately reported to the Security Council of the United Nations in accordance with the provisions of Article 51 of the Charter. Such measures shall be terminated when the Security Council has taken the measures necessary to restore and maintain international peace and security

のどこを読んでも日本が核攻撃をうけても米国が核で報復してくれるとは書いてない。日本政府はこうして自己欺瞞を続け、国民と自らを欺いている。もしかしたら英語を理解できないのかも。

本書では米国の核による報復で抑止力を持たせるなんて、「囚人のジレンマ」のため無意味とわかる。ではどうすればよいか?人類の発明の歴史の中でやはり原子力はプロメテウスが人間に与えた危険な火であり、使い方によっては火傷する技術という宿命を背負っているようだ。

核兵器は廃絶すべきという論があるが、そのためにはまずその原料のプルトニウムを副産する軽水炉を禁止することから始めないと意味がない。麻薬があるのに 使うなといっても無理だろう。なによりキム・ジョンウンがこれを証明して見せた。なぜなら核兵器はまず原子炉を確保することから始まるからだ。原子炉は温 暖化防止に必須と主張する声も聞こえるが、再生可能エネルギーで対応できる。そして米国ですらロシアと中国の核兵器を認めて平和共存に舵を切っている。と ころが核兵器廃絶に無関心でかつ原子炉の輸出に熱心な安倍政権は米国民の支持を失ってしまったトランプをそそのかしてキム・ジョンウンに圧力をなどと叫ん でいるのを見て世界は白けている。

安倍やトランプがどうしようと、流れとしてはキム・ジョンウンの核ファミリー入りを認めざるを得ない流れにある。

皮肉なことに安倍政権がモリカケで窮地に陥る毎にキム・ジョンウンがロケットをぶっ放して安倍を窮地から助け出すということが繰り返されている。ナントカ 財務局長風人物の論功行賞に国税局長官の席を用意した安倍首相は安泰なまま。返す刀で「ジョンウンの攻撃に備えて東京都民の避難訓練が必要」と意味のないことで東京都民を 恐喝して自分の野望を遂げようとしている。

Rev. December 3, 2017


トップ ページヘ